苦難を乗り越えた"学大の工藤静香"~玉袋筋太郎のスナックミシュラン⑦学芸大学『純子』

全日本スナック連盟の会長である玉袋筋太郎さんがスナックを巡り、プロの目線で、ママやお店の評価を下す連載「スナックミシュラン」。日本列島津々浦々、スナックは全国に7万軒もあるというのに「興味はあるけど行ったことがない」なんて人も多いはず……。玉袋筋太郎さんが、ママのキャラ、お店の雰囲気、つまみ、歴史、時にはお客さんの質まで、深い愛情を持って★をつけていきます。  第7回は東京・学芸大学にある『スナック 純子』。   


今回は初となる東横線、学芸大学。その西口商店街から1本通りを入ると、赤いレンガの建物が目に入る。今回の取材先、スナック純子はその3階。クリスマスのリースが飾られた(取材はクリスマス1週間前)扉を開けると、スナックには珍しくクラシックのようなシットリとした音楽が流れ、クリスマスだからか赤いドレスに身を包んだ美魔女が現れた。

さて、どんな話が聞けるのか。

純から純子へ


玉ちゃん:こちら、スナック純あらため、純子です! 俺は純の時代から来ているけど、なんと今年で14年! 

編集:いつから純子に店名を変えられたんですか?

ママ:昨年です。13周年の時に純子になりました。

玉ちゃん:それは、なんかあったんだよね?

ママ:……う、占い(笑)

玉ちゃん:出たよ、スナックで占いときたねw

ママ:画数がね、商売には13画の方がいいって言われて、思い切って変えました。

玉ちゃん:思い切ってって、"子"をつけただけじゃない(笑)

ママ:ハハハッ(笑)でも、結構大変だったんですよ! 警察署に行ったりとか、看板を変えたりもしなくちゃだし。

玉ちゃん:下の看板は変わってたけど、上の看板は変わってないよね?

ママ:あれ、高いんですよー。だから、まいっかと思っちゃって(笑)

玉ちゃん:そうね、古きを残しつつ、新しきがあるっていうね。しかも、純子に店名を変えたら、商売が上向いてきたんでしょ?

ママ:そうなんですよ!

玉ちゃん:占いはまんざらでもないってことだよね。

ママ:そう、その時に大改革をしたんですよ。料金も変えたんですよ。そこからすごいいい感じになって。

玉ちゃん:じゃ、上の看板変えたら、もっと良くなるんじゃないの?

ママ:確かにねぇ(笑)でも、高いとこで作業するとお金かかるんですね。誰か出してくれるお客様が出たらねw

玉ちゃん:お店で積み立て貯金したら?

ママ:ダメだ、私、飲んじゃうな(笑)

宝石屋からスナックへ

玉ちゃん:ところで、なんで学芸大学でスナックを始めたの?

ママ:私、以前は自由が丘のスナックで雇われママだったんですよ。15年くらい前かな。そのスナックでバイト始めたのが18年前。まぁ、離婚がきっかけだったんですけどね。

編集部:ほんとに離婚きっかけでスナックを始める方、多いですね。

ママ:それがなかったら水商売を始めてないですよ。その前は宝石屋で働いていたんで。

玉ちゃん:宝石屋!?

ママ:そうそう、そこで元夫とも知り合って、娘2人にも恵まれ、普通の生活をしてたわけですよ。で、その後、別居することになったんだけど、娘も私立に通っていたし、親の面倒をみなくちゃいけなくなったりとか色々あって、スナックで働き始めたんですよね。

玉ちゃん:昼も働きながら?

ママ:そうです、昼も夜も働いてました。ただ、その後、一度お店を辞めて昼だけにしたんですよ。でも、やっぱりスナックをやりたくなっちゃって。そうしたら前に働いていた店のママが、「私、店を辞めるから、継がないか」って言ってくれたんですよ。店名を残すという条件で。それで雇われでママを始めたんです。

玉ちゃん:で、その後は?

ママ:大ママから店を買った男性のオーナーがいたんですけど、その人と相性が悪くて……。で、常連さんも、そのオーナーさんがいることでお店に来てくれなくなって……。で、ある日、オーナーと喧嘩して辞めちゃったんですよね。

玉ちゃん:ほうほう。

ママ:でも、辞めた2日後に、この物件見つけて決めてましたけどねw

玉ちゃん:2日後!?

ママ:そう、10月31日に辞めて、11月3日には契約したんですよ。前は、雀荘だったんですよ、ここ。

玉ちゃん:雀荘!すごいね。スナックの居抜きじゃなかったの?よくここまで作ったね!

ママ:駅の逆側に居抜き物件があったんですけど、タッチの差で取られちゃって。でも、早くスタートしたかったから、ここを契約して、雀荘にすぐに出て行ってもらって、突貫工事して、12月5日にオープンしたんです。

玉ちゃん:すげー。はえー!!

ママ:勢いですよ(笑)

スナック経営

玉ちゃん:その突貫工事から14年かぁ。すごいね、サバイブだよね。

ママ:ほんとそうですよ。でも、震災の時は潰れるとおもいましたね。その前にリーマンもありましたね。その度に、何度やめようと思ったか。

編集部:やっぱり、その時はお客さん減りました?

ママ:減りましたね。

玉ちゃん:やっぱり、そういう余波は、こういう水商売に来るんだよね。爆心地はアメリカだったりするんだけど、やっぱり経済とリンクしてるんだよね。

ママ:そうですね。だから色々と改革とかしてきましたよ。価格も、もともと9,000円だったんですけど、震災があった時に7,000円にして、昨年3,000円にしたんです。それ以外にもチラシ配ったり、張り紙したり、固定費削減で、1日に働いてもらう女の子の数を1人減らしたりとか、色々改革をしてきたんですよね。

編集部:まさに経営者ですね。

玉ちゃん:そりゃそうだろ、経営してるんだから。

ママ:うん、経営者ですよw

編集部:そりゃ、そうなんですけどね(笑)。でも、価格を変えたりしたら、お客さんの年齢層とかも変わったんじゃないですか?

ママ:以前は、自由が丘からのお客さんも多くて、結構年齢層が高めだったんですけど、料金プランを変えた昨年からは、若いお客様も増えましたね。

玉ちゃん:そっか。だから、ママが若返ってるんだな。

ママ:(満面の笑みで)若返ってる?

玉ちゃん:でも、そういう若い人に知ってもらうって嬉しいよね。

ママ:嬉しいですね。ありがたいですよね。でも、自由が丘の時からのお客様もいらっしゃいますからね、バイト時代からだと、かれこれ20年お世話になっていますからね。ありがたいですよ。

玉ちゃん:ママの成長してきた姿を見てるんだろうな。

母とママ

玉ちゃん:いやいや、14年も水商売をやるっているのは大変なことだよ。それ以外にもさ、ママだってちゃんと子育てもやってね、娘さんを大学に行かせたりしてるわけよ。

ママ:成人したんですー。玉ちゃん、上の子は社会人になったんですよ。

玉ちゃん:そっか、もう社会人か。

ママ:そう、上の子は社会人、下の子は成人。

一同:おおおお!パチパチパチパチ(拍手)

ママ:もう、お弁当からも解放されてパラダイスですよ。

編集部:お弁当?

ママ:高校卒業までの18年間、毎朝お弁当を作ってたんです。2時半とか3時とか、どんなに遅く帰っても、お米を磨いで、必ずお弁当を作っていました。それは、今でも感謝されますね。

玉ちゃん:やっぱりさ、昔なんかはさ、水商売やっている親の子はグレるなんて言ったけどさ、一生懸命やっているお母さんの背中を見た子供はグレないよな。

ママ:そう!うちの娘なんて学校の先生になりましたからね(笑)

玉ちゃん:へぇ!

ママ:この間、私、誕生日だったんですけど、娘が手紙をくれてたんですよ。娘は中高一貫教育の学校で先生をやっているんですけど、やっぱり色んなお母さんがいらっしゃるんですよね。で、その手紙に、「色んなお母さんを見て、本当にママの娘でよかったと思うし、私は将来、ママのようなお母さんになりたいと思います。」て書いてくれて。「わーーー、水商売を頑張ってきてよかったー!!」って思いましたね。本当に一番嬉しかったですね。

玉ちゃん:ほろりとくるね。やっぱり商売は関係ないってことだよ。一生懸命やってればさ。でも、それを言葉にできる娘さんって素敵だね。

ママ:こんな飲んだくれな母にね。

玉ちゃん:飲んだくれだって、弁当作ってたんだから。すごいな弁当の力って。

お客さんへの感謝

玉ちゃん:そうやって母親をやりながら14年も続けてこられた秘訣って何だろうね。

ママ:それはお客様でしょうね。それこそ、先々週もすごく大事なお客様が亡くなられたんですよ。

玉ちゃん:えー、亡くなっちゃったの?

ママ:私、先週、ずっと泣いてました。本当に急死だったんです。65歳で。

玉ちゃん:若いなー。そういうお客さんとの出会いと別れがあるのもスナックだけどね、やっぱり別れはつらいよな。

ママ:ほんと、つらかったです。だって、その6日前もお店に来てくださってたんですよ。まだ受け入れられてないですね。今でも扉が開くと来てくださったのかなって……。

玉ちゃん:うわー、すげーわ。長くやってくると、そういうことが多くなってくるよね。でも、そういうお客さんへの感謝の気持ちを忘れちゃいけないよね。

ママ:感謝しかないです。震災の時に、お店を助けてくださった方の中のお一人ですもん。暇だった店に毎日来てくださったんです。だから、そういう方々に助けられてるから、やめようと思っても頑張ってこれたっていうのはありますね。あとは子供たちのためにもね。

玉ちゃん:

編集後記
取材後、玉ちゃんが絶賛する、純子ママの「工藤静香」を見せてもらった。イントロから曲が終わるまで、歌い踊る純子ママ。その綺麗なお顔や、ノリノリな感じからは想像もつかないが、今回の取材を通して純子ママの強さや懐の深さを感じることが出来た。それは、経営者として数々の困難を乗り越えながら、母として一家の大黒柱も担ってきたからかもしれない。仕事や人生の相談をするもよし、ママの「工藤静香」や「松田聖子」に魅せられるもよし。料金も安くなったので、ぜひ一度訪れてほしいスナックである。  

【↓ママの歌声はこちら↓】

GORGEOUS
★★★
「ここは銀座か?スナックとは思えぬドレスを着たママのゴージャスさだね」

BUSINESS
★★★
「リーマンも震災も乗り越えてきたからね」

SHIZUKA KUDO
★★★
「俺は聖子ちゃん派なんだけど、ママの工藤静香は最高なのよ!」


スナック純子
住所:東京都目黒区鷹番3-7-4 レッドイン丸花ビル3F
TEL:03-5768-1972
料金:Set   ¥3,000 (2H)2H以降は1H¥1,500、Bottle ¥3,500 〜、Shot   ¥1,000 〜


Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ


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玉袋筋太郎
玉袋筋太郎
1967年6月22日、東京都新宿区生まれ。実家はスナック。高校卒業後にビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。社団法人全日本スナック連盟会長も務め、『浅草キッド玉ちゃんのスナック案内』などの本を手がける。
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