ただの移動手段じゃツマラナイ! エアラインは夢を乗せて飛ぶ【機内サービスの要】客室乗務員の“私なりのおもてなし”

旅への期待感、そして旅の後味にひと花添えてくれるのがCAの皆さん。その“もてなしの心意気”を聞いてみた。  

【キャセイ パシフィック航空】久保田直子さん
2000年入社。香港在住も11年となり、そこをベースに世界中に飛ぶ。

 お疲れなら、ワインを1杯召しあがってのお休みを
 キャセイパシフィック航空のCAになって11年になる久保田直子さんは、世界有数のハブ空港となった香港をベースに、月に70~80時間のフライトをこなしている。
「ご搭乗されたお客様が、ビジネスなのかレジャーなのかを瞬時に判断し、それぞれの方が求めるサービスやテンションを予測し、必要なものをタイミングよくサービスするのが、私たちCAの務めだと思っています」
 久保田さんいわく、キャセイパシフィックのよさはフレンドリーな香港人気質だという。
「きめ細かであるけれど、お客様を緊張させない親しみやすさ。私はそこに日本人ならではの気遣いをプラスします。ビジネスマンの方は特に機内でのスタイルができあがっています。お仕事の疲れを取ろうとする方、気分転換を図ろうとする方、またお仕事をする方もいるので『ワインを1杯、先に召しあがってからお休みになりますか?』など、マニュアルにはないお声がけも心がけています」


【ANA】半村玲子さん
1998年入社。現在は国内線、国際線とも乗務。CAアカデミー(訓練センター)では、サービスの教育も行う。

 感謝の言葉に、涙が出るほど喜びを感じます
 ANAのCAアカデミーでサービスの教育も行うという半村玲子さんは、カナダとロンドンへの2度の留学経験を持っている。
「海外で生活をしてわかった“日本文化のよさ”を、もっと伝えるべきだと感じ、それをサービスに取りいれるようにしています」
 例えば水を入れたグラスひとつにせよ、お客様への向きを考え、ふちや底に水がついてないか再確認してから渡すといったことだ。
「ANAの魅力とは、ある意味どん臭い、とても人間臭いサービスと、ハード面の最新技術。そのアンバランス感だと思うのです」
 一般的には大切といわれるヘビーユーザーの客にも、決してなれ合わず、そして決めつけずに対応する。
「親しさのあまりなれ合いの挨拶をするのではなく、ご搭乗への感謝の気持ちを、きちんと目を見て伝えたい。また『この方は、いつも話しかけられるのを好まない』と決めつけず、自分の心に正直に感じたことは伝えたいと思っています」
 それにはこんなエピソードが。
「いつもは話しかけられるのがお好きでないヘビーユーザーのビジネスマンの方なのですが、その日は空気が澄んで眼下の夜景が本当に美しかったので『今日は夜景がすごくきれいです』と話しかけました。お帰りの際『何度も乗っているけど、あんなきれいな夜景は初めて見たよ。飛行機に乗る楽しみを教えてくれてありがとう』と言ってくださって。涙が出るほど嬉しかったですね」


【エミレーツ航空】福田尚子さん
 国内エアラインのグランドスタッフを経てドバイのエミレーツ航空のCAに。

 不自由なことがあれば、気軽にお声がけくださいね
 赤い帽子から下がるスカーフを優雅に巻いた異国情緒溢れるCAの姿こそが、今やエミレーツ航空の代名詞。思わず機内で声をかけるのを躊躇した男性も多いのでは?
「いえいえ、どうぞ気軽に声をかけてください。エミレーツではハネムーンなど記念日に搭乗したお客様に、ポラロイド写真を撮影して、各国の言語でお祝いメッセージを書いてお渡しするなど、フレンドリーなサービスをご用意しておりますから」
 と、入社3年目の福田尚子さん。穏やかな声のトーンながら、時折混じる関西弁がなんともホッとさせる。エミレーツ航空が設立されて26年。国籍や文化の違う約1300人のクルーが揃い、機内でさまざまな言語に対応できるのが強みだという。
「そんな中で、会話する目線の高さや表情、間の取り方まで気を配って働くのが日本人CAならではのホスピタリティだと思っています。初めてご搭乗の様子のお客様には、簡単な説明から始める会話で安心感を持っていただく。仕事で何度か利用してくださるお客様には極力名前で呼びかけ、いつもご搭乗ありがとうございますと、くつろいでいただけるようなお声がけを心がけています」
 サービスを代表とするソフト面だけでなく、最新鋭の機内など充実したハード面も話題のエミレーツだが。
「100都市以上に就航する世界トップクラスのエアラインで働くことはとても勉強になります。最初はカルチャーショックもあったドバイ生活ですが、砂漠に鍛えられました(笑)」


【シンガポール航空】山本亜美さん
2004年に入社後、シンガポールをベースに、日本線を中心に乗務。

 ご一緒できた空の時間。快適にお過ごしですか?
 くびれたウエストに、バティックの裾から時折覗くキュッと引き締まった足首。空港で見かける立て看板でもおなじみのこの制服に、男なら一度は目を奪われた経験があるはずだ。民族衣装をモチーフにした制服をさらりと着こなして現れた山本亜美さんは、カメラマンの要望に応えて笑顔でポーズを変える、とても親しみやすい雰囲気の持ち主だ。現在、シンガポール航空では総勢約7000人のクルーのうち、日本人は約160名。
「宗教や文化の違いで、国によって常識が異なる場合もあります。その常識を破らないよう、クルー同士で妥協点を見つけ、どんな国の方にも失礼のない対応ができるよう、知識を増やす努力をしています」
 機内では実にさまざまなドラマが起きる。そのひとつひとつに丁寧に対応し、よいことも悪いことも共有する相手が、CAという存在である。
「シンガポール航空はクルー同士のコミュニケーション、サポートがとても取れていると思います。だからお客様の要望にもできる限りの努力で応えられるのだと思います。私自身、長いフライトにご搭乗いただいたお客様から『夜も寝ないでお疲れさま』というカードをいただいた時、小さなお子さんから『これ、お姉さん』と書いた絵をもらった時、ああ、見ていてくださっているんだと、心がとても温かくなって、CAになってよかったと感じました」


Text=今井 恵 Photograph=アライテツヤ

*本記事の内容は2011年10月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい