畠山美由紀「旅を経て気づく愛」 ~野村雅夫のラジオな日々 vol.21

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、5年6ヵ月ぶりにアルバムをリリースした畠山美由紀さん。


ミュージシャンに旅はつきもの

体温の伝わるふくよかな声でいて、さらりとしていてかっこいい。畠山美由紀の歌の魅力を僕はそんな風に捉えている。ギタリスト沖 仁、高野 寛、おおはた雄一、Salyu、土岐麻子など、彼女の音楽を愛するミュージシャンも多いし、僕は冬になると必ず、堀込泰行やハナレグミとコラボレーションした名曲『真冬物語』をラジオでかける。そんな畠山さんが久しぶりにオリジナル・アルバムを出されたとあって、しかも、そこにはいきものがかりの水野良樹、cero高城晶平、KIRINJI堀込高樹、そして冨田恵一が参加しているとあっては、ぜひ番組にお招きし、この機会にお初にお目にかかりたい。昨年末、12月26日、僕の願いが通じたので、今回はそのやり取りを楽しんでいただきたい。


チャオ! 畠山美由紀です。

ーーチャオ! よろしくお願いします。はじめまして。

はじめまして。びっくりしましたよ。

ーー何がですか? もしかして、僕の顔と名前のギャップですか? ですよね。ま、今はまだ慣れない状態だと思いますけれど、この対談が終わる頃には、もう「雅夫と言えば、この顔だ」となっていただけるんじゃないかと。

雅夫だもんね。フフフ。

ーー畠山さんは、番組には初めてのご登場ということで、軽くプロフィールをご紹介します。Port of NotesやDouble Famousでボーカリストとして活動しながら、2016年にはソロ15周年も迎えられました。カバー集を出したりもされていましたが、この程、2018年12月14日、オリジナル・アルバムとしては5年6ヵ月ぶりとなる『Wayfarer』(ウェイファーラー)をリリースされました。このWayfarerという言葉は、もしかするとあまり馴染みがないという方が多いかもしれませんね。

あまり一般的な言葉ではないですよね。

ーー類義語でいうと、トラベラーかな?

まあ、そうですね。意味合いとしては遠くない。

ーーfare(フェア)というのは「行く」という意味ですが、基本的には徒歩での移動を指すらしいですね。

歩いて旅するという意味ですよね。

ーー旅の手段はいろいろありますが、一番昔ながらのものだ。

水戸黄門の一行のような感じですかね。

ーーハハハ! 水戸黄門はウェイファーラーの代表ですね。

そうですね。とか言って。フフ。

ーーこれからアルバムの話もしていきますが、ミュージシャンに旅はつきもの。

旅芸人ですからね。

ーー国内で行ってない都道府県ってあります?

ないと思います。

ーー47都道府県すべて回られてるんですね。僕は全然ダメ。行ってないところがたくさんありますもの。

いやいや、それは齢(よわい)が違うから。重ねてる齢が。

ーー齢の問題ですかね〜。それはさておき、もしプライベートで時間が取れるとして、落ち着いて再訪したい場所ってありますか?

金沢はゆっくり行ってみたいですね〜。

ーー仕事ではどの季節に行かれたんですか?

冬なんです。何度か訪れているんですが、一番最近行った時は大雪が降った次の日で、いろいろ見ることができなかったんです。

ーーそうか。風情があるというには、降りすぎているほどの雪だったわけですね。

そう。でも、庭園であるとか、飲み屋さん街も、それこそ本当に風情があるんですよ。

ーー金沢は小京都なんて言いますが、文化も歴史も深いものがありますし。21世紀美術館みたいな最先端のものもある。いい場所ですよね。

絶対に、金沢はちゃんとゆっくり巡りたいです。

ーー畠山さんは、お酒は飲まれるんですか?

お酒に飲まれるタイプです。

ーーハハハ! 

雅夫さんはどうですか?

ーー僕は完全なる飲ん兵衛です。冬の金沢でお酒を飲むなんて、最高でしょうね。

いいですよ。しみじみと飲みたくなります。

ーー冬の旅というと、僕なんかはスキーをするので、どうしてもゲレンデをメインに考えがちなんです。あるいは、寒いから暖かい場所へ逃げ出そうとかね。でも、むしろもっと寒いところへいって、冬ならではのしんとした景色を愛でて、キリッと寒い時期だからこその食べ物を味わうのもいいですよね。畠山さんも気仙沼のご出身ですけど、金沢も含め、海沿いだと特にそうでしょう。

そうそう。「おつなもの」って感じで魅力ありますよ。

ーー畠山さんがお酒を嗜まれるということがわかりましたので、いつかまたご一緒できれば。

一緒に飲みたいわ。って、声が本気になっちゃった。ハハハ!

ーー結構な「圧」を受けましたので、こちらからも「圧」をかけて、言葉だけにならないように実現できればと思います。

そうですよ。かわされたら、寂しいもの。実現させましょう。

ーーアルバムのタイトル『Wayfarer』から広げて旅の話をいたしました。先ほどはさらっとしか触れませんでしたが、2014年には昭和歌謡曲をカバーした『歌で逢いましょう』というアルバムも出されました。気仙沼では東日本大震災もありましたから、ミュージシャンとしての心境の変化もきっとあったと思うんです。

ありましたよ、やっぱり。

ーー今回の作品もその変化の延長線上に位置づけられると思います。端的に言うと、どんな変化ですか?

震災の後は、自分の表現というよりも、聴いてくださる人に喜んでもらいたいという気持ちが強くなりました。

ーー表現者としては、自分がやりたいこと、その理想像がある一方で、聴く側にも求めているものがありますよね。そのバランスを深く考えるようになったということですか?

もちろん表現者だから、自分の表現は大事にはするんですが、それと同じように、もしくはそれよりも、喜んでもらいたいと思うようになりましたね。

ーー前作で昭和歌謡曲をカバーされたというのも、馴染みのある歌を畠山が歌うとこうなりますよって意味合いもあったのかなと想像していました。

そうですね。その意図はありました。

ーーで、今回の『Wayfarer』ですが、冨田さんの役割は大きいですね。

はい。冨田ラボの冨田恵一さんにトータル・プロデュースをしていただきました。

ーー全10曲。冨田さんはサウンドの魔術師ですから、気持ちよく聴かせながらも、1曲1曲どこかに仕掛けがあって面白かったです。

よかった。

ーー詞の多くは畠山さんが手がけていますが、コラボレーションがいくつかございます。1曲目の『Blink』では、僕も親交のあるceroの高城晶平くんが歌詞を書いています。これはどういう経緯なんですか?

冨田さんの『SUPERFINE』というアルバムがあるじゃないですか?

ーーあれは面白い作品でした。

そう、ジャケットもかわいくて。あの作品で高城さんが歌詞を書いていらっしゃるものがあって、「これはすばらしくない?」って思ったんです。この『Blink』は冨田さんの作曲なんですけど、これは歌詞は私じゃなくて、ぜひceroの高城さんにやっていただくと、曲がちゃんとコンプリートするんじゃないかなと思ってお願いしたんです。

ーーこれはアルバムの幕開けとしてすばらしいと思いますね。

でしょ?

ーー旅の入口にふさわしいです。高城くんは叙情的な言葉を使うんだけど、時々フックとして、気になるワードを挟むんですよ。たとえばこの曲だと、植物が出てきます。「落ち葉を降らせるトウカエデ」。単純に「かえで」とか「もみじ」ではなく、「トウカエデ」なんですよ。

印象的ですよね。

ーーそれから、もうひとつ。「風に揺れうたうオウギヤシ」。「オウギヤシ」って、何ですかって話ですよ。

私も調べましたもん。5文字の言葉がメロディーにハマるっていう事情があるんですけど、これがまたびっくりな話で、KIRINJIの堀込高樹さんが作ってくれた9曲目に入っている『ふたりの出来事』という曲に、やっぱり5文字の言葉が必要な箇所があって、私もやっぱり植物の名前を当てはめたんです。「たちあおい」と「かきつばた」。たまたまなんですよ。

ーー美しいなぁ。

5文字が合うメロディーに、たまたま高城さんと私が、植物の名前でリンクしたという不思議な話です。

ーーそして、10曲目には、いきものがかりの水野良樹さんが作詞作曲を手がけた『愛はただここにある』ってのが入って、旅が終わります。アルバムを通して、解釈はいろいろと広がると思うんです。主人公は複数なのか、それともひとりなのか。それはどういう人物なのか。僕は僕なりに、想像を膨らませながら聴いてしまいました。そして、最終的に『愛はただここにある』と落ち着くわけです。旅って移動するわけじゃないですか。その果てに、『愛はただここにある』と歌われるのが素敵だと思いました。

それ、今言われて初めて気づきました。ほんとだね。

ーー旅を経て気づく愛って、素敵じゃないですか。

それ、すごくいいですね。メモしとこう。

ーーハハハ! 植物も出てきますが、景色の中を人が「移動」していく言葉のチョイスがやっぱり多いですよね。『チャイナタウンの朝』っていう曲では、大賑わいする昼や夜とは違う顔を街が見せる。そして、その移動の背景には、一筋縄ではいかない恋もあったりして……アルバム全体、曲順も含めて、僕はすごく楽しみました。

すごくいいことをおっしゃってくださって、嬉しいな。

ーーさ、今後の予定です。ツアーがございます。東京が3月16日(土)に、めぐろパーシモンホール 大ホール。大阪は3月21日(木・祝)に、心斎橋Music Club Janus。こちらはやはり冨田恵一さんも参加されるんですか?

冨田さんがバンマスで来てくださって、豪華メンバーをバンドに揃えてお届けします。待っとるよ〜

ーーお別れにお送りするのは、アルバムのオープニング、ceroの高城くんが詞を手がけた『Blink』です。この曲は最後に「あなたに会うまで その日が来るまで」とあって、『Wayfarer』という旅の幕が開くわけです。3月には東京大阪で会えるようにと願いを込めながら……。

あら! 本当にまあ、美しいストーリーを作ってくださって、ありがとうございます。

ーー何をおっしゃいますやら、こちらこそ、今日はありがとうございました。

畠山美由紀 ニューアルバム発売記念コンサート「Wayfarer」

出演:畠山美由紀、冨田恵一、
   鈴木正人(bass)、小池龍平(Gt)、真城めぐみ(cho)、平 陸(Dr)

<東京公演>
日時:2019年3月16日(土)  Open 16:00/Start 17:00
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール (目黒区八雲1-1-1)
チケット:全席指定 ¥6,500(未就学児童入場不可)
お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
https://www.red-hot.ne.jp/play/detail.php?pid=p

<大阪公演>
日時:2019年3月21日(木・祝)) Open 16:30/Start 17:00
会場:心斎橋Music Club JANUS (大阪市中央区東心斎橋2-4-30-5F)
チケット:全席自由 6,000円 (税込/ドリンク代別途)
※未就学児童は入場不可
お問合せ:清水音泉 06-6357-3666
https://www.shimizuonsen.com/schedule/detail/1984/


野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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