腕前はローリー・マキロイ級? ウルトラマン俳優・劇団EXILE小澤雄太がゴルフに夢中の理由

小澤雄太は、劇団EXILEが誇る注目俳優のひとりだ。2009年の「第1回劇団EXILEオーディション」に合格すると、舞台やテレビドラマなど数々の作品に携わり、2017年には『ウルトラマンジード』に主要キャストのひとりとして出演。元ダンサー、元会社員という異色の経歴ながら、日を追って活躍の場を広げている。そんな彼の最近の趣味は、もっぱらゴルフ。わずか2年でベストスコア「81」を誇る小澤に、ゴルフの魅力、ゴルフと仕事、それから人生の共通点について聞いた。


きっかけは知人による完全包囲

——まずは、ゴルフを始めたきっかけから教えてください。

アクションのトレーニングを兼ねて通っているキックボクシングジムの会長さんが大のゴルフ好きで、会うたびにいつもゴルフの話を聞かされていたんです。ある日、打ちっ放しに行こうと誘われたんですけど、最初はまったく興味がなくて、大先輩に向かって「帰ります」とサラッとお断りしたんですが……(笑)。

——それはそれで大胆(笑)。

ですよね(笑)。ただ、いつもその会長さんに夜、家までクルマで送っていただいていたので、「俺が送らないとお前は帰れないんだからな」と言われまして。「じゃあ行きます」と仕方なくついて行ったんですが、クラブを振ってみたら、とりあえず当たることは当たる。そしたら会長さんに「明日何しているんだ? 」と聞かれ、「夜から仕事です」と答えたら、「3時間後に迎えに行くからポロシャツだけ着て待ってろ」と強引に連れて行かれ……。

「ローリー・マキロイを目指してます(笑)」と話す小澤さん。

——行っちゃったんですね。

行っちゃいました(笑)。ポロシャツにハーフパンツ、スニーカーという格好で。それが2年前の7月です。スコアは145でした。

——え? 145?

オマケもあったんですけどね。ただ、たまたま1ホールだけパーを取ってしまって。

——すごい!

それで、一緒に行った皆さんからも「お前、才能あるからゴルフ始めろ! 」と。もちろん丁寧にお断りしました。クラブを買うお金も、ゴルフ場に通うお金もないしと伝えて。そしたら、ある方がおさがりのドライバーをくださったんですよ。また別の方が「ボロボロだけどウチにアイアンがあるぞ」と。それから、2日後に歯医者さんに行ったんですけど、なんとそこに、すごく不自然な感じでゴルフバッグが置いてあったんです。その歯医者さんはキックボクシングジムの会長さんと知り合いで、「始めたらしいじゃん。記念に買っておいたから」と。マジでびっくりしました。そのコミュニティにおける情報の速さと、なんとしても僕にゴルフをやらせようとする皆さんの熱意に(笑)。

——包囲されてしまったわけですね(笑)。

まさに(笑)。ものの1週間で道具が揃ってしまい、始めざるを得なくなってしまった。完全包囲です。やっぱり、初めてのラウンドでパーが取れてしまったことが大きかったんですよね。もちろん僕自身も嬉しかったけど、何より周りの皆さんの反応に驚いたというか。「そんなに!?」という感じで、オジさんたちが今まで見たことのないような笑顔で「お前、すげーじゃん!」と喜んでくれて。

行く先々にゴルフアイテムが置いてあり、あっという間に揃ってしまった。

——ああ、わかるなあ〜。

あのウキウキ感にむしろ少年のような純粋さを感じて、「いいなあ」と思ったんですよね。年齢の離れた人たちと一緒に楽しめるのって、なんかいいなあと。俳優の仕事にはそういう瞬間も結構あるんですけど、一般的にはなかなかないですよね。僕は会社員生活を経験しているので、そういう瞬間の貴重さを実感したというか。それからはもう、キックボクシングの帰りはいつも打ちっ放し(笑)。ある日、ナイターのラウンドに出て持っていたボールをほとんどロストしてしまったんですが、それで自分自身にカチンと来たことで完全にハマりました。

—— 一気に上達したのでは?

半年で100を切りました。ハマってからの1年間で、80から100ラウンドくらいしたんじゃないかな……。いまのベストは81。17ホールを75で回って、最後のホールでパーを取れば念願の70台。なのに、まあ力みました(笑)。トリプルボギーをたたいてしまい、結果81。今年中に切りたいなあ……。

後悔や反省をするよりも、練習場に行く

——ところで、どこが面白いですか? ゴルフ。

たぶん、ゴルフって“人生の階段”の作り方に似ていると思うんですよ。これ、ちょっと気持ち悪いですか?(笑)

——いえいえ(笑)。

俳優の仕事に例えると、ボールを打つ瞬間はセリフを発する瞬間と同じなんです。ゴルフって、打つ瞬間までいろいろなことを考えるじゃないですか。それは役作りも同じで、舞台に立つまでにいろいろと試行錯誤する。そして、舞台に立ち、いざセリフを発すると、すぐにみんなに届く。言葉が表に出てしまう。それって、ゴルフのボールを打つ瞬間と似ている感じがするんですよね。

つまり、ゴルフの18ホールは全18話のドラマのような気がしていて。1ホール目のアプローチを失敗したら、その反省を踏まえて3ホール目のアプローチはもっとうまく打ちたいと思いますよね。ドラマなら、第1話の「おつかれさまです」より、第3話の「おつかれさまです」をうまく言いたいと思う。その積み重ね。ホールを重ねながら自分の調子がわかってくると、「今日はこう言えば“おつかれさまです”がうまくいく」という感覚を持つことができて、マネジメントができるようになる。

色や柄が派手なゴルフウェアを着ることが多いかもしれません。

——ああ、なるほど〜。

そういうマネジメントをしなきゃいけない局面って、人生においてもたくさんあるじゃないですか。例えば、仕事上のつきあいで飲み会をセッティングする場合、「とりあえずセッティングすればいい」、ゴルフでいうところのティーショットを「とりあえず前に飛べばいい」という感覚で“そこそこ”の店を予約セッティングしてしまったとする。ところが、実際にその人と話してみて、「一緒に仕事をしたい!」と思ったら、2軒目のお店は、「バーディを取るべく、しっかりとピン傍につける」ために丁寧に選ぼうと(笑)。まさにそういう感じで、僕の場合、人間関係のマネジメントにおいてもゴルフの思考がピタッと重なるんですよ。そこが面白いんですよね。人生訓が詰まっているというか。

——もちろん、その“1打”を失敗して後悔することもあるけど、挽回することもできるから面白い。

そういう部分に対する考え方に、人としてのキャラクター、役者としてのキャラクター、ゴルファーとしてのキャラクターが出ますよね。僕の場合は「たられば」の話が好きじゃないから、後悔や反省をするよりも、練習場に行く。もちろん、ゴルフの“1打”やセリフでの“ひとこと”を振り返って反省することはあっても、それを次につなげたいという気持ちが上回るというか。

——よくわかります。失敗に対してどう対応するかという部分に、その人の本質的なキャラクターが表れる。

だからこそ、鍛えられますよね。自分のそういう性格は役者としても変わらない。だから、「ラストホールでパーなら80を切れる!」というゴルフのスリルは、役者としての自分を鍛えてくれるんですよ。僕にとってゴルフでの“1打”は、仕事である舞台に立って発する“ひとこと”を上達させるためのトレーニングでもあるんです。

ひと目惚れで購入した「スコッティ キャメロン」のパター。

住めば都。必要なのは“踏み出す一歩”だけ

——もうひとつ、小澤さんにお聞きしたかったのは“何か新しいことを始めること”についてです。小澤さんの場合、誘われるままにゴルフを始めた。同じように、会社員生活を送っていた時期にオーディションを受けて、芸能の道に進むことを決意した。ゴルフを始めることも、仕事を変えることも、それほど簡単な決断ではなかったと思うのですが。

僕はもう、とりあえず身を投げちゃおうというタイプなんです(笑)。水道会社に勤務していた23歳の頃、「このまま水道屋さんで終わりたくない」という気持ちがあって、ダンスのイベント会社を作ろうとしていたんです。そんな時に友人に誘われたのが劇団EXILEのオーディションで。

会社を起こすか劇団EXILEに入るか、もちろん悩みました。でも、会社は50歳になっても起こせますよね。だから、「いまだからこそできることを」と考えて劇団EXILEに入りました。なかなか珍しい人生の分岐点かもしれないけど、やっぱり、人生は1回しかないから後悔したくないなって。

ゴルフ歴2年で、すでに80台を3回出しているそう。

——環境を変えることに対する抵抗はなかった?

結局、「住めば都」なんですよね。だから、必要なのは“踏み出す一歩”だけだと思っていて。もちろん不安はありました。何と言ってもEXILEですから(笑)。あれだけのイケメンばかりがいる世界に飛び込んで、自分なんかが通用するのかと。だから不安しかなかったけど、いい意味であきらめたというか。いまもそうです。自分がやってしまったことや決断したことに対して、後悔していたら前に進めない。ダメだったら次の挑戦をすればいいんだから、自分の持っているものをフルに発揮して、全力で勝負してみようと。

——ダンスと演技。その違いも小さくなかったと思います。

どちらも表現することであるということ、それから、表現する自分を見てもらうことに意味があることは同じですよね。だけど表現方法が異なるから、とにかく緊張するし、もちろんヘタだし、どう伝わるかわからなくて最初は不安でした。ただ、自分はずっとダンスをやってきて頑張ってきたことだけは間違いないし、どれだけヘタクソでも、自分は自分で、やり続ければきっと形になる。ダンスを通じてそのことを知っていたことが、僕にとっては大きかったと思います。だからこそ、思い切って飛びこめた。

——何事もポジティブに楽しんで、しかも我慢強く継続することで初めて結果が見えてくるというか。

ホントにそう思いますよ。ゴルフも同じじゃないですか。始めたばかりの頃のヘタなスイングは誰にも見られたくないけど、体の軸について考えたり、頭の位置を意識してみたり、いかに美しいテイクバックを作るかを研究したりする。でも、いざ緑の芝の上に立つと”欲”が出てきて、それが邪魔して失敗する。それでも続けるんですよね。失敗と反省と練習を重ねて、少しずつ人に見られても恥ずかしくないスイングになる。打ち続けるしかないんですよ、うまくなるためには(笑)。

Yuta Ozawa
1985年10月8日東京都生まれ。ブレイクダンスチーム「江戸川野獣組合」のリーダーとして活動する傍ら、一般企業に勤めていた2009年に受けた「第1回劇団EXILEオーディション」に合格。俳優として活動を開始する。ダンサー経験を活かした演技で舞台やテレビ、CMなど幅広いフィールドで活躍する。

Text=細江克弥 Photograph=宮下祐介