"合格点”では"次”はない! 南野拓実に見る実力主義の最新傾向~ビジネスパーソンの言語学77

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座77、いざ開講!  


「このチームの一員になれたことはうれしく思います。でも、もうその時期は過ぎた」
―――名門リバプールに移籍、いきなり先発出場を果たした日本代表・南野拓実

昨シーズン、欧州チャンピオンズリーグとクラブワールドカップを制した名門リバプール。今シーズンもプレミアリーグの首位を走るこのビッグクラブに日本代表としても活躍する日本代表の南野拓実が移籍。1月1日に移籍したばかりにもかかわらず、5日に行われたFAカップのエバートン戦に先発出場を果たした。

「合流して時間もあんまりなかったし、監督からは『いつも通りのプレーをすればいいよ』と言われた。自分がしている通りのプレーをしようと、ゲームに入った」

南野自身は後半25分までの出場にとどまり、目立った結果を残すことができなかった。それでも名将クロップ監督からの評価は上々だった。

「スーパー、傑出していた。我々が求めていた通りのプレーヤー、我々が望んでいた通りのプレーヤーだ」

多少のリップサービスは含んでいるだろうが、それでもクロップ監督自らが熱望して獲得したといわれる南野のプレーは、彼の期待に応えるものだったのは間違いないだろう。だが、南野自身は自分"仕事”が試合に出ることだとは思っていない。

「選手としては、このチームの一員になれたことはうれしく思います。でも、もうその時期は過ぎたというか。もう今日もピッチの上で何かを示さなければいけなかったと思うし、やっぱりゴールかアシストっていう結果を残したかったかなって気持ちが一番ですね」

昨年10月のCLで昨季王者リバプール(イングランド)を相手に1ゴール1アシストと大活躍し、名将の目にとまった南野。そのシンデレラストーリーに目を奪われがちだが、決してレベルが高いといえないオーストリアリーグのレッドブル・ザルツブルグで5年間過ごしてきたことにもっと注目すべきだろう。

欧州5大リーグといわれるのが、イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス。レベル的には、その下がポルトガルやロシア、ベルギー、トルコなど。オーストリアは、さらにその下のランクのリーグでスイスやクロアチアと同じくらいのレベルだ。外国人枠がないこのリーグには、世界各国から"上”を目指す若いプレイヤーが多く集まる。その切磋琢磨のリーグに19歳で飛び込み5年間という長い時間を過ごしたことで、南野が学んだこと、得たものはかなり大きかったのではないだろうか。

そのひとつが「結果を出し、それを続ける」ということ。言い換えれば、チームから求められるタスクを正確に理解し、それを確実に遂行すること。若手だろうが、外国人だろうが、チームは決して待ってはくれない。だからこそ、南野はデビュー戦から結果を出したかっただろうし、それがこの世界一のチームで不動のレギュラーとなるための最善かつ唯一の方法だと分かっているのだろう。

合格点では足りない。さらにその上をいかなければ“次”はない。日本のビジネスシーンもどんどんそんな実力主義の傾向が強まっていくだろう。そのために必要なのは自分を磨き続ける努力であることはいうまでもない。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images

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