【オフィス探訪】「花屋さん」パーク・コーポレーションが考える緑あふれるオフィス

1988年の創業のパーク・コーポレーションは、フラワーショップ「青山フラワーマーケット」を運営している企業だ。「Living With Flowers Every Day」というコンセプトが広く受け入れられ、店舗数は国内や海外を合わせ100を超える。現在、フラワーショップを筆頭に6つのサービスを展開、2017年度の売り上げは80億円に達した。同社の成長の源泉が、花と草木が心地よい緑あふれるオフィスにあった。


オフィスの緑化のポイントは「緑視率」?

フラワーショップ「青山フラワーマーケット」およびオンラインショップ、カフェ「青山フラワーマーケット ティーハウス」の店舗に加え、フラワースクール「ハナキチ」、マンションやオフィス、店舗などの緑化を含めた空間デザインを手掛ける「パーカーズ」、BtoBのフラワー・オーダーメイド・サービス「ANNEX」と、計6つのサービスを展開しているパーク・コーポレーション。本社オフィスとパーカーズ事業のオフィスが、創業の地、東京・青山にある。

「一度、この空間で働いたら、もう他の会社では働けなくなります」と、コミュニケーション室マネージャーの拝野多美氏。ドアを開けると、明るい陽射しとたくさんの緑が視界に入ってくる。オフィスの各所に草木や観葉植物が置かれ、緑にあふれているのだ。照明器具と一体になった観葉植物やあちこちに配された樹木、打合せスペースのテーブルの下の草など、空間を適度なバランスで緑が占めている。秘密は「緑視率」にあるという。

左:parkERs Produce Division Leaderの坂井 邦子氏、右:コミュニケーション室マネージャーの拝野 多美氏

「植物が視界に入る割合のことを『緑視率』と言い、オフィスでは緑視率が10~15%の空間が最もリラックスできると言われています」(パーカーズ 坂井邦子氏。以下すべて発言は同氏)。パーカーズ事業部のオフィスは、緑視率に合わせてデザインしたわけではないというが、結果的に10〜15%の間に数値が収まり、心地よい空間であることを示している。なお、緑視率が高すぎると、緑化するコストが増えるだけで、人の近くに緑があり過ぎることで逆にストレスを感じ、仕事の効率が下がってしまう言われているそうだ。

同社のパーカーズ事業部は、適度に植物を採り入れることが、心地よくて働きやすい空間につながることを、ショールームを兼ねた自分たちのオフィスで実証し、そのノウハウを元に企業への室内緑化提案を行っている。

さらにこのオフィスには、緑化することによる心地よさや働きやすさをより感じさせる、さまざまな工夫がある。

「不便さ」がもたらす効果

「ワークスペースは、いかに『集中』できる空間にするかが重要です。そのため弊社では植物との距離感を大切にしています。パソコン越しやガラス越しなど、仕事をする中で植物が自然と視界に入ってくるような空間づくりを目指しています」

部屋の隅にレンタルや購入した観葉植物を置いているオフィスとは一線を画している。

オフィスのどこにいても緑が視野に入る。手前のデスクは目線が合わないよう手裏剣型になっている。中心に樹木がありどの席も木漏れ日を感じる。

見渡せば、樹木を囲むように3人分のデスクを配置したスペース、観葉植物が仕込まれたライトが照らす島のような長机のスペース、植物の手入れや設備の修理に使う道具がディスプレイされた壁面にデスクが並ぶスペースなど、さまざまなワークスペースがある。大切にしているのは「木漏れ日」だ。

「公園で木の下にあるベンチに座った経験はありませんか? もちろん日陰だからという理由もあると思いますが、木の下は本能的に安心感があるのだと思います」。

オフィスの中で木漏れ日を感じられる工夫は、笑顔で働いている社員の姿に表れている。

もう一つ、このオフィスには工夫がある。「不便さ」だ。床やデスクには古材が使われ、床はがたがたとしていて歩きにくく、掃除に手間が掛かり、デスクはささくれ立っていて袖などに刺さる。本社オフィスのレンガ床も、敷き詰められているだけで固定されていない。なかには、ウッドチップを床一面に敷き詰めた部屋もあり、ヒールではとても歩けない。

なぜそんなことをするのか?

光を受けて木の影ができ、デスクでは木漏れ日を実感できる。

「業務では、創造力や感性をフルに働かせることが求められます。そこで弊社では人間の創造力や感性は、本来不便な自然の中で、発揮してきたのではないか。また、便利すぎる空間では、その感覚が鈍るのではないかと仮定しました。その仮定に基づき、足元など、適度な不便さを感じることが、本来の感覚を呼び覚ますと想定し、自社で実践、事業として提案しています。ただ、不便過ぎると心地よさや働きやすさを妨げてしまうので、自分たちのオフィスでまず試し、『適度な不便さ』を見定め、提案に生かしています」

先述のウッドチップを床一面に敷き詰めた部屋は、いまだオーダーに至っていないなど、ボツになった「不便さのアイデア」もたくさんあると言う。まさに自らの職場自体が生きた研究開発の場であり、ビジネスのひらめきを促す場になっている。

「なんかいいの壁」を乗り越えろ!

「心地の良さ」と「不便さ」で働きやすさとともに社員の創造力や感性を呼び覚ますことができるオフィスであれば、採り入れたいと考える経営者や企業はいるだろう。ところが、実現しようとすると、そこには、同社を悩ませるある「壁」が立ちはだかるという。

「私たちのオフィスは、ショールーム的な役割も果たしていて、企業の見学も引き受けています。『心地いいね、なんかいいね』と来訪者にも評価は高いのですが、実際にオフィスの緑化を提案すると『どういった効果があるの? 』と聞かれます。心地よさは目には見えないため、提案の段階で具体的なデータを求められるのです。弊社ではこの見えない壁を『なんかいいの壁』と呼んでいます」

ショールームを兼ねているため、壁をなくし緑あふれる空間を見やすくしている。

この「なんかいいの壁」を乗り越えるために、パーク・コーポレーションはパソナ・パナソニック ビジネスサービス、日本テレネットの3社で「COMORE BIZ(コモレビズ)」プロジェクトを進めている。

「COMORE BIZは、デザイン化・エビテンス化・見える化がそろったオフィス緑化プロジェクトで、IoTの技術を活用して、緑化による従業員のストレス低減や満足度向上を数値で表し、オフィス環境の改善に役立つシステムの構築を目指しています。草木や花、水などをオフィスに効果的に取り入れることは、従業員の集中力・生産性向上、エンゲージメントの向上、求職者に対するリクルート効果、サステナブル経営のアピールなどにつながります。それを見える化し、エビテンスを示すことで、装飾ではなく植物がそこにある意味、人間との関係性や効果を明確にしたいと考えています」

同社は、このプロジェクトを活かし、室内緑化提案時の「壁」を乗り越え事業拡大につなげている。オフィスをより心地よく、働きやすい環境にすることで、単なる「働く場所」「固定費」と考えがちなオフィスの存在が、企業という樹木を育てる大地になっている。

今年、パーク・コーポレーションは創業から30周年の節目となり、緑化を含めた空間デザインを行うパーカーズ事業も5周年を迎える。「花屋さんの視点」から働く場所を考える取り組みは、自社を実験室にしながらこれからも続く。

パーク・コーポレーション
代表者:井上英明
本社所在地:東京都港区南青山5-1-2
設立:1988年12月
資本金:2000万円
従業員:887人
事業内容:フラワーショップ「青山フラワーマーケット」の運営ほか
姉妹ブランド:空間デザイン「パーカーズ」
https://www.park-corp.jp

Text=稲垣章(MGT) Photograph=松川智一