封鎖された街で、覚えざるを得ない英単語【いきなりロンドン移住記】

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第45回! 

外出禁止令が出た!

ヨーロッパ全土で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が広がっています。イギリス政府は“Stay at Home Save Lives”というスローガンをかかげ3月20日から、学校・すべてのエンタメ施設・テイクアウト以外のレストランを閉鎖、3月23日からは外出が原則禁止されました。ただスーパーと薬局は営業しており、1日1回の買い出しや健康のための散歩のみが許されています。この状況はこれから最低3週間は続くと見られています。 

外出禁止令が出る直前、ほぼ無人になった大通りを眺めながら、ロンドンに長く住むブラジル人のジュリオの話を聞きました。「こんなに人がいないロンドンを見るのは2005年のロンドン同時爆発テロ事件以来だ」ということでした。実は私も数日前に語学学校で、生徒対応のインターンの仕事をいただき喜んでいたのですが、出勤わずか1日で学校が閉鎖されてしまい、再開の目処が立たない状態になってしまいました。日々状況が刻々と変わっていくため、政府や各施設のアナウンスには注目していかなければなりません。そんな状況下で覚えた、緊急事態を生き抜くために必要な英単語をご紹介します。 

Snap up スーパーの欠品はこれが理由
スーパーでは、少し前の日本同様に買い占めが始まっています。トイレットペーパーはもちろん、パスタと卵が常に欠品で、野菜や水、冷凍食品も午後にはなくなってしまいます。買い占めが始まった当初、私はその事態に気がついておらず店員に「卵はないんですか?」と呑気に聞いてしまい、こんな風に言われました。 

We get them every 7:00 am. But crazy people snap them up, so eggs disappear within 1hour.(毎日朝7時には入荷するけど、おかしな人たちが先を争ってとっていくから、1時間以内にはなくなるよ) 

“Snap up”とは、「手に入れるために、勢いよく飛びつく」という意味で、まさに開店と同時に卵に飛びついて買い漁る様子が浮かびます。 ちなみに現在いくつかのスーパーでは、「一人で同じ商品を買う場合は2つ、または3つまで」というルールが敷かれました。 

スーパーになにもなく、珍しかったので写真を撮っていたら同じく出遅れて何も買えなかったおじさんが「そうだね、俺も写真を撮って、パスタが買えなかったのは俺が悪いんじゃないって妻に伝えるよ」と言っていました。奥さんに買い物を言いつけられていたようです。   

弱者を優先するために、知っておくべき“Vulnerable”の意味 

会社にも学校にも行けないので、パワーの有り余った元気な若者が、朝早く起きてスーパーで“snap up”してしまいます。これでは商品が必要な人に行き渡らないので、いくつかのスーパーはこうアナウンスしました。 

Our stores will be prioritising the elderly and most vulnerable for one hour between 9am and 10am every Monday, Wednesday and Friday. 

これは「毎週、月・水・金曜日の午前9時~10時は、高齢者、弱者優先の時間とします」ということです。“elderly”は高齢者、“vulnerable”は「弱い」という意味の形容詞でこの場合は、障害のある人や怪我をしている人、免疫力のない人や、妊婦も含まれるかと思います。コロナウイルス関連のニュースではこの“vulnerable”という単語は頻出で、NHSと呼ばれる国民保健サービスのウェブサイトでもこのように使われています。 

The NHS website has advice on how long to stay at home and what to do if you live with a vulnerable person. 

これは「NHSのWebサイトでは(体調が優れない場合は)どのくらい家にいる(べき)か、そしてもし弱者と一緒に暮らしている場合はどうする(べき)か、アドバイスをしています」 ということです。他にもタブロイド紙の「Mirror」では“vulnerable”を使ったこんな見出しがあり ました。 

People with blood type A may be more vulnerable to COVID-19 

これは「A型の人はコロナウイルスに、より脆弱かもしれない」ということです。記事によれば、O型の方がA型より人口が多いにもかかわらず、A型の感染者の方が多い」ということでした。いろいろな研究があるので真偽のほどはわかりませんが、“vulnerable”という単語はこの状況下で、追いかけていくべきかもしれません。 

また大手サンドイッチショップ「プレタ・マンジェ」(2002年頃に日本にもあったのですが現在は撤退、覚えている方はいるでしょうか)や、老舗デパート「ハロッズ」の食品売り場では、“vulnerable”な人だけでなく、日々対応に追われているNHSスタッフ(医療従事者)には半額で食品を販売していたそうです。 

一番大事なのは「自主隔離」 self isolation/self quarantine
“isolation”は「隔離」、“quarantine”は「検疫」や同じく「隔離」という意味で、「自主隔離」のことを“self isolation”または“self quarantine”といいます。当初政府はこの、「自主隔離」推奨していましたが、外出禁止令が出た現在は「推奨」を超えて「義務」となりました。UberEATSなどの宅配システムは生きているのですが、宅配のスタッフにも感染リスクがあるため、ベルだけ押して玄関に置かれるようになりました。 

人との距離は2m以上  social distancing
「社会と距離を置く、人と接触しない」ということで、上記の“self isolation”はこの“social distancing”のために行うということです。当初の政府のガイダンスでは、公園などの屋外でも 「人との距離は2メートル以上あける」ことを義務付けていました。(現在は2名以上で外で集まっていることも基本的に禁止です)街が封鎖される直前、ロンドン在住、多国籍の人たちが集まる英語クラスの友人たちとのSNSのグループチャットで「仕事に行けない」「暇だ」「でもパブもやっていない」などと愚痴りあっていたら「じゃあ公園にビール持って行こうよ」と言い出したやつがいました。「一緒に行っても、それぞれ2m離れないといけないね」となってもちろん会合は行われませんでしたが。 

このイベントは中止? 開催? 延期? 「キャンセル」だけじゃない、覚えておきたい“suspend”と“postpone”

毎年6月末にイギリスで行われている世界最大級の野外音楽フェスティバル「グラストンベリー」も中止が決まりました。「6月までに感染拡大はおさまっていると予想されるが、今の状況下で多くの人を動かして準備することはできない」という判断だそうです。その公式のアナウンスは以下でした。 

We are going to have to cancel Glastonbury 2020.(グラストンベリー2020は中止しなくてはならない) 

この場合はcancel(キャンセル)という明瞭な単語が使われていてわかりやすいのですが、それ以外の表現だと「?」となることがよくあります。 

例えば3月22日付けの新聞ではこんな記事がありました。 

Emirates Group announced on Sunday that it will temporarily suspend passenger operations by March 25.(エミレーツグループが日曜日、25日までに旅客便を一時停止すると発表) 

”suspend”が「停止」という意味でそれを修飾する副詞が”temporarily(一時的に)”なので 、この場合は「一時停止する」となります。また「延期する」という場合は”postpone”という単語が使われます。毎年4月に行われるロンドンマラソンは10月に延期となり公式ではこのように表記されています。 

The 2020 Virgin Money London Marathon will be postponed until Sunday 4 October 2020.(2020年ロンドンマラソンは2020年10月4日の日曜日に延期されます) 

今後も世界的なイベントでキャンセル、延期、一時停止などの情報が出てくるかと思います。“cancel”だけではなく、”suspend””postpone”という単語にも引き続き注意を払っていかなければなりません。 

※本記事は英国時間3月23日時点でのものとなります。 

ボリス・ジョンソン首相が3月16日の会見で“We should avoid office, pubs and traveling(オフィス、パブ、旅行を避けてるべきです)”と発言したことに対して、17日、このように反抗し営業を続けた店も。  


MOMOKO YASUI

ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。  

Illustration=Norio