「きょうだいゲンカは、どう収めるのがベスト?」 ~親子関係はアドラー心理学で解決⑤

仕事では実績を上げ、高い評価を受けているし、周囲からの信頼も厚い。ところが、相手が我が子となると、努力と成果がどうも見合っていないような……。前回、夫婦関係の悩みを、アドラー心理学をベースにズバリ解決してくれた熊野英一先生が、今度は親子問題をレスキュー! 


親に求められるのは、ケンカの裁判役ではなく、見守り役

子供が複数いれば、避けては通れないのがきょうだいゲンカ。とくに幼少期は日常茶飯事で、1日に何度も衝突することも少なくない。「私が遊んでいたオモチャをとった!」「僕が先に見ていたテレビ番組を、勝手に変えた!」「私がとっておいたアイスを食べた!」「そばを通る時、わざと僕にぶつかった!」。親にしてみれば、呆れるような理由でも、本人達にとっては大問題。お互いの主張をぶつけ合ううちにヒートアップし、そのうち手が出て足が出て、最後は双方大泣きに。そんな状況に、親たる自分がとる最終手段は……、「うるさーーい! いい加減にしろ!」。これではいけないとわかってはいるのだが。

「本来、きょうだいゲンカは、当人同士で解決するのがベスト。親の課題ではなく、子供たちの課題なのですから。子供が幼い場合、『お姉ちゃんが意地悪した!』とか『○○が、私にこんなことをした!』などと、親に言いつけにくることも多いでしょう。でも、どちらが悪いのかを突き止め、非を認めさせ、謝らせるのが、親の役割ではありません。親がすべきは裁判官になることではなく、子供たち自身に考えさえ、解決させるためのサポートだけ。たとえ子供が小さくても、『これは君たちの課題だから、お父さんは、できれば自分たちで解決して欲しいと思っているよ』と告げ、見守ってほしいですね」

ケンカ解決のためのルールを、きょうだいで決めさせる

子供同士でケンカを解決するために必要なのは、「ルールづくり」。たとえば、お互いの主張を言い終わったら握手をし、それ以上蒸し返さない。どちらが悪くても、それぞれ「ごめんね」という言葉を口にして終わりにする、等々。どんなルールであっても、きょうだいで話し合い、合意の上で決めたものならOK。

「あらかじめルールがあれば、それに従うだけでよし。親に、自分に有利な判定をしてもらおうとして、『ひどい目にあったのは私!』『僕の方がかわいそうだ!』といった"被害者"主張合戦をしなくて済みます。また、親としても、いつまでもモメている子供たちに対しイライラを募らせ、キレることもないはず。

とはいえ、話合いがスムーズに進まないこともあるでしょうし、お互いの正論がぶつかることもあるでしょう。そんな時は、『君たちの課題にお父さんが介入してもいい?』と聞き、双方から承認されたら、サポートを買って出るのも一案です」

共感ファーストが、子供の気持ちを和らげる

きょうだいゲンカに親が介入する場合、大切なのが"共感ファースト"。

「まずは、子供それぞれの想いや考えを、しっかり聞いてください。その内容がどんなものであれ、否定したり、頭ごなしに叱ったりせず、『お姉ちゃんはそう思ったんだね、わかるよ』『弟は、そんなふうに感じたんだね。なるほどね』と、双方に共感すること。その上で、『お父さんは、君たちの気持ちには共感できるけれど、暴力で解決するのは同意できないから、ルールに沿って、このケンカを終わらせたらどうかな』と、提案するのがおすすめです」

子供だけではルール通りにできないだろうと予想されるなら、"先回り"するのも有効。

「ケンカしたら、こうやって解決するというルールは決めたよね。でも、もしも君たちだけで解決できなかったら、お父さんに相談してね」と、子供たちが遊ぶ前に告げておくのだ。

「子供たちがケンカを解決できたら、『君たちがルールを守ってくれて、お父さんは嬉しいよ。どうもありがとう』という言葉もかけて。ルールを守ることで、人から感謝される。その体験を多く積み重ねることが、子供の成長につながりますから」

Today’s Advice
子供のケンカは、“裁く”のではなく、“見守る”というスタンスで


アドラー心理学とは
ユダヤ系オーストリア人心理学者アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)が築き上げた心理学。個人とは分割できない存在であるという理論のもと、現代のさまざまな問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろん、学校や家庭や企業でも活用されている。


Eiichi Kumano
アドラー心理学に基づく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。日本アドラー心理学会正会員。1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業し、メルセデス・ベンツ日本勤務の後、アメリカのインディアナ大学ケリー経営大学院に留学、MBAを取得。帰国後、保育サービス業などを経て、2007年、株式会社子育て支援を創業。著書に、『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(共に小学館クリエイティブ)などがある。


『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本
熊野英一
小学館 ¥1,404


Text=村上早苗 Photograph=鈴木克典