エグゼクティブの間で流行? 「マッチングアプリ代行サービス」という裏稼業

プロフィールの作成やメッセージのやり取りはお任せし、自分はデートの約束をした場所に行くだけ……。そんな「マッチングアプリの代行サービス」が忙しいビジネスパーソンの一部で流行中だという。


ノリよく楽しくメッセージをやりとり

ネット上のやりとりを通じて、女性と気軽に出会うことができるマッチングアプリ。「興味はあるが、プロフィールを登録したり、メッセージのやりとりをしたりするのが面倒」という人もいるだろう。

実は、そんな人向けに「マッチングアプリの代行サービス」を行っている人もいる。30人の代行を請け負っているA氏に話を聞いた。

「1人あたり毎月5万円の費用をいただいて代行業務を行っています。プロフィールの文章については、もちろん本人に話を聞いた上で作成していますが、その後のやりとりは全て私が代行。女性とマッチングし、デートの約束を取り付けるまでやりとりを行い、本人は待ち合わせの場所に行ってもらうだけでOKです」

月5万円となるとなかなかの出費だが、どのような人達が利用しているのだろうか。

「アッパー層のサラリーマンばかりで、私の顧客は全員が年収1000万円以上です。現実でも女性に相当モテていて『もっと遊びたい』という人もいれば、『普段あまり出会いがないのでマッチングアプリを利用している』という人もいます」

共通しているのは、「時間がもったいないから」という理由で代行サービスを利用している点だという。

「収入が多いぶん、やはりお忙しい人が多いですし、『出会うまでの部分にリソースを割きたくない』と思っているのだと思います。何人もの女性とメッセージのやりとりを重ねて、何人もの人に断られたり無視されたりしながらも、デートの約束を取り付けるまでアプローチを続ける……というのは、やはりそれなりの労力が必要ですから」

しかし、30人も代行サービスをするのは相当大変なのではないか。

「僕の場合はそんなに時間もかからないですね。メッセージはテンプレートを用意していますし、3往復程度のやりとりでデートに誘うスキームができていますから」

A氏が生み出したスキームは以下のようなものだ。

「最初に送るメッセージはほぼ固定。『はじめまして、〇〇です。マッチングありがとうございます!』と自己紹介とお礼を書いて、『あなたのプロフィールをちゃんと読んでますよ』と伝えるために、相手のプロフィールにある情報にも触れます。そして最後に、『すごく美人でタイプな方とマッチングできたので、高そうな絵画とかを買わされそうで心配です!』と笑わせるようなことを書くんです」

そして返信がある場合は、「返信のパターンもだいたい決まっている」とのことだ。

「多いのは否定パターンで、『絵画なんて売ってないから大丈夫ですよ~w』みたいな感じです。もうひとつはノリツッコミのパターンで、『あいにく手元の絵画を切らしているんですが、大丈夫でしょうか』という感じですね。いずれのパターンでも、ノリよく楽しい雰囲気でやりとりを続けられます」

そして、2通目以降の返信でもA氏はテンプレートを用意している。

「否定パターンの人には、変な疑いを持ってしまったことを謝罪しつつ、『お詫びにお茶をご馳走させてください! 何ならケーキも付けます』と2通目で送ります。ノリツッコミパターンの人には、『じゃあ売りつけられる前に、僕が描いた絵をあなたに売りつけます』と、手描きのネコの絵を送るんです。『かわいい!』みたいな返信が返ってくることが多いので、次のメッセージで『お礼はお台場デートでいいですよ』と誘います」

いずれの形でも、冗談のノリでデートに誘ってしまうわけだ。

「ノリよく楽しく話しているから、相手も『行きません』と否定はしづらいんです。相手が曖昧にOKそうな雰囲気を出してきたら、『じゃあ今週末と来週末、どっちにする?』と論点をデートの日取りの選択にすり替え、行くことを前提に話を進めます」

また、メッセージの1~2通目からこのようにフザけている人はマッチングアプリでは稀。そのため相手の印象に強く残り、「面白そうな人だな」と思ってもらえてデートに来てくれる確率も高いのだという。

「『高い絵画を~』のくだりは現実で言うとサムい感じですが、文字のやり取りでは意外とスベりにくいです。またマッチングアプリでは、女性は何人もの男達から『仕事は何ですか?』『休みの日は何をしていますか?』などなど、同じようなメッセージを受け取っています。そのため『その他大勢』の1人にならないようなメッセージを送るのが大切なんです」

A氏が用意したメッセージのテンプレートやスキームは、マッチングアプリの豊富な経験と、人間心理の分析にもとづいて設計されたもの。そしてメッセージのやりとりで大事にしているのは、「最短距離で女性とのデートの約束を取り付ける」ということだそう。

「そして『デートする』というゴールから逆算し、メッセージのやり取りをデザインしていくことですね。『何のためにメッセージのやり取りをしているのか』ということを忘れてしまい、日記みたいなやりとりを続け、お互いに面倒になってフェードアウト……というパターンは意外と多いんですよ。メッセージで食べ物の話をする場合も、ゴールはデート。そこをイメージできていれば、美味しそうな料理の写真を見せつつ、『美味しいそう!』という反応を引き出せたら『じゃあ今度行ってみる?』と誘おう……という戦略を立てられます」

ゴールから逆算し、日々の行動をデザインする……という思考法は、ビジネスにも日常生活にも役に立ちそうだ。ネット上で複数の女性とやりとりをし、デートに誘い出すのは時間も手間もかかることだが、自分でしっかり行えば人間的成長の機会になるかもしれない。


Text=古澤誠一郎