今さら聞けない機械式時計の魅力と基礎知識【ファッションアドバイザーMB】

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そもそも「機械式時計」とは何か?

最近、人気再燃しているキーワードです。スマホが普及し、時間を確認するのに腕時計を使わなくなって久しい現代。しかしだからこそ、時計が差別化要素として働くのも事実です。今回は30代以上の大人であれば知っておくべき機械式時計の基礎基本をお教えします。題して「今さら聞けない機械式時計の基礎知識」。大人の嗜みとして是非覚えてみてください。

「どうせ高級時計なんて自己満でしょ? スマホで十分じゃないか」

無論効率を考えればスマホで確認した方が良いに決まっている、もっと言えばぜんまい駆動の機械式時計よりも電池駆動のクオーツ時計やスマホの方が基本的に精度は高くコストも安い。では、なぜ世の中から高級時計である「機械式時計」がなくならないのか。その説明をするためにはまず機械式とクオーツ式の違いから語っていく必要があります。

まず腕時計は大きく分けて2種類あります、広くあまねく人々が使っている時計はほとんどが電池式のクオーツ時計。ポール・スミスなどの時計もクオーツ式ですね。水晶振動子を使い電池で正確に時を刻みます。

他方、ロレックスやオメガなど高級時計のほとんどは機械式と呼ばれるぜんまい駆動。ぜんまいと歯車で制御しており電池を必要としません。細かく分けると歩いているだけでパワーリザーブされる「自動巻」と、チョロQの様に手動でぜんまいを回す「手巻き」の2種類があります。

実は50年以上の昔であれば時計のほとんどが機械式でした。しかし1969年日本のセイコーが電池式のクォーツ時計を販売し出して業界地図は塗り替えられることとなります。驚くほど極小のぜんまいと歯車を緻密に組み上げて作られる機械式時計は職人技術でありコストが高い。ところがセイコーが開発したクォーツ時計は基盤を使い量産しやすく職人の技術を必要しない上、コストも圧倒的に安い。加えてぜんまいで組み上げた機械式よりもはるかに精度も高いわけで、当時あらゆる時計ブランドが経営危機に陥りました。これが世に言う「クオーツショック」、機械式から電池式へと時計が変わった歴史の転換点です。

しかしながらご存知の通りですが、その後50年以上経った現代でも機械式時計は駆逐されずに高級時計としてそのまま支持されています。効率非効率といった観点でモノを見るのならば「コストが安く、正確」なクオーツの方が優れているのは火を見るよりも明らかなのに、なぜ、現代でも機械式時計は生きているのでしょうか? これに対する答えは勿論複数存在します。

世代を超えて受け継ぐ魅力

「ステータスを主張したいから」

と言う人もいるでしょう。クオーツショック以降、機械式時計は高級路線へ「実用品」から「嗜好品」への道を選びました。サファイアを使った風防や天然石をあしらったデザイン、手間がかかった複雑機構を殊更に主張するディテールなど「ステータス」を主張したい人にはもってこいです。ホテルマンは腕元の時計を見る、なんて言いますがファッション的にも目立つ腕元(コーディネイトは先端部分が最も目立つ、特に首・手首・足首の3箇所は目につくと言われています)にこうしたステータスを主張するアクセサリーがあるのは理にかなっているのです。

「メカニカルな機構が男心をくすぐるから」

と言う人もいるでしょう。男性は子供の頃からロボットアニメが大好き、大人になるとそれがクルマや時計への関心へと繋がります。

確かに機械式時計の複雑な機構は見ているだけでも惚れ惚れします。この造形、機構そのものが好きと言う人がいるのも納得です。

「機械式時計の"受け継ぐ"文化に惹かれるから」

実は機械式を購入する人でこの理由を挙げる人は大変多いです。私自身もここに強く共感しています。実は機械式時計はパーツの修理や交換などを行えばいつまでも延命が可能です。「百年時計」などと表現される様に、機械式時計は我々人間よりもはるかに長生きするのです。クオーツ時計は基盤が壊れれば基本的には「全とっかえ」しか治す手段はありません。しかし機械式時計は歯車などパーツを修理さえすればいつまでも生き続けることが出来ます。だからこそ機械式時計は「形見」にできるのです。ヨーロッパでは祖父・父・息子へと代々受け継がれる時計など珍しくありません。家の象徴、自分の肩身として息子へ孫へと代を超えて伝えられるのが機械式時計最大の魅力なのです。

考えてもみてください。人間が生み出したもので100年以上も長生きする物が果たしてあるでしょうか。統計では洋服は概ね3年で着なくなるそうです、クルマも20年以上持つものはかなりレアです、家もさすがに100年持つとはなかなかいかないでしょう。「形見」として伝え続けられるものって実はかなり少ないのです。

私は「スマホじゃなくて機械式を選ぶ理由」を訊かれた時には必ずコレを挙げています。直接肌につける「生涯で最も触れている時間の長い腕時計」を自分の象徴として受け継ぐために選んでいます。

「自分探しの旅」それが機械式時計選びの真髄である

そしてだからこそ私は「機械式時計選びに是非慎重になってほしい」と思っています。なぜなら形見として受け継がれる可能性があるものだから。私の思想や思考を反映したものを選ばなければいけません。形見とは単なる「モノを譲る」行為ではありません。「おじいちゃんがこの時計を選んだのはな。。。」とモノを譲るとともに自分の思考や思想を理解してもらい受け継いでもらうことに繋がることです。自分を象徴したものでなければ、思想や思考を反映したものでなければ「受け継ぐ」価値が薄れてしまうでしょう。時計選びには慎重にならねばなりません。

ではそんな私が選んだ時計は何か。それは世界初の腕時計であるCartierのサントスです。

私はファッションを多くの人に教える仕事をしています。教える以上、間違ったことや曲がったことを伝えたくはありません。私はユニクロなどの格安品の着こなしを伝えていますが、その背景ではピエール・カルダンからジャンポール・ゴルチエ、コム・デ・ギャルソンやメゾン マルジェラなど膨大なファッションデザイン史を10代の頃から学び理解しています。インスタントに着こなしを教えるだけなら誰でもできます、しかしファッションの本質は歴史にあります。10年20年100年と長いトレンドの繰り返しの中で、先達のデザインに対する挑戦の積み重ねの末に、ユニクロのシャツがTシャツが生まれています。その歴史を軽んじて「これとこれだけ合わせればおしゃれ」という上澄みだけの解説はしたくない。歴史を大切にしたいし、源流を何よりも知っていたい。その象徴として時計も「世界で初めて生まれた腕時計」であり「源流」たるサントスを選んでいるわけです。

こうした思想や思考をモノとして集約できるのが機械式時計の面白いところ。歴史や成り立ちを学び、デザイン以上に「自分に似合うものはどれだろう」と考えること自体が「自分を見つめ直す」「自分を知る」ことに繋がると私は考えています。そしてそれが定義された時に、子へ孫へと受け継いでいく信念の様なものが確定されます。

機械式時計とはつまり「自分を探す旅」であり、そしてそれが時を経て「家の伝統」へと成長していく助けとなるのです。

仰々しい話になってしまいましたが、幸い、雑誌『GOETHE』、当サイトでも機械式時計の紹介記事はたくさん用意されています。是非様々なモノに触れ、自分を知る旅へと進んでみてください。「好き」に理由は必要ありません、しかし「理由を見つけた“好き”」は揺るがないあなたの幹となるのです。機械式時計はその助けを担ってくれる優れたツールです。是非興味が少しでも出たら触れてみてください。きっとその虜となるはずですよ。

MB
ファッションバイヤー/ファッションアドバイザー/ファッションブロガー/作家。誰もが理解できる「オシャレの教科書」KnowerMagを運営。ブログ「最も早くオシャレになる方法KnowerMag」を運営。発行する有料メルマガは個人配信者としては日本一の規模を誇る(配信メディアまぐまぐにて)。書籍『最速でおしゃれに見せる方法』、漫画『服を着るならこんなふうに』など多数。関連書籍累計100万部突破。