「相方の真意が見抜けない」 メイプル超合金・安藤なつの悩みに結成26年ヒデの答えは…

結成26年目を迎えたお笑いコンビ「ペナルティ」のヒデさん。今年10月に恋愛小説『いつか、あなたと』を発表し、作家としても精力的な活動を見せている。浮き沈みが激しいお笑い界で長く安定した活躍を続け、そこに留まることなく新境地を切り開くヒデさんが、ゲストの悩みに答える新企画。お笑いコンビ「メイプル超合金」の安藤なつさんを迎えた。


相方の前で下着姿も平気

ペナルティ・ヒデ(以下、ヒデ) 悩み相談、記念すべき1回目のゲストは、メイプル超合金の安藤なつさん。メイプル超合金にはデビュー当時から注目していて、いまも見るたびに「すごいなあ」と圧倒されています。盛り上がりを作って、ひと言でパーンと落とす。その歯切れのよさが快感なんです。なつさんと最初に会ったのは、昨年でしたね。

安藤なつ(以下、なつ) そうです。昨年、番組のロケでご一緒させていただきました。でも、私もずっと前からヒデさんのこと、見ているんです。もう、かれこれ24年くらい。私が中学生だったころ、銀座に吉本興行が運営する「銀座7丁目劇場」があって、大好きなお笑いコンビがたくさん出ていた。ペナルティ、なかよし、ピンポイント……。

ヒデ わあ、懐かしいなあ。

なつ ヒデさんのツッコミ芸、ドロップキックを初めて見たとき、マジで感動した。「打点、超たけーっ」って。

ヒデ あれ、本当にたいへんだったんだよ。ぎっくり腰になったこともあったし。さて、昔話は置いておいて、今なにか悩みや気になることはある?

なつ ペナルティは、結成26年目になりますよね。ワッキーさんとの関係って、どんな感じですか?

ヒデ 何、相方との人間関係に悩んでいるの?

なつ とくに、そういうわけじゃないけれど、「不思議な関係だなあ」と思うことがあります。お笑いコンビの相方って、線引きがわからない。ただの仕事のパートナーじゃなく、一線を越えていると思うけど、家族でもないし、何でも相談できる友達というわけでもない。他のコンビの方ってどんな感じなんだろうと興味がありますね。

ヒデ 男女コンビの場合、楽屋って別なの?

なつ 一緒のことが多いです。着替えも一緒。カズちゃん(メイプル超合金のカズレーザー)のパンツ姿も、私のブラジャー姿も、お互いに見慣れていて、まったく平気です(笑)。

ヒデ それって、昭和時代の小学校の着替えシーンじゃん(笑)。確かに、芸人の相方との関係は、一般社会での同僚とは違うよね。いまはそうした状況にとまどいを感じるかもしれないけど、解決してくれるのは「時間」しかないと思う。

なつ ペナルティさんにも、そういう違和感というか、不思議なムードがただよっていた時期ってありますか?

ヒデ 同じ楽屋にいても、まったく話をしない時期はあった。相手のプライベートなんか、まったく興味もなかったし。それがいま、ぐるっと一周していちばん仲がいい状態。変わったきっかけは、子供をもったことかなあ。「学資保険入っている?」とか、「幼稚園どうやって選ぶの?」とか、自然にそういう話題になる。

なつ ヒデさんは会話をしなくても、ワッキーさんが何を考えているか、完璧にわかります?

ヒデ かみさん以上にわかる(笑)。ワッキーが口を開く前に、ツッコミを2~3パターン用意しておけるから。

なつ 私はまったくダメだなあ。ご存知の通りいつも真っ赤だしヘラヘラしているし相方が何を考えているのか、まったく読めない(笑)。で、違う反応をしてしまって、「あ、間違えた」と、時間が経ってから気付きます。

視野を広げて、心のほつれを探す

ヒデ 相方との関係は、あせったって何も改善しないよ。なつは自然体でいればいい。で、少しだけ、相手の領域をぐるっと回る努力をする。そうすることで、糸口が見えてくる。心がほつれやすい場所とでもいうのかな。そこに、自然にすっと入っていく努力。僕の場合は、それが結婚や育児に関することだった。

なつ なるほど。視野を広げないとダメですね。私は、相方の嫌なところばかりに、目がいっちゃう。新幹線で移動のとき、私が真後ろの席に座っているのに、カズちゃんがガーッとめいっぱい座席を倒してくる。心の中で、「お前、今日もマックスかよ」って叫んじゃう。

ヒデ そういうの、誰にでもあるよ。オレも一時期、ワッキーがそばを食べるときに立てる音にさえ、腹立ててたよ。ペチャペチャって、嫌な音を立てるんだ。でも、そうした状況にある、今のなつの状況がうらやましくも思う。

なつ といいますと?

ヒデ なつも感じていると思うけど、お笑いの現場はまさに戦場。命がけの勝負の場。その場で、相手のことをあまりにも理解し過ぎると、つい守りに入ってしまう。今日はワッキーの体調がよくなさそうだから、ツッコミはこの程度にしておこう、とか。ワッキーの背後に、彼の家族の姿が浮かんで見えるときもある。

なつ 家族にも気を遣っちゃうんだ。メイプル超合金も、ペナルティさんのような域に達したいと思うけど、それはそれで新しい悩みが出てくるんですね。

ヒデ 悩みは尽きないよ。

なつ いま置かれた状況で、精一杯やっていくしかないですね。

ヒデ 自信をもって、いまできることをやる。メイプル超合金は、竹やり持って、玉砕覚悟で突っ込む勢いが魅力なんだから、あまり深く考え過ぎないこと。身を時間に委ねる感覚を意識するといいんじゃないかな。

続く


ずっと生まれ変わりたいと思ってきた。真っ直ぐに生きようとしながらも、暴力事件で高校を中退し半グレになるしかなかった男。恵まれた家庭に育ちながらも、心の欠けたものをずっと探している女。再起を図るために故郷を捨てながらも、ヤクザになるしかなかった男。自由に生きる場所を東京に求め、逃げてきた女。酒と暴力で大切な人と別れてしまった男。さまよう孤独な魂が、六本木で出会い、惹かれ合い、物語が始まる。

『いつか、あなたと』 
中川秀樹(ペナルティ・ヒデ)
幻冬舎 ¥1,389(税別)


Natsu Ando
1981年東京都生まれ。サンミュージックプロダクション所属。コンビやピンでの活動を経て、2012年に相方・カズレーザーと「メイプル超合金」を結成する。2015年の「M-1グランプリ2015」決勝進出をきっかけにブレイク。NTV『ヒルナンデス!』、TX「青春高校3年C組」、CBC「メイプル超音楽」などにレギュラー出演中。

Text=川岸 徹 Photograph=鈴木規仁

中川秀樹(ペナルティ・ヒデ)
中川秀樹(ペナルティ・ヒデ)
1971年千葉県生まれ。名門・市立船橋高等学校サッカー部に所属し、2年生からレギュラーとして活躍、全国高等学校サッカー選手権大会準優勝とインターハイ優勝を経験。Jリーグからスカウトを受けるほどの実力だった。その後、高校・大学の後輩であったワッキーとお笑いコンビ「ペナルティ」を結成。バラエティ番組やスポーツ番組、全国各地の劇場を中心に活動中。『いつか、あなたと』は本名の中川秀樹で執筆。
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