「初めての子供,どう遊んであげればいいかわかりません」 ~親子関係はアドラー心理学で解決⑥

仕事では実績を上げ、高い評価を受けているし、周囲からの信頼も厚い。ところが、相手が我が子となると、努力と成果がどうも見合っていないような……。前回、夫婦関係の悩みを、アドラー心理学をベースにズバリ解決してくれた熊野英一先生が、今度は親子問題をレスキュー! 


子供が関心を持っていることに関心を持つだけでOK

新米パパが抱える悩みのひとつが、「子供とどう遊んでいいかわからない」というもの。妻から、「私は用事があるから、子供とふたりで公園に行ってきて」「今日は外出するから、子供をみてね」と仰せつかっても、「任せておけ!」と胸を張れる父親は、そう多くはないのでは? そんな夫を妻がどう思っているかというと……、「使えねーー!」。このままでは、子供からの信頼はもちろんのこと、妻からの信頼も益々(!)失ってしまいそうだ。

そんな迷えるパパに対して、熊野さんは、「子供を思い切り楽しませなくてはとか、成長につながるような経験をさせなくてはと思うと、何をすればいいか、確かに悩みますよね。でも、子供と遊ぶことを、それほど難しく考える必要はありません。その子がしたいことに、つきあうだけで良いのです」と、アドバイスする。

「ここも、大切なのは"共感ファースト"。共感とは、相手が関心を持っていることに、自分も関心を持つこと。まずは、子供をよく観察してみましょう」

子供へのインタビューが、ビジネスにも役立つ

たとえば、まだおしゃべりができない赤ちゃんの場合。ボールを投げるという行為を繰り返しているなら、「おもしろいんだね。じゃあお父さんもやってみよう」と、いっしょに投げてみる。

「子供の気持ちになってみると、きっと楽しく遊べますよ。それに、最初はうまく投げられなかった我が子が、繰り返すうちに、だんだんスムーズに、遠くに投げられるようになるなど、発見もいろいろあるはず。それは、親として大きな喜びにつながります。子供のお守りを、スマホの動画に頼るのはもったいない! 親だからこその貴重な時間を、大切にして欲しいですね」

会話ができる年齢ならば、インタビューするのもいい。

「『何をして遊ぶのが好き?』『どうして、それが好きなの?』と、どんどん質問しましょう。子供は、自分に注目し、興味を持ってもらえると嬉しいので、いろいろ答えてくれると思います。『日頃接する機会が少ないから、何を話していいかわからない』というお父さんもいるでしょう。でも、話題の提供はハードルが高くても、質問ならできるのでは? それに、これは、ビジネスにも活用できるスキルなのです」

新規顧客の開拓には、先方の希望や問題点を上手に聞き出すことが重要だし、クレーム処理なら、相手の気持ちに寄り添いつつ、怒りのツボを探ることが不可欠だ。

「子供は、そうした人々にも増して手強い相手。子供へのインタビューは、コミュニケーションスキルの訓練にもなるというわけです。部下や後輩の育成にも、きっと役立つと思いますよ」

乳児であっても、"自分で選ぶ"経験をさせることが重要

もうひとつ、子供と接する時にぜひ行いたいのが、「"子供に選択させる"こと」と、熊野さん。

「言葉が話せない乳児だって、早過ぎることはありません。赤いボールと青いボールがあるなら、『男の子だから青だろう』と決めつけず、本人に『どちらがいい?』と問いかけてください。おそらく、どちらかに手を伸ばすことでしょう。会話ができるようになったら、なおさらです。遊びはもちろん、食事のメニューでも、着る服でも、どんなものであっても、子供自身に選ばせ、決定させてください。そうやって、幼い頃から自分で考え、決める訓練をすることが、自主性のある人間への第一歩になります」

乳幼児の頃から、子供を対等な存在として認め、意思を尊重する。これは、その後の親子関係に大きな影響を与える。とくに、子供が思春期に親にどんな態度をとるかは、幼少期の接し方がカギを握るのだとか。次回は、最も扱いづらそうな思春期を迎えた子供への接し方を教えてもらう。

Today’s Advice
子供の気持ちに同期させれば、子供も親もハッピーに過ごせる

アドラー心理学とは
ユダヤ系オーストリア人心理学者アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)が築き上げた心理学。個人とは分割できない存在であるという理論のもと、現代のさまざまな問題に具体的な解決法を与える実践的な心理学として、臨床現場はもちろん、学校や家庭や企業でも活用されている。


Eiichi Kumano
アドラー心理学に基づく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。日本アドラー心理学会正会員。1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業し、メルセデス・ベンツ日本勤務の後、アメリカのインディアナ大学ケリー経営大学院に留学、MBAを取得。帰国後、保育サービス業などを経て、2007年、株式会社子育て支援を創業。著書に、『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』などがある。


『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』
熊野英一
小学館 ¥1,404

Text=村上早苗 Photograph=鈴木克典