福岡への熱い想いが街を動かす! 「福岡ムーブメント」を起こしている人たち

イギリス発のグローバル情報マガジン『MONOCLE(モノクル)』が発表する「世界の住みやすい街」で、毎年上位にランキングされるのが福岡だ。世界中からの観光客も急増、人口の増加率が東京を抜いてもっとも高く、スタートアップ・シティとしても知られる福岡の魅力を、福岡を舞台にチャレンジしている人たちに聞いた。


1.グッドラックスリー代表取締役 井上和久さん

福岡市のど真ん中、中央区天神に自社オフィスを構え、ブロックチェーン技術を用いた独自のコンテンツ「くりぷ豚」や「RAKUN」の開発を行う、株式会社グッドラックスリー。同社の代表取締役である井上和久さんは福岡県出身だ。高校卒業後に東京の大学へ進学し、そのまま東京でインキュベーション事業を行う企業へ就職。その後、福岡へUターンして起業したという経歴の持ち主である。

なぜ経営者は福岡に惹かれるのか? 井上さんはこう分析する。

「福岡という街は、いろいろなものがシームレスにつながっているんです。だからビジネスもプライベートも充実させることができるんですよ」

さらに具体的に、起業後の生活スタイルを例に説明してくれた。

「朝、家から徒歩5分で会社に着き、仕事を終えたら、徒歩5分でジムに。トレーニングを終えて5分で帰宅してシャワーを浴びたら、5分歩いて飲みに行く。この流れを、オンオフの切り替えをとくに意識せず、自然にできる街なんです」

経営者は心の強さと丈夫な体を備えているべき、と考える井上さん。福岡では週1回キックボクシングに通い、体を鍛えている。コンパクトシティだからこそ、このようなライフスタイルを実現できているのだ。

将来の展望について井上さんは、

「福岡県のなかでも福岡市はひとり勝ちのような感じで活気がありますが、高校時代を過ごした久留米市は少し元気がない。福岡県全体を見据え、自社の技術を使ったスタートアップ支援や活性化事業に取り組みたいと思っています」と語ってくれた。

Kazuhisa Inoue
ブロックチェーンのプロダクト・サービス企画をメインに事業を展開。同社が開発した日本初のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」が大ヒット。


2.フクオカ・ナウ社長 ニック・サーズさん

ニック・サーズさんの一日は、ビーチ・ウォーキングから始まる。

自宅のすぐ前は、広大な海。沖にはヨットが浮かび、頭上をハンググライダーが飛ぶこともある。

シャワーを浴びてから、ハンドルを握り、ハイウェイを30分走れば、オフィスだ。〝映画のような朝〞を、ここ福岡で毎日楽しんでいる。

「まさに、West Coast Life Styleです」と語るニック・サーズさんは、バックパッカーとしてアジア旅行中に仏教に出会い、東京の禅宗寺院で1年間修行に励む。いったん帰国したものの「やはり日本で暮らしたい!」と再来日した。1990年、福岡に本社があるIT企業に就職する。

「当時も、東京や大阪には在住外国人向けメディアがありました。でも、福岡にはなかったんです」

90年代はインターネット普及以前の時代。ニックさんはMacを駆使して「デジタルマガジン」を立ち上げる。この手づくりメディアが、いまや「Fukuoka Now」として花開いた。

福岡在住の外国人も増えた。インバウンド観光客も急増している。

「いま、福岡市は、外国人によるビジネスを強く推進しています。ビザ発行や補助金支給など、"そんなにしてくれていいの?"って思うほど。東京や大阪ほどきびしい競争にさらされることもない。ビジネスのスタートアップには最適な環境なんです」

ニックさんは、5年前に福岡市中心部を離れ、西隣の糸島市の海岸沿いに居を構えた。ご近所には、「West Coast Life」に憧れる外国人も増えている。

「在住外国人・旅行者・日本人。この三者が交流するコミュニティづくり、健全な環境を作る手助けをしたいんです。ご一緒に! ぜひ!」

Nick Szasz
1960年生まれ。カナダ・トロント出身。’84年来日後、東京・大阪を経て福岡へ。在住外国人のために役立つ情報誌「Fukuoka Now」を創刊。


3.スマートデザインアソシエーション代表取締役 須賀大介さん

「震災もそうですが、それ以外にも東京で企業を経営すること、東京で生活することはリスクが大きいと思い移住を決断しました」

開口一番、こう語る須賀大介さん。インタビュー場所に指定したのは、自身が運営するシェアオフィスの「SALT」。眼前にはコバルトブルーの海が広がり、白い砂浜に打ち寄せる波音が自然のBGMとなる最高のロケーションだ。

「最初は東京との二拠点生活を前提として、他の場所を探していたんです。当時福岡は有力な移住先ではなかったのですが、何の気なしにふらっと来てみて、直感的に福岡に決めました」と当時を思い出すように語る須賀さん。

一度訪れただけの福岡。それでも心に強い印象が残った。

「人のエネルギーです。あと、街を往く人の表情。心に余裕があるなと感じました。飲食店では何も言わないのに子ども用の椅子を用意してくれる、地下鉄内で子どもが泣きだすと声をかけてくれるといった、小さいけれどありがたい出来事がいくつも積み重なって。あと、この海。ここだったら人間らしく生きていけると思ったんです」

移住後も「福岡移住計画」の立ち上げやシェアオフィスの運営など、日々多忙を極める須賀さん。福岡移住計画をきっかけに、須賀さんのあとを追うように多くのクリエイターやエンジニアが福岡への移住を実現しているという。時間や場所にとらわれない働き方をする人たちにとって、福岡は飛びぬけて魅力的に映るのだそうだ。

「オフは家族でアウトドアや温泉に行くことが多いですね。あとは地域保全のボランティアとかに参加しています」

都会と自然との絶妙な距離感を楽しむことが、福岡らしいオフタイムの過ごし方じゃないかと、笑顔で締めくくってくれた。

Daisuke Suga
東日本大震災を機に、2012年に福岡に移住。福岡への移住希望者向けに情報発信コミュニティ「福岡移住計画」を主宰。