「jaywalking苦手?」と聞かれ、何も言えなくて…~英語力ゼロのロンドン移住体験記22

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めて渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第22回!

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何も言えなくて…秋

イギリスに住んでいる人たちは、赤信号でもどんどん、横断歩道を渡ります。

赤の時間が日本より長く、青になってもすぐ変わってしまうので、目的地までのすべての信号を守ろうと思うとなかなかの時間をロスしてしまうからです。

とはいえ、私は今だに信号無視をするのに戸惑いがあり、じっと青に変わるのを待ってしまいます。そんな時に、元語学学校のクラスメイトに言われた一言がこれでした。

You are not good at jaywalking, aren’t you?
(ジェイウォーク、苦手?)

とっさに「何も言えなくて…夏」という平成初期の名曲が頭をよぎりました。J-WALKっていうバンド、いたなぁ……。しかし友人がいくら日本文化に興味を持ってくれているからといって、突然あのバンドの話をしだすわけもありません。

Jaywalking = 信号無視をする、危険なところに足を踏み入れる

というスラングでした。友人によれば、鮮やかに信号無視をする人のことを“professional Jaywalker”などと呼んだりしているそうです。

調べてみればjayとは「拙い」という意味があり、Jaywalkという言葉が生まれた由来は諸説あるようです。ひとつは、アメリカのカンザス州で、車線を間違えて走るクルマを“jay-driver”と呼んだのが始まりで少しずつ意味が変わって今のJaywalkになったという説。二つ目は初めてニューヨークに来て、あまりのビルの高さに驚いて上を見上げながら歩き、信号に気がつかない観光客のことをjaywalkerと呼んだ、という説です。後者の方のjayは「おのぼりさん」というような意味になると思います。

信号を守るか守らないかは、イギリスに住み慣れているかいないか、という以前に外国人の場合はとてもお国柄が出ます。以前、フランス人、トルコ人、スイス人、日本人の私、で道を歩いていた時は、フランスとトルコ勢はJaywalkでどんどん進んでいくのに対して、スイスと日本勢はいちいち立ち止まり、先をいく二人に追いつけなくなりました。スイスの方は「信号無視なんてあり得ない」と言い、トルコの方は「トルコじゃ青信号でも車が走ってくる。信号なんて意味ない」とおっしゃっていました。

黄色いライトが立っているタイプの横断歩道は歩行者優先なので、いつでも渡ってOK。 ただ基本的にクルマのスピードが早いので、「今渡っていいのかな?」といつも戸惑ってしまいます。写真はザ・ビートルズのジャケットで有名なアビー・ロードです。

スコティッシュ・イングリッシュを知っているか

先日初めてスコットランドの首都エディンバラへ行ってきました(一般常識がなく、渡英する前までの私は、スコットランドとイギリスは別の国かと思っていました。すごく恥ずかしい)。多くの人に「ロンドンにいるうちに、一度エディンバラに行くといい」と言われて興味を持っていたのです。

しかしロンドン生まれの人に「スコットランドに行く」というと必ず「僕らでもスコットランドの英語はわかりづらいからね、頑張って(笑)」と言われます。訛りがイングランドの英語とは違うとのことで、ロンドン生まれの起業家ジョン(日本語が喋れる)によると(真偽のほどはわかりませんが)「スコットランドの英語は東北弁のような位置づけ」とのことでした。BBCのアナウンサーの訛りのない、ゆっくりとした英語ですら50パーセントも聞きとれていない状態で、「スコティッシュ・イングリッシュ」を理解できる自信は到底ありません。不安になって出発前に、英語教師を目指すイギリス人のおばさま、リンにスコットランドの英語についていくつかリサーチをしたところ。

「えっ? 何が違うか? もう単語から違うから」

とのことでした。例えとして教えてもらった単語がこれです。

dreich

読み方をカタカナにすると「ドリク」が近いと思うのですが、もっとドイツ語に近い強い音です。私には到底正しく発音できません。そもそも語源もドイツ語だとのことです。

これは「曇っている」「暗い」という天気を表す形容詞でした。

例えばこのように使うとのこと。

a cold, dreich early April day(寒くて、薄暗い、4月上旬の日)

「イギリス人はイングランドだろうがスコティッシュだろうが、とりあえず天気の話をするしね。これだけ覚えていったら? エディンバラはスコットランドの中でも、あまり訛ってない方だから大丈夫」

ということで、完全に丸腰でエディンバラに向かいました。

ロンドンから列車で7時間、列車の窓からはのどかな田園風景が続きます。同行してくれた韓国人の友人と「わー、綺麗だね。ウィンドウズの待ち受け画面の写真みたい」と情緒のない感想を言い合いました。なんというか、育った国や文化が違っても、同じテクノロジーを使っていればこういう共通言語があるんだなぁと、全然情緒がないながらも少し感動しました。

この写真はあまりウィンドウズっぽく撮れていなくてすみません。

実際に到着して、「スコティッシュ・イングリッシュ」に戸惑うことは特にありませんでした。カフェなどでも、リンの言った通り店員さんはみんな標準的な英語を使っている印象で、私はロンドンで苦戦しているのとまったく同じ、いつも通りの英語の苦戦をしていただけです。街並みはロンドンよりずっと古くて、また違った美しさがありました。教えてもらった“dreich”は使うことはありませんでしたが、覚えておけばスコットランド出身の人と会話が盛り上がるかもしれません。

丘の上から見たエディンバラの夜景です。この写真を撮った時は「わー!ディズニーランドみたい」というまたも情緒のない感想を言いました。もうディズニーランドには20年も行ってないけれど。
MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。


Illustration=Norio


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