ダメなセックスは夫婦愛も壊す【夫のHがイヤ②】

夫を愛しているのに、夜の営みが苦痛で仕方なく、セックスレスを経て離婚に。そして別居中に別の男性と交わる経験も経て、夫のセックスが自分本意な“ジャンクセックス”だったことにも気がついた……。そんな赤裸々な体験を綴った『夫のHがイヤだった。』にはセックスと夫婦関係・男女関係を考えるうえで、示唆に富む話も、身につまされる話も数多く登場する。「コロナ離婚」というワードが話題を呼ぶ一方で、海外ではコンドームの売れ行き急増も報じられる昨今。仲が悪くなってセックスレスへと近づいている夫婦も、セックスの機会が普段以上に増えている夫婦も、読んでおいて絶対に損のない内容だ。今回、同書の著者で、行政書士・カウンセラーとして離婚相談も多く受けているMioさんにロングインタビュー。2回目のテーマは「ジャンクセックス」について。

ジャンクセックスは、している男も傷つける

Mioさんが著書『夫のHがイヤだった。』のなかで警鐘を鳴らしているジャンクセックス。ジャンクセックスとは、セックスセラピストのアダム徳永氏の作った言葉で、男性が女性に十分な前戯もせず、自分の性欲のままに挿入し、射精のために激しく腰を振るような男性本位のセックスのことのことだ。

ジャンクセックスに苦痛を覚えた妻がセックスを拒み、セックスレスに至ってしまうケースでは、男性の側に大きな問題があるように感じるが、「どちらが悪いとも言えないケースもある」とMioさんは話す。

「お互いがセックスに無知だったことが一番の原因とも言えます。知らずにやっていたとはいえ、セックスを拒まれた夫の側も傷ついています。拒まれた理由が分かっていないので、『妻は僕のことを受け入れてくれない』『僕は愛されていない』とショックを受けてしまいがちなんです。一方の妻の側も、愛する夫とのセックスが苦痛になって強く傷ついてきたでしょうし、セックスを拒みながらも『夫のセックスに“付き合ってあげられない”』といった罪悪感を抱いているケースもあります。でも、自分たちがしていたのがジャンクセックスだと分かれば、夫も「自分は嫌われている」という妄想から抜け出せるでしょうし、妻の側は『ジャンクセックスは断って当然だった、自分の感性は間違えてなかったんだ』と気づけるわけです」

なお、Mioさん自身も、著書の『夫のHがイヤだった。』で書いたように、夫のジャンクセックスで傷つき、離婚に至った過去を持っている。

「ザックリ言うってしまうと私の離婚は、私が夫とセックスをするのがイヤになり、それで拒否をしたら、『させてくれないなら離婚だ!』と言われた結果でした。私は『愛し合ってるなら夫婦の問題は何でも話し合いで解決できるはず」と思っていたので、セックスが夫婦関係悪化の落とし穴になるなんて想像もしておらず、自分たちのことはすごく珍しいケースだと思っていたんです。でも今の仕事で離婚相談を受けてみると、それは全然レアなケースではありませんでした」

ただ、ごく普通に暮らしている夫婦は、「ほかの夫婦がどんなセックスをしているか」を知る機会はほとんどないだろう。「離婚相談に訪れた方は、みなさん『こういう話は夫婦間でも友達同士でもしたことなかったです』とよく言われます」とMioさん。

一方で書籍やネットを通じて他の夫婦のセックスについて知ることは可能で、それが自分たちのセックスレスや不仲の解消につながるケースもある。実際、Mioさんのブログや著書『夫のHがイヤだった。』を読んで、「自分が夫とのセックスが辛かったのは、それがジャンクセックスだったからだと気づきました」といった感想が多く寄せられるという。

「女性の中には夫とのセックスが辛く感じる理由について、『私が性的なものが苦手だから』と思っている人もいますし、『私の体はどこかおかしいんじゃないか」と不安になっている人もいます。またジャンクセックスしか経験したことがないため、セックス=痛くて気持ちがよくないものと決めつけていて、『女にとってセックスなんて大したことないでしょ』『あんなことで気持ち良くなってるのは、男性向けAVの女性だけよ』と言う方もいます』

セックスに対する知識や経験の不足が、そうした誤解の原因になり、夫婦の不仲の元になったりしているわけだ。なおMioさんはブログで、ブログ読者から寄せられたジャンクセックスにまつわる投稿の紹介も行っている。そこには、「セックスですれ違ってしまう夫婦を少しでも減らしたいから」という思いがある。

「ブログを書きはじめて2ヵ月ほど経ち、アメブロのメンタルヘルス部門でアクセス数がずっと1位になっていたころは、ブログを通して月に200通ほどのメッセージがをいただきました。『私が悪いんじゃなかったって気づきました』『気持ちが楽になりました』という声が多かったので、『そのお話を公表して、多くの人で分かち合いませんか』と提案しました。そうした投稿は今もブログで公開をしているので、ぜひ読んでいただきたいです」

セックスの知識や技術の不足からレスになるケースも

なお、セックスについての正しい知識や技術があり、目の前の相手を大事に扱うことができれば、そうしたセックスの快感は、「愛する相手」以外とも味わうことができるという。

「そもそもまだ愛が生まれていない2人でも、セックスでお互いが気持ちよくなることで、愛情がわいてくるケースもあります。もちろん、愛する相手とお互いが気持ちのいいセックスをするのが一番理想的ですけどね。逆に最も悲惨なのは、『愛し合っているのにセックスが気持ちよくない』という状態。私の前の夫とのセックスはまさにその状態で、本当に悩み苦しみました。『愛しているのに、何で荒っぽいことするの? 痛いと言ってもやめてくれないの?』とずっと思っていましたし、一方で夫は夫で『あなたを愛しているって言ってるのに何でさせてくれないんだ!』と不信感を募らせていました。『愛』を持ち出してくるからセックスの問題が深刻になるし、気持ちのよくないセックスは夫婦の愛も壊してしまうんです」

気づいたらセックスレスになっていた……というカップルや夫婦は、自分たちのセックスの内容を一度見直し、正しい知識を身につけることが大切なのかもしれない。

「愛し合って結婚したのに、どちらかが拒否をして、『するの、しないの』ですれ違っている夫婦は、セックスについてのベースの知識や方法が何かズレててしまっている可能性が高いです。それを放置しておくと離婚にまで発展してしまうケースを数多く見ています。

夫のHがイヤ③に続く

Mio
大阪府生まれ。大学で知り合った同級生の男性と22歳で結婚。夫との夫婦生活が苦痛で、「自分はセックスができない身体なのではないか」と悩み、摂食障害とうつ病に。その後セックスレスを理由に夫から離婚調停を申し立てられ、別居を経て離婚。2017年の冬からアメブロに当時を振り返る手記を連載し、大きな話題を集める。現在は税理士・行政書士・カウンセラーとして、女性起業家のサポート・離婚業務を中心に活動。著書に『夫のHがイヤだった。』(亜紀書房)。ブログ:夫のHが嫌だった


Text=古澤誠一郎