欧州サウナ最前線 ~ととのえ親方のサウナ道④<サウナ旅スイス&イタリア編>

札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、"ととのう"状態に導いてきたことから”ととのえ親方"と呼ばれるようになった松尾大。プロサウナー・ととのえ親方の連載第4回は、6ヵ国・18ヵ所のサウナを巡った欧州サウナ紀行の第一弾。今回はスイスとイタリアの温浴施設をレポートする。


世界一美しい温泉施設を訪ねて

今年の4月に7日間の日程で行われた、サウナ大使・タナカカツキさんプロデュースによるフィンランド・サウナ旅。僕も参加者の1人でしたが、「せっかくだから別の国のサウナも見てこよう」と、その前後にも各国のサウナを巡ってきました!

最初に訪れたのはスイスの山奥にある『Therme Vals(テルメ・ヴァルス)』。サウナというよりは温泉がメインの施設ですが、設計を手がけたのは世界的建築家のピーター・ズントー。ホテル部分には隈研吾さんが手がけた客室もありました。建築のみならず、温泉施設内の水の見せ方も差し込む光も美しく、空間の演出が本当に見事。五感を心地よく刺激される、 “世界一美しい"と評判通りの温泉施設でした。

3段階の温度帯を楽しめるスチームサウナも見事でしたが、特に感心したのがシャワー。シャワーヘッドの位置が2mほどの高さにあり、図太い配管とホースで運ばれる水量も圧巻。個々のシャワーごとに「粒が大きいタイプ」「ストレートに落ちてくるタイプ」など水の出方も異なり、それぞれに違う心地よさがありました。

このシャワーで冷たい水を浴びると、本当に気持ちいい。「これは“浴びる水風呂”だな」と感じましたね。また、高いところから水が出て、水量も多いのに、肌に当たって痛いわけでもない。本当に見事な設計がされているシャワーでした。

あとテルメ・ヴァルスで面白かったのは時計です。ピーター・ズントーは「時間に縛られる場所にしたくない」という考えから、施設内に時計を置くのが嫌だったようです。その妥協案の形なのか、設置された時計は本当に細い筒状のもの。広い施設なのに、その筒の上にある小さな文字盤でしか時間が確かめられないんですよ(笑)。

そして、このテルメ・ヴァルスに「デザイン設計面」でオマージュを捧げた施設が日本にあります。それが熊本の「湯らっくす」、サウナシュラン2位のサウナです。

次に訪れたのが、イタリアのミラノの町中にある『QC Termemilano (キューシー・テルメミラノ)』。駅の空間をリノベーションした温泉施設なんですが、古い時代の城壁に囲まれた庭園に、複数の温泉やサウナが並ぶ非常に美しい空間でした。飲食施設も入っていますし、日本のスパのように1~2時間で帰るというよりは、1日をゆったり過ごす利用者が多め。水着着用で男女一緒に楽しめるので、若いカップルも目立ちました。

サウナについては、電車の車両をそのまま使ったもの、壁が藁でできたものなど、それぞれコンセプトが違っていたのが面白かったです。ここもテルメ・ヴァルスと同じくシャワーにこだわっていて、シャワー室の使い方も工夫されていました。

この2つの施設から感じたのは、「ヨーロッパでは日本のように湯船に浸かる“お風呂文化”がないぶん、シャワー文化が発達したんだな」ということ。実際、ヨーロッパのサウナや温泉施設では、日本ほど水風呂が重視されていない。施設の広さに対して数が少なかったり、狭かったり、水温もあまり冷えていないところが目立ちました。逆に日本は水風呂が発達しているぶん、シャワーが今ひとつですよね。サウナは素晴らしくても、シャワーの水圧が強すぎたり、チョロチョロとしか出ないところも多かったりしますから。

なお料金はテルメミラノが50ユーロ(約6000円)ほどで、テルメ・ヴァルスは80スイスフラン(約9000円)ほど。テルメ・ヴァルスは400スイスフランで宿泊できて、宿泊者は入浴料も無料なので、泊まって利用するのがお得です。

こうした金額を聞くと「日本の温泉やスパと比べてメチャクチャ高い!」と感じるかもしれませんが、海外が高いのではなく、日本が安すぎるんです。それは日本の銭湯が「地域住民の日常生活において保健衛生上必要なもの」と公衆浴場法で定められ、価格も抑えられてきたことと関係があります。そのためスパやサウナの価格も日本では安めですが、今後はテルメ・ヴァルスやテルメミラノのような価格帯の施設も需要が出てくると思います。

⑤に続く