【トルシエ】サッカーもワインづくりも必要なのは"パッション"

元サッカー日本代表監督のフィリップ・トルシエ。 じつは彼、現在はワイナリーのオーナーとしての顔も持つ。フランスの銘醸産地、 サンテミリオンで、わずか5000本のワインをつくっているのだ。


サッカー監督とワイナリーオーナーは似ている

キャップシールの色はサムライブルー、ラベルにはサッカーゴールとともにフラットスリーを表す「3・4・3」の文字。「ソル・ベニ」は紛うかたなきフィリップ・トルシエのワインである。

トルシエのブドウ畑が位置するのはフランス屈指の銘醸ワイン産地、ボルドー地方のサンテミリオン。この畑を手に入れたのは、「まさに運命」と彼は言う。

「5年前、家内の家族が暮らすボルドーを訪れた際、ブドウ農家の青年から畑を売りたいとオファーを受けました。それはわずか1.1ヘクタールの畑で、すぐ隣は有名なシャトー・モンブスケ。ワインに詳しくなくとも、フランス人ならサンテミリオンが偉大な産地であることは知っています。私は二つ返事で入手を決意しました」

「ソル・ベニ 3-4-3 2014」はメルロー80%、カベルネ・フラン20%。ビロードのような舌触り。¥10,000(ファインズ TEL:03・6732・8600)。取り扱いはザ・ セラー銀座、カーヴ ド ヴァン (ともにオンライン有)など。

さすが勝負師である。この畑から秀逸なワインが生まれ得ることを見てとるや、腕利き醸造家のルドヴィッグ・ヴァヌロンをコンサルタントとして雇い、さらにサンテミリオン内に0.65ヘクタールの畑を買い増した。

「最初の畑はフィジャックやシュヴァル・ブランと同じ砂礫質土壌で、もうひとつの畑はパヴィやオーゾンヌ同様の粘土石灰質土壌です。今はふたつの畑かつくられたワインをアッサンブラージュ(ブレンド)していますが、将来は別々に瓶詰めしても面白いかもしれません」

こうした話をうかがっていると、まるで長年のワイン愛好家で、何十年も前からワインづくりに携わっているようだが、ワインと真剣に向かい合うようになったのは、ソル・ベニを手に入れて以降というから驚きだ。

「ワインは開けるたびに異なる表情を見せる。発見の連続です。人もそう。会うたびに新たな発見がある。それが面白い」

ソル・ベニとは「祝福されし土地」。ト ルシエがかつて監督を務めた、コート ジボワールのグラウンドに因む。

またサッカー監督とワイナリーオーナーは、まったく違うようで、じつは似た仕事だと話す。

「いずれもパッションが必要で、一日では決して成し得ないこと。またどちらの仕事においてもオーケストラの指揮者のような存在で、最良のバランスを見つけなければなりません」

昨年12月、原宿にある「KEISUKE MATSUSHIMA」とのコラボで開催されたワイン会では、2016年のソル・ベニには最良のロットのみをブレンドした、わずか1000本の上級キュヴェがあることを明かしたトルシエ。その名はフランス語で「クー・ド・シャポー」(日本未発売)。意味は「ハットトリック」だ。

「KEISUKE MATSUSHIMA」の松嶋啓介シェフとは旧知の間柄で、今回のワイン会もその縁で実現。ヴィンテージ違いのソル・ベニが登場した(2016年物は3月発売予定)。かつてサッカー少年だった松嶋シェフはトルシエの著書『情熱』に感銘を受け、ニースに「Kei’s Passion(ケイの情熱)」をオープンしたそう。


Philippe Troussier
1955年フランス生まれ。’98年からサッカー日本代表監督を務め、2002年日韓W杯で初の決勝トーナメントに導く。現在はベトナムPVFアカデミーのテクニカル・ディレクター。


Text=柳 忠之 Photograph=滝川一真