至極のコレクション オーナーズライフこそ、生きる悦び インテリアデザイナー 片山正通氏

コレクターではない。買い物が好きで、捨てられない。それがふたつ合わさったことで膨大な"モノ"が集まることとなった。現在「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催中のインテリアデザイナー、Wonderwall片山正通氏の展覧会「片山正通的百科全書」(~6月25日)が話題だ。なにしろ展示数が膨大。コンセプチュアルアートをはじめ、写真や家具、骨董などが500点以上、さらに膨大な数の蔵書やCDが展示されている。

【アートコレクター】
片山正通氏
Wonderwall インテリアデザイナー

上からライアン・ガンダー「INVESTIGATION #56 - I SIT PATIENTLY WAITING」、同「The sound made by the collision of two ideas(imagine that)」

「コレクターという意識はないんです。その時々で好きな洋服を買うように、気になるアートを買ってきた。本もCDもアートも人生の楽しみのひとつ。改めて並べてみると、自分でも意識しなかった趣味嗜好が見えるような気がします。自分の脳みそのヒダまで全部さらけ出した感じですね(笑)」

ちなみに自己分析は、「少し闇を感じる作品が好きみたいです(笑)」。ライアン・ガンダー、KAWS、村上 隆、サイモン・フジワラ......現代アートのマニアなら垂涎(すいぜん)のコレクション。そこにももいろクローバーZのCDやドナルド人形、動物の剥製などが同居しているのが、いかにも片山氏。世界で活躍するインテリアデザイナーの脳内を探検しているような気がしてくる。

難解だからこそアートは面白い

コンセプチュアルアートにハマったのは、この展覧会でも多数の作品が飾られているライアン・ガンダーとの出会いからだ。

「ライアンの作品は、難解なものが多い。最初に買った作品も写真がスクラップブックのようにコラージュされたものを写真に撮り、さらにそれに説明文がついているという作品。所有することで、この作品の意味についてずっと考えていたくて。デザインもよかったですしね」

片山氏は、そこに自らの生業であるデザインとアートの"境界線"と"共通点"を感じたという。

「アートは、意味やコンセプトを追いかけているうちにカッコよくなる。デザインはカッコよさや美しさを追い求めているうちに、意味が見つかってくる。表裏一体だなと思ったんです」

確かに、会場には何度観ても意味がわからない難解な作品も。

「作品からの"問いかけ"を楽しんでいます」

「そこがコンセプチュアルアートのいいところ。何だこれ!? と思いつつ観ているうちに好きになったり、嫌いだなと思いながら、そこが気になって仕方がなかったり。そういう作品からの"問いかけ"を何度も楽しんでいます」

これだけのコレクションを集めるには、かなり資金が必要だと思うが......。

「都心のマンション1、2軒分くらいですかね。長年かけて集めたものだし、他のコレクターの方から見ると、かわいいものだと思います。僕は酒を飲まないので、みんなが銀座や六本木で落としているお金を考えたら、そんなに変わらないんじゃないですか(笑)」

作品をただ観る、感じるだけではなく、"買う"ことにも大きな意味があると言う。

「アートは僕にとって生きていくうえでの"資料"みたいなもの。人間として、デザイナーとして、自分をどれだけ豊かに成長させてくれるか。身銭を切ることで、それだけの"価値"があるのか、真剣に考えて、作品と向き合えると思っています」

「作品からの"問いかけ"を楽しんでいます」

「お金を使うことで、瞬時に自分を教育できる」

KAWSの作品群。手前:「4 FEET COMPANION」、後方左から「UNTITLED」、「UNTITLED(CHOMPERS FENCE)」、「UNTITLED」4点、右上:「UNTITLED(MBFB7)」。

買ってみて初めてその価値がわかる

開催中の展覧会には「Life is hard...Let's go shopping.」という題がつけられている。片山氏自身、買い物から学ぶことが多いと言う。

「学びたいと思ったら、買うことが一番。お金を使うことで、瞬時に自分を教育できます。靴だって履いてはじめて、履き心地がわかるでしょう。それと同じ。アートもインテリアも買って使ってみなければ、その価値はわからない。僕は誰かに観せるため、飾るため、売るために買い物をしてきたわけじゃない。すべて自分のため。でも買ったからこそ、新しい発見があったり、アーティストと仲良くなれたりする。僕にとってはすべてが出会い。投資した数倍の価値があると思っていますよ」 

自らを刺激してくるアートと向き合うことで、時代と向き合い、そして自分と向き合う。片山氏がデザイナーとして常に進化し続けられるのは、そんな"資料"たちとの対話の時間を持っているからなのだろう。


MASAMICHI KATAYAMA
1966年岡山県生まれ。INTERSECT BY LEXUSの世界展開など、数多くのインテリアデザインを手がけるほか、外務省主導によるロンドンの「ジャパン・ハウス」プロジェクトに参加するなど幅広く活躍。http://www.wonder-wall.com