【特集サイバーエージェント】1社目に立ち上げた会社が失敗。セカンドチャンスで大きく飛躍!

藤田 晋率いるサイバーエージェントは今年で創業20年。いまや社員数4500人以上、IT業界のリーディング企業だ。サイバーエージェントとはどんな会社か――という問いに対し、多くの人が「人材」の会社だと答える。そこでサイバーエージェントで活躍するキーパーソン8人にインタビュー。第4回目は執行役員で、マッチングエージェント代表取締役社長の合田武広さん。サイバーエージェントの強さとは何なのか――。


挑戦する人には何度でもチャンスを!

「僕はまさに2社目で事業を成功させられたひとりですから、サイバーエージェントにセカンドチャンスのカルチャーがごく自然に根付いていているというのは本当だと、はっきり言い切ることができますよ」

と合田武広さん。現在は子会社の「マッチングエージェント」代表で、マッチングサービス「タップル誕生」を運営しているが、これまでに激しい紆余曲折があった。

「もともと大学時代の専攻も情報工学でプログラミングをしていました。ですからアイデアさえあれば、自らエンジニアとして開発することができたんです。そこで思い付いたアイデアをビジネスコンテストなどに積極的に応募。いくつも賞を得て、当時は妙な自信を持っていました。

そうして大学院2年のときに中退して、勢いと行動力のままに会社を設立。サイバーエージェントからすでに内定をもらっていたというのに、です。つくったあとで社長の藤田に相談をして、じゃあ子会社でやれば? と言っていただいたんです」

それが2011年のことだった。事業内容はソーシャルグラフを活用したマッチングアプリ。「PitaPat(ピタパット)」と名付けた。

「当時はスマホが普及して間もないころで、アプリで大成功を収めた例はまだ稀で、期待値だけは高まっていました。おもしろい企画が出ればきっと一気に流行ると期待され、「Pitapat」も初速は好調だったのですが、一気に低迷。「Facebook」のソーシャルグラフ内だけでマッチングを成立させ、広げるというのが難しかったこと、また、プロモーションやマネタイズの方法をうまく思い描けなかった僕らの経験不足、いろんな要因が重なりました」

方向転換してもうひとつ、実名性Q&Aサービス「QiXil(キクシル)」もつくったものの、本格運用していく前に事業資金1億円のキャッシュが切れてしまい、会社自体を閉じることとなった。

「サービスがよくて伸びが見込めさえすれば、資金調達はできるだろうと踏んでいたのですが、甘かった。会社を継続するには運転資金が必要で、そのための手立てをきちんとしなければいけないという事実を、強烈に学びました。

会社を閉じるときは、人生が終わったような顔をしていたみたいですね。でも、長くは落ち込んでいられませんでした。この会社を整理して2、3日後には、『マッチングサービスの新しい子会社を設立するから、やらないか?』と声をかけていただきました。

人と人との出会いをインターネットによって実現させたいと思っていたので、ぜひやらせてほしいと即答しました」

マッチングサービス自体が社会に浸透してきたという「時代の流れ」が味方したこと、1度目の失敗にしっかり学んだことを活かしたことによって、新たに設立されたマッチングエージェントと、運営するサービス「タップル誕生」は順調な伸びを示している。

「とくに若い世代にとっては、マッチングサービスを使って出会うことはかなりスタンダードになってきたのかなという実感があります。ここ1、2年で急速に定着してきたのを感じますね。サイバーエージェント社内でも、『サービスによって出会った人と結婚しました』とこっそり知らせてくれる人がいたりして、いやそういうのはうれしいかぎりです」

市場が拡大している中、現在の国内会員数は350万人と、着実に利用者を伸ばし存在感を増していくための方策はあるのだろうか。

「メインターゲット層の20代前半の人たちにとっては、口コミの影響力がとにかく大きいんですね。とくに女性に顕著ですが、『使ってみたらこんなによかったよ』という体験の声が絶大な波及力を持ちます。

ですから僕らは、ユーザーが初めてサービスを利用して30分以内に感動体験を味わってもらえるようにしたいと思っています。

女性が登録すると、いろんな男性からのアプローチがきます。一気にマッチングできる楽しさを提供できるように、相手を詳しく検索できることよりも、趣味を軸にすることで、一期一会の出会いを大切にしています。フィーリングが合うか合わないかの直感性を大事にしたサービス内容が特徴ですね」

セカンドチャンスをうまく活かせたのは、マッチングサービスを生活インフラにしていきたいという思いを、強く持ち続けてこられたからだ。

「出会いの場のひとつとして、こうしたサービスが当たり前のようにある社会をつくりたいんです。

それに、住んでいる地域によっては同年代が少なくて出会いがないという人もいるでしょう。職場環境、生活環境なんかによっても出会いの機会は差が出ますよね。

合コンや友人の紹介で出会うという以外に、マッチングサービスがインフラとしてもっとふつうに存在しているようになって出会いの場を提供できれば、救われる人も多いはずだと僕は信じています。出会いや恋愛が話題になるときは、必ず『タップル誕生』の名が出てくるようなブランドに育てていきたいです。

こうしたチャレンジを何回もできたことは、ありがたいです。社長の藤田が若者の価値観を大事にしているので、年齢に関係なく僕らが伸び伸びと仕事できているのだと思います。そういう僕も30代になったので、新卒の社員に思いきって大きな仕事を任せたりして、さらに若い人や挑戦する人には何度でもチャンスが与えられるカルチャーを継承していかなければと感じています」


Takehiro Goda
2011年、大学院在学中にアプリ開発コンテストで優勝。同年、サイバーエージェントの内定者でありながら株式会社フェイスマッチを設立し、大学院を中退。その後、マッチングサービス「Pitapat」をリリース。公開3日で10万ダウンロードを記録したが、収益化に苦戦しサービスをクローズ。その後、別サービスの立ち上げを経て、'13年、株式会社マッチングエージェントを設立、代表取締役社長に就任。会員数は350万人、累計マッチング数は1億組を誇るマッチングサービス「タップル誕生」を運営。


Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生