「勉強したがらない子供を改心させるには」 ~親子関係はアドラー心理学で解決③

仕事では実績を上げ、高い評価を受けているし、周囲からの信頼も厚い。ところが、相手が我が子となると、努力と成果がどうも見合っていないような……。前回、夫婦関係の悩みを、アドラー心理学をベースにズバリ解決してくれた熊野英一先生が、今度は親子問題をレスキュー! 


勉強しないことの結果を引き受けるのは、親ではなく子供

子供がすすんで勉強をする……なんてことは、奇跡に近いとわかってはいるものの、我が子にはそれを期待してしまう。そのココロは、「勉強しないと、成績が落ちるから」「受験に失敗して、良い学校に進学できないから」「学歴がないと、良い仕事に就けないから」。ゆえに、「勉強しないと、大変なことになるぞ」と子供を脅したり、「勉強したら、ご褒美をあげる」とエサで釣ったりするものの、事態は一進一退の繰り返しだ。

「勉強しないで困るのは、親ではなく子供です。まずはそれを認識してください」と熊野英一先生。

「アドラー式の子育てでは、"自然の結末"と、論理的な約束によって導かれる"論理的結末"を用いて、望ましい結果が得られなかった場合に罰(パニッシュメント)を与えるのではなく、「結末を経験させ、自分で結末の責任を取り、そこから学ぶ」機会を与えることを勧めます。試験の前に勉強しなければ、良い点はとれない。これは、誰にとっても自明な"自然の結末"。これに加えて、「もし今回の試験に合格しなければ、再受験のチャンスはなく大学進学は諦める」というような約束を決めたうえで、子供自身が勉強するかどうかを決め、その結果に責任を持つのが"論理的結末"。こうした"結末の経験"は、子供が自分の行動に対して、自分で責任を負うことを学ぶ、貴重な体験になります。罰で脅したり、ご褒美でそそのかしたりするより、子供の心にずっしり響くはずです」

"親の課題"の解決を、子供に押しつけるのはNG

勉強しないで困るのは子供だということは、重々承知している。それでも、"結果"は気になるし、心配でしかたがない場合はどうすればいい?

「私自身、子を持つ親ですから、その気持ちはよくわかります。ただし、気をつけていただきたいのは、親の課題と子供の課題は分けて考えるということ。『子供が勉強しないのは、親として心配だ』という事象は、親と子の課題が混在しています。まず、勉強するかしないかは、親ではなく子供の課題。なぜなら、勉強するか否かによってもたらされる結果を引き受けるのは、まぎれもなく子供だから。一方、子供が勉強しないことが心配だ・気になる・イライラするのは、親ですよね。つまり、親が自分で克服すべき、親の課題です。なのに、自分の心配やイライラを解消したいがために、矛先を子供に向け、『勉強しろ』というのは、お門違い。解消する方法は、親が自分で見つけ、自分で行うべきなのです」

親の課題を、親子共同の課題にしてしまうのも一案

親が自分の課題を克服するためにすべきは「子供に対する期待値を下げる」、もしくは「親の心配を解消するために、子供に協力を仰ぐ」こと。

「期待値を下げれば、子供の点数や出来がさほど気にならなくなるでしょう。そうすれば、過剰に心配したり、イライラしたりといったことはなくなるはず。どうしても心配で、それを消し去ることができないならば、『お父さんは君のテストの出来が気になってしかたがない。君自身も、勉強しないことが引き起こす結末を自分で引き受けるのは辛いだろう? ついては、お父さんの課題を解決するためにも、勉強に取り組むという選択をしてみないか?』と、子供に協力を要請してみるのです。もし子供がこの提案に合意すれば、親の課題が、"親子共同の課題"になります。そして、子供から『勉強する間、お父さんが隣についていてほしい』『わからないところを教えて欲しい』などと求められたら、しっかりサポートしましょう。子供自身がそれを必要とし、また、子供が一人で勉強できるようになるために必要なステップだというロジックで手伝うなら、過保護にも、過干渉にもなりませんよ」

Today’s Advice
親の課題と子供の課題ははっきり区別し、当事者自身で解決する


アドラー心理学とは
ユダヤ系オーストリア人心理学者アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)が築き上げた心理学。個人とは分割できない存在であるという理論のもと、現代のさまざまな問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろん、学校や家庭や企業でも活用されている。


Eiichi Kumano
アドラー心理学に基づく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。日本アドラー心理学会正会員。1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業し、メルセデス・ベンツ日本勤務の後、アメリカのインディアナ大学ケリー経営大学院に留学、MBAを取得。帰国後、保育サービス業などを経て、2007年、株式会社子育て支援を創業。著書に、『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』などがある。

『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』
熊野英一
小学館 ¥1,404

Text=村上早苗 Photograph=鈴木克典