夜の会食が3件! 超多忙なSHOWROOM前田裕二を支える秘書のメモ術とは?【秘書の条件】

優れた秘書の条件は、スキルの高さだけではない。思いやりに長け、周囲を幸せにする人間力が重要だ。業績好調な企業トップの陰に、優秀な秘書あり。ボスの多動力に物怖じせず、どこまでも対応し尽くす。前輪と後輪のごとく同じ方向を目指す、結束の秘密に迫る。


朗らかな笑顔の奥に情熱を宿す

夢をかなえる場を提供するなど日本のエンタテインメントの形を変え、日々ファンを増やし続けているSHOWROOM。最先端のビジネスを創りだしている前田裕二社長にとって、秘書は重要な役割だ。

「経営者として一番大切にしていることは、愛です。秘書の岩田の愛情深さから僕自身が学ぶこともとても多いです。よく彼女の発言から気づきを得ては、メモを取っています(笑)。彼女が血液としてスムーズな身体循環を促してくれているからこそ、僕は経営者として健康に働けているのだと思います」

超多忙であることは大いに想像できるが、それは想像をはるかに超えていた、と語るのは、1年半前から社長秘書を務めている岩田麻里さんだ。

「前田のスケジュールは、朝から晩までではなく、朝から朝まで、でした。人の数倍の量、スピードで仕事をこなし、打ち合わせや会食が終わった後、毎晩必ずメモを見返したり、多くの書物を読んだりしているようです。こんな人、見たことない、と本気で思いました。社長のパフォーマンスをいかに最大化させるか、というのが秘書としての何よりの課題です」

大手監査法人で秘書をしていたが、スキルを高めたいと留学。帰国後には驚きの出会いが待っていた。

「前田のツイッターをたまたま見る機会があって。努力をした人がフェアに報われる。そんな可能性を追いかけようとしている姿に衝撃を受けたんです。この人は一体何者なのだろう、と」

会社の募集を探り、入社。営業、コンサルティンググループのアシスタント業務を経て、約1年後、社長秘書になった。主な仕事は、スケジュール管理、会食や手土産のアレンジ、会議や打ち合わせの議事録作成、取材や登壇の調整など多岐にわたる。地方の講演会に同行したり、NYでの撮影に立ち会うことも。

「スケジュールは、分刻みで入ることもあります。クルマでのわずかな移動時間が電話会議の場になることも。気をつけているのは、ハードな案件を重ね過ぎないことや、インプットの時間も確保すること。夜の会食が3件以上入ることもしばしばあり、そんな時は翌朝の予定には気を配ります」

仕事の方向性については確認するが、進め方に関して社長にどうしてほしいのかその都度聞くことはない。そのやりとりの時間すらもったいないと語る。

「前田自身、何か考えを押しつけてくるような人ではないんです。だから『ここって、こうなの?』と疑問系の問いかけにアンテナを立てるようにしています。そこに前田の何か意志が入っていると思えるからです」

相手に寄り添い考えることは会社の行動指針でもある。例えば、共通の話題に音楽がある方へは、会食の手土産にカセットテープモチーフのチョコレートを贈るなど、相手の状況や好みに想いを巡らせる。

「大事な人の大事な人まで大事にしたい、というのが前田の基本的な考え方です。それは常に意識していますね」

秘書になって1年半。会社の成長を実感する日々だという。

「前田は一見、クールに見えますが、中身は本当に熱い人です。そして圧倒的な努力をしている。そばにいるだけで刺激をもらっています。トップをサポートできる醍醐味は大きいですね」

秘書・岩田麻里さんの3つの掟

1.私の必需品。メッセージカード
「誰かのことを丁寧に想像してアクションする」ことの代表例。誕生日、お祝いごとなど多彩な種類を常備している。


2.ボスへのおもてなし!「スケジュールに見合ったエネルギーチャージ」
1日3件会食がある日もあるため、ヘルシーで栄養が取れるものを。お昼はサラダ、寒い日はスープを追加。


3.座右の銘「他者への想像力」
失敗を含め、さまざまな事案について、メモ術を実践することで物事を落としこんで考えることが習慣になっている。


Mari Iwata
1989年東京都生まれ。東洋英和女学院大学卒。監査法人トーマツにて秘書、アメリカへの語学留学を経て、2017年2月にSHOWROOMへ。’18年より社長秘書を務める。
Yuji Maeda
1987年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、UBS証券に入社。ニューヨーク勤務を経て2013年に帰国。DeNAに入社し、仮想ライブ空間SHOWROOMを立ち上げる。’15年に会社分割によりSHOWROOMを設立し、代表取締役社長として事業を率いる。著書に『人生の勝算』と『メモの魔力』がある。


Text=上阪 徹 Photograph=古谷利幸