「それ、会社病ですよ。」沖縄の基地問題はなぜこじれたか?白黒つけるべき「問題」と「時」を誤るな Vol.33


問題に簡単に白黒つけられるなら、もちろんつけるべきでしょう。しかし、簡単につけることができない、あるいは白黒つけるタイミングではない時には、明快な決着を急いではいけません。むしろ丁寧にすり合わせながら進めなければならない問題もあるのです。
 大事なことは、今どちらのアプローチを取るべきタイミングなのか、の見極めです。無理矢理に白黒つけようとすれば、かえって解決から遠ざかることが少なくない。
 沖縄の基地問題は、まさにこの図式が当てはまります。普天間基地は危険なので移転する必要がある。しかし、現時点で県外移設というのは現実的ではない。基地の引き受け先が見つからないし、沖縄の軍事的な戦略地点としての重要性はかえって増しつつある。
 20年前の自社さ連立政権時代、丁寧なすり合わせで合意をつくりました。ところが、鳩山政権がいきなり白黒つけるような議論をしてしまった。「最低でも県外」と抜本解決するような期待感を持たせてしまった。白黒つけるタイミングとして、まったく現実的ではなかったのに、です。
 一般にマスコミや評論家のような人たちは、抜本的な解決、すなわち白か黒かの議論を好みます。それは、記事にしやすいからでしょう。だから、論点はさらに煽(あお)られ、選挙を左右する争点にまでなってしまった。

逆に、日本企業のような調和志向の強い組織は、すり合わせ型の抜本解決先送りを好みます。白黒つけるべきタイミングが来ているのに変われず、結果的に問題は悪化し、手遅れになってしまう経営のケースが多い。かつてのカネボウや日本航空はその典型例でしょう。一方、先送りせずに最適のタイミングで動いた富士フイルムのような会社もあります。ソニーはまさに今が勝負の時。抜本的な解決の道へと通じる「窓」は、ある一定時間しか開きません。早すぎても遅すぎてもダメなのです。
 ただ、二律背反のややこしい問題は、やはりまずは慎重に白か黒かで行くか、すり合わせで行くかを判断する必要があります。おそらく普天間問題も現段階では解がない以上、すり合わせを続けていくしかない。
 結局、知事側の工事差し止め努力と政府側の「粛々(しゅくしゅく)」たる工事遂行の努力との拮抗状態が、白黒つかないまま続くのではないでしょうか。
 日本の社会というのは、よくも悪くもアンビバレントな状態でかなり引っ張ることができる、という精神性を持っています。これが一神教的な精神文化の国ではそうはいかない。例えばドイツでは、国防軍の存在と戦争放棄の共存ができませんでした。結果的に、憲法を変えることになったのです。
 一方、日本は自衛隊と憲法9条が共存しています。この極めて重大な問題が、すでに60年にわたって曖昧なすり合わせ状態のまま、ある意味、居心地よくさえなっている。ドイツ人には耐えられないストレス状況だと思います。
 これは福島の原発事故後の状況にも当てはまりますが、今の時点で、本件が白か黒かの明快な論点設定で現実解が出るような問題ではないことに、多くの人は気づいています。最も重要なことは、問題に関わる人々のリアルな人生にとって、どちらのアプローチを取るべきか。その判断を誤らないことです。


*本記事の内容は15年5月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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