片山晋呉プロから学んだ嘘【プロキャディ出口の目⑨】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


プロキャディは嘘も仕事のうち

前回(プロキャディがヤーデージブックを2冊持つ理由とは?)は自分が使っているヤーデージブックについて少し紹介させてもらいました。ヤーデージブックにはグリーンの傾斜や距離だけでなく、練習ラウンドでの距離は番手など、いろんな情報を書き込んでいます。

自分の肌感ですけど、ボール位置についてから平均的に3秒くらいで情報をプロに伝えなければなりません。だからこそ準備と情報量の整理が必要なんです。

その日の調子などにもよりますが、当然プロも迷って番手を決められない場合が多々あります。その迷いや不安をいかに消すかが大切なことなんです。前回、プロに対して嘘をつくこともあると話しましたが、それは事実です。

去年のダンロップフェニックスで、ぼくがキャディを務める星野陸也プロは松山英樹選手とラウンドしました。自身にアドレナリンが出ていたのかもしれませんが、どんどん飛び出したんです。16番ホールに来た時に、ピン位置は右奥でピンまで残り172ヤードでした。星野プロの飛距離は9番アイアンで165ヤードです。通常なら8番か9番で迷うところです。しかも前のホールでバーディを獲っていたので気持ち的にも連続で獲りたいと思っていたはずです。

気持ちも高ぶって「これはさらに飛んでしまうかも」と思いました。星野プロの気持ち的には届かない9番よりも8番でピンデッドと言う選択をしたかったと思います。

ここでオーバーしてしまうと寄せも難しくなるのでノーチャンスになると思い、ぼくはピンまで162ヤードと嘘をついたんです。結果はグリーン横のバンカーに入りましたが、オーバーさえしなければ横からならパーはセーブできると考えていたんです。バーディは獲れませんでしたが、このホールはパーでクリアしました。

こういったケースは勝負所になるほど多々あります。以前、片山晋呉プロのキャディをさせてもらっていたときに「ビットウィーンの距離になったら、絶対に短い番手で打たせるようにしてくれ」と言われました。それほどプロはオーバーすることを嫌がるということです。トッププロですからそんなことは自分でも把握しているはずですが、大事な勝負所で冷静な判断ができないこともあります。そこでプロキャディの一言は重要な役割を果たすんです。

飛びすぎることをプロは嫌がると話しましたが、その典型的なケースが海沿いのコースであらわれます。先ほど話に出したフェニックスもそうですが、海沿いのコースは風が重いんです。だからボールが落とされやすく、大きめの番手を持って欲しいことがあるんですが、プロはそのシチュエーションに対して本能的に拒否反応が出るんです。だから嘘が必要になるんです。嘘をついてでも短い番手を持たせる。これは片山晋呉プロから学んだ大切な知識です。

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。


Composition=出島正登


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