清原和博の重みのある言葉に学ぶ。弱音をはける環境を作ろう!~ビジネスパーソン言語学35

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「近くにいる人の理解があれば、今、自分は苦しいんだ、つらいんだと言える。その環境があることが一番大きいことだと思います」ーーー依存症の啓発イベント出演した清原和博氏

彼がその場に立つためには、相当な覚悟と勇気が必要だっただろう。3月6日、厚生労働省が東京都中央区で開いた依存症の啓発イベント「誤解だらけの“依存症” in 東京」に覚醒剤取締法違反で有罪判決を受け、現在執行猶予中の清原和博氏が出演し、自らの現状や過去の体験について語った。

事件後、公の場に出てきたのは初めて。“サプライズ出演”などと書く新聞もあったが、事前の告知がなかったのは、主催者の厚労省が「出演者が緊張しないように」との配慮があったからだという。

彼が逮捕されたのは2016年2月。野球界を代表するヒーローの転落劇。引退から7年で見る影もなく太り、体中に入れ墨をいれ、うつろな目になってしまった彼の姿は衝撃的ですらあった。高校生時代からの活躍をリアルタイムに見てきた世代のひとりとしては、このイベント出演をうれしく感じた。

厚労省が彼の出演を決めたのは、彼の治療が順調であることの証だ。彼自身、「こつこつと治療してきて、それが厚生労働省に認めてもらえたのかなと思うと、すごくうれしい気持ちでした」と語っているが、現時点で少しでも再犯の可能性があれば、厚労省が声をかけることもなかっただろう。

糖尿病も患っているという清原氏は、逮捕時よりも太ったように見えた。眼光鋭かった現役時代を思えば、目にはまるで力がなく、にごりを感じる。3年という時間が流れても、完全に元通りになることはない覚醒剤中毒の恐ろしさをあらためて知ることになった。それでも清原氏が前を向いて歩いていることは間違いないようだ。

「約2週間に1回病院に通って、いろんなテキストで、薬物について勉強したりすることによって、どんどん『自分はこうだったんだ、ああだったんだ』と理解できていったんで、すごくよかったと思います」

「自分の体験なんですが、薬物は一時的にやめられても、やめ続けることは自分自身は非常に難しいことだと思う。勇気を出して専門の病院にいってほしいなと思います」

「薬物を使っていた時はそれを使うためにうそをつき、自分をどんどん追い詰めていってしまい、ほとんど苦しみの日々でした。それが近くにいる人の理解があれば、今、自分は苦しいんだ、つらいんだと言える。その環境があることが一番大きいことだと思います」

きっと多くの人がなにかに依存して生きている。"薬物"という言葉を他に入れかえれば、自分でも思い当たることがあるのではないだろうか。アルコール、ギャンブル、買い物、恋愛、スマホ……。自分の仕事に依存しているというビジネスパーソンもいるだろう。現役時代の清原氏は、4番打者としてのプレッシャーを背負い、誰にも「苦しい、つらい」と言えなかったのだろう。それが彼を薬物依存に導いた。ビジネスシーンは、バッターボックスと同じようにプレッシャーとストレスにあふれている。

あなたには「苦しい、つらい」といえる誰かがいるだろうか。すぐ顔が浮かばなかったとしたら、それは黄色信号だと考えるべきかもしれない。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images