不登校の女子高生が同時通訳者に 「不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由」 田中慶子


英語と闘い続けてきた女性に見る
人生というストーリーの不思議、そして美しさ

『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』田中慶子 著KADOKAWA ¥1,300

のっけから結論めいたことを言ってしまうが、たぶん「理由」はないんじゃないかと私は思っている。

みんなと同じ、が大嫌いで「不登校の女子高生」になった著者。大学進学なんて夢にも思わず、卒業後はフリーター生活へとなだれ込む。

「留学でもしてみようかな」 

ある日の思いつきに飛びつくようにして、やってきたのはアメリカ西海岸の語学学校。留学さえすればバイリンガルになれるなんて勘違いだったと気づいた時には、既に著者と英語との因縁とでも呼ぶべき関係が始まっていた......。

みんなと同じは嫌だとして、じゃあ何だったらいいわけ? 学校や職場で英語と格闘し続けながら、著者の胸の内には常にこの問いがあった。はっきりした答えを見い出せないまま、目の前の壁を越えることに必死になっているうちに、同時通訳者という仕事に巡り会い、いつの間にかその世界でトップレベルといわれる地位に立っていた。

本書で半生を振り返った著者は、あとがきでシンプルにこう語っている。

「大切なのは正解にこだわることではなく、自分がなにを伝えたいか、なにをしたいのかという軸をはっきりとさせること」

これには私も100%同意するけれど、彼女の人生の軌跡はこの言葉のようにはシンプルではなかったことは本を読めばよくわかる。

状況に流されながらも、ある時は精いっぱい踏ん張ってみた。不本意な現実を甘んじて受け入れたこともあるし、ねじ伏せるまで抗ったことも。どこで力を抜き、どこで振り絞ったのか。そこには明確な規則性や「理由」は見受けられない。だけれども彼女は今、彼女にしか切り拓けなかった道を歩んでいる。

やっぱり人生は成るように成るという美しい話として、本書はぜひ読まれるべきだと思う。