「どうせあいつは、お洒落ピーポー」を英語で言うと?【英語力ゼロのロンドン移住記】

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第40回! 

やっかみを含んだ言葉が日常的に多く登場

長年使っているノートPCが不調で、買い替えを考えています。macにするか他のものにするか悩んで、近所に住むエンジニアに相談してみました。「あなたが使っている最新のhpの使い心地はどうか? macとも迷っているのだが」と尋ねたところ

Mac is only for posh people

と言って彼は鼻で笑いました。

Posh(ポッシュ)とは、「上品な」「上流な」という意味の形容詞です。この場合は皮肉も混じった「macなんて、上流の人たちだけのものだよ」ということです。

その時ふと、代官山TSUTAYAなどに代表されるお洒落オープン空間で、macのノートブックを広げ仕事をする人を、「お洒落ピーポー」と揶揄していた一時の自分を思い出しました。

無機質なオフィスに1日中詰めている自分と比べ、開放的な場所でmacとともに自由に働く彼らを、羨望もこめてそう呼んでいました。そしてこのニュアンスは彼の場合も一緒で、「俺の仕事はhpで十分なんだ、ひたすら数式を打ちこんでいるだけだからね」とやや自虐的でした。macをめぐるこのやっかみの感覚が全世界共通のものだとわかり、なんだか感動すら覚えました。

イギリスは歴史的にも長い間、階級社会でしたから「上品である」「エレガントである」というのはとても重要なことで、このやっかみを含んだ“posh“という言葉が日常的に多く登場するのだそうです。つまりこの単語はただ「上品」というだけの意味ではなく、それをひがんで言う時に使う「おハイソな」「お高くとまった」「おシャンティな」(死語?)などが日本語でいうと近いかと思われます。

ロンドンのおしゃれピーポーが集まる場所

ちなみに最近Poshな人たちが集まる場所、としてよく紹介されているレストランがDrunch Regent's Parkです

アラビックやイタリアンなどインターナショナルな料理を取り揃え、カクテルやラテアートも注文に応えて用意してくれるので、平日の昼間からパーティを開催する女性客もよくみかけます。ロンドン中心部から近いのに、落ち着いた雰囲気のエリアにあり、日本でいうなら田園調布あたりの雰囲気の街です。代官山TSUTAYA内のカフェ的なガーデン席もあり、春になるとそこでカクテルやコーヒーを楽しみながら本を読んだり食事をしたりしている人も多く、前出のイタリア人エンジニアと平日の昼間にその横を通るたびに「ポッシュだなぁ」とまたしても羨望をこめて呟いています。名物料理は、遠方からもわざわざ食べにくる人が多いというラム・シャンクとマッシュポテトの一皿。お近くにいかれることがもしあれば、おシャンティな雰囲気をぜひ楽しんでみてください。

Drunch Regent's Park 住所:38 St John's Wood Terrace NW8 6LS,営業時間:月〜土曜 11:00~23:30、日曜 11:00~22:00  

差別と偏見の違い

先日、高級デパートのハロッズで店員として働いている中国人の友人が、客に「やーいコロナ」と言われたと言って泣いていました。イギリス人英語教師たちはその話を聞いて「ハロッズの客は、それこそ上流階級なはずなのに」と絶句していました。

わたしも郊外の街で同じように言われたことがあります。中国人だと思われていわれたのですが、もはや「中国人でない」と反論することになんの意味も感じませんでしたし、言ったほうにしても「私が中国人でない」ことなんて、もうどうでもいいことなんだと思います。

一度そういうことを言われてしまうと、疑心暗鬼になり誰も何も言っていないのに「アジア人の私がいると、皆コロナウイルスを不安に思うかもしれない。あまり人のいる場所には出ていかない方がいいかもしれない」と考えてしまいます。咳払いやくしゃみは、皆が不安になるから人前では絶対しないようにしよう、とも心に決めていました。

そんななか先日、毎週金曜日の夜に開かれている教会での英語レッスンで、いつも会うブラジル人のおじさんと話しました。教会のレッスンは無料なのでとても人気で毎回150人くらいの人たちが集まってきます。おじさんは私を見ると「あれ?先週は来てなかったよね?先週はね、全然生徒が来なかったんだ。みんなコロナウイルスが怖いから人が多くいるところには来たがらないらしいよ(笑)」と笑っていました。

おじさんは全く悪気なく言っているのですが、私はすでに疑心暗鬼になっているので「そうか、なんかごめん、でもアジア人を差別しないでほしい」と伝えました。おじさんは「そういうつもりじゃないよ、なんなら僕は全然心配してないから先週も今週もここに来てるんだよ」と慌てていて、少し申し訳なく思いました。

伝える時に、“discrimination”と“prejudice”という単語をどう使うか、とっさに迷ってしまいました。どちらも「差別」という意味で使えます。まあそもそも私は下手な英語で間違いだらけなので、どちらを使ってしまってもみんな私が何を言いたいかはわかってくれるのですが、教会で先生に聞いてみて、はじめて違いを理解しました。

discriminationは「行動が伴う差別」

prejudiceは「偏ったイメージ」のことで、つまり「偏見」です。(そういえば映画にもなった小説『高慢と偏見』の原題は”Pride and Prejudice”でした)

偏見”prejudice”があるから、差別的行動”discrimination”がおこる、ということで、「コロナウイルスを理由にアジア人を差別しないでください」と言いたければ”discrimination”を動詞の”discriminate”に変えて

don’t discriminate against Asian people just because coronavirus

が一番ダイレクトかもしれません。

しかしあまりこれを大きい声で言い続けるような状態が続かないことを信じたいので、今はこの単語の違いを覚えるだけに留めたいと思っています。

MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。  

Illustration=Norio