まるでアート作品! あの名作エッグチェアが織物を羽織る!?【フリッツ・ハンセン】

織物メーカー、川島織物セルコンと、北欧家具メーカー、フリッツ・ハンセンのコラボレーションが今、脚光の的に。異業種の職人たちの本気の掛け合いが生み出した3つの作品は、インスピレーションを刺激してくれるーー。

職人技のコラボが生み出す、まったく新しい価値とは?

北欧家具の巨匠、アルネ・ヤコブセンが1958年にデザインしたラウンジチェア「エッグチェア」。卵を思わせる独特のフォルムが全身を優しく包み込む、言わずも知れた不朽の名作と、脈々と受け継がれてきた織物の技術、そして、新進気鋭のファッションデザイナーがコラボレーションを果たし、新たな世界観を生み出した。

きっかけは、天保14(1843)年創業の織物メーカー、川島織物セルコンが、織物の未来を考える活動のひとつとして企画したことに端を発する。織物のデザインを依頼したのは、青木明子「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」デザイナー、井野将之「ダブレット(DOUBLET)」デザイナー、堀内太郎「タロウホリウチ(TARO HORIUCHI)」デザイナーの3名。独特の存在感を放つその布が、あのエッグチェアに落とし込まれたのだ。

そもそも、川島織物セルコンは、京都・西陣織をルーツとして着物の帯や緞帳(どんちょう)、インテリアファブリックまでを手がけ、古くから現在まで匠の技術を世界に発信してきた。今回は、新たな試みであり、大きな挑戦だっという。

「私たちは176年続く、いわゆる老舗の織物屋なので、お客様からいただいたオーダーに応えることは得意としていました。ですが、伝統だけに留まらず、新しいことを自ら発信していくために、今まで関わることのなかった新進気鋭のファッションデザイナーとフリッツ・ハンセンのエッグチェアとのコラボレーションを企画したのです。デザイナーの方々には、自社の工場を実際に見ていただくことろから始まり、私たちが思いも寄らないアイデアをいただき、そのリクエストに応えるため、まさに織物の可能性を広げる未知の体験となりました」

まず、その鮮やかなビロード織りが印象的な、青木明子「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」デザイナーの作品「万華鏡のように色が変わり反射する織物」を纏ったエッグチェア。日本古来の伝統的な柄のなかに、一部、周りとは違った立体的なテクスチャーが入るビロード織りに魅せられたという青木氏。ビロードとともに、それとは相反する未来的なテクスチャーという2つの異なる質感を生み出した。

そして、井野将之「ダブレット(DOUBLET)」デザイナーの作品「見る角度で図柄が変わる織物」を纏ったエッグチェアは、得意のレンチキュラー素材をベースに製作。革張りの反発がある座り心地なのか、包まれるようなビロードの座り心地なのか、ウッドベンチのような硬い座り心地なのか、見る角度により座り心地がまったく変わって見えるという、多彩な世界観が詰まった逸品に。

最後は、堀内太郎「タロウホリウチ(TARO HORIUCHI)」デザイナーの作品「古きを知り、新しきを創る織物」を纏ったエッグチェア。コンセプトになったのは、なんと緞帳の製作過程で職人が描いた下絵だった。昔の自然や動物を描いた図案が選ばれ、通常作品に入ることがない、「30」や「21」などの糸の指示番号までデザイン化。モノ作りへの敬意を評した作品といっても過言ではない。

この3つの異なるアイデアを実現するべく、製作現場でも大きな挑戦となったという。

「例えば、化学繊維にシルクをのせるなど、普段は織ったことがないものをどうすれば上手くいくのか、職人たちと話し合い、手作業と機械の技術を融合させて挑戦しました。思いも寄らないアイデアを具現化したことは、生産部署にとっても大きな経験値となりました。織物の可能性がこんなにも広がったことは、自分たちでも驚くほど」

この3つの織物の製作期間は約半年。そして、デンマークにあるフリッツ・ハンセンの工場で職人によって、約2ヵ月の試行錯誤を通して、実際に張りこみが行われた。こうして川島織物セルコンの職人と、青木明子氏、井野将之氏、堀内太郎氏の3人のデザイナー、そしてフリッツ・ハンセンの職人という、プロフェッショナルたちの技術が見事に結晶した。

この1点モノのエッグチェアは、4月7日(日)までフリッツ・ハンセン青山本店にて展示される。新たなものを生み出したいと考えるすべての人に、大きなインスピレーションを呼び起こしてくれるだろう。


織物屋の試み展 ーフアッションデザイナー編-
期間:4月7日(日)まで
時間:12:00〜18:00
場所:フリッツ・ハンセン青山本店(東京都港区北青山3-10-11 1F&B1)


Text=谷内田美香(ゲーテWEB編集部)