【監督インタビュー】短編映画祭グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」受賞作は?

現在、開催中のアジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」。25分以内のショートフィルムのみを扱う異色の映画祭は、1999年に上映作品33点でスタート。20周年を迎えた今年は、応募数1万点以上、上映作品は約250点にまで拡大した。その映画祭で栄えあるグランプリを獲得したのは、シンガポール人監督の『カトンプールでの最後の日』だった。

応募数1万点を超えるなかから選ばれた最高賞

今年20周年を迎えたアカデミー賞公認のアジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)。ここで選ばれたグランプリ作品が米国アカデミー賞短編実写映画部門を獲得するなど、SSFF & ASIAは国際的な舞台への登竜門ともなっている。そのアワードセレモニーが去る6月17日に行われた。

SSFF & ASIAの最高賞であるグランプリは、今年から「ジョージ・ルーカス アワード」と、巨匠ジョージ・ルーカスの名を冠することに。そもそもSSFF & ASIAは、主宰する別所哲也氏がルーカス監督の大学時代に撮影したショートフィルムと出会ったことから始まったもの。それを上映するためにルーカスフィルムに交渉し、「映画祭を開きたい」と熱い思いを伝えたところ、監督直々に「ぜひやりないさい」という返事をもらい、1999年にスタート。以降、毎年監督から届く応援メッセージに勇気を得ながら今年で20周年を迎え、さらなる発展への願いが込められて名前がつけられた。

その「ジョージ・ルーカス アワード」の記念すべき第一号となったのが、シンガポール人のイーウェイ・チャイ監督による『カトンプールでの最後の日』。幼少期に通っていたカトン地区のプールが解禁されることを聞きつけたベンジャミンが、過去に感じた魔法のような時間を取り戻そうと願いながら、再びプールへ向かうというストーリー。

『カトンプールでの最後の日』(原題:Benjamin's Last Day At Kantong Swimming Complex)

そのチャイ監督が、授賞について、そして映画を撮るということについて語った。

「授賞は夢の中にいるみたいな出来事。今でも信じられません。シンガポールにはこの喜びを伝えて、感謝しなければいけない人がたくさんいます。シンガポールに帰ったら、みんなでこの喜びを分かちあえたいと思います。

歴史の浅いシンガポールでは、古いものが壊され、新しいものが迎合される風潮もあります。この作品の取り壊されるプールという設定には、そうしたシンガポールの社会を描く意図もありました。そして、この作品は誰もが通過する「性への目覚め」を描いたものでもあります。ホモセクシュアリティについても触れており、検閲の厳しいシンガポールでは、映画祭上映やケーブルテレビでの放送で、そのシーンがカットされることも多く、今回カットされず映画祭で上映されたのはとても嬉しいことでした。

ショートフィルムを作るとき、考えるのは、どうやってストーリーを伝えるか、伝え続けるかということ。作品によって視点は異なりますが、常にそれを考えています。観ている人をどう感じさせたいか――ショートフィルムはいつも新しい挑戦です。ショートフィルムはコミュニケーションの原点ともいえると思います。

私の家族は、観光客向けの土産物屋を営んでいました。日本人客も多かったので、両親は日本語にも親しみがありました。私がまだ幼かった頃、英語が主流となってきていたシンガポールのなかで、家族は中国語しか話せませんでした。私も英語を話せず、学校でも授業についていくのが大変。その反動でしょうか、大学卒業後はアメリカのミシガンでMBAを取得、経済やアカウンティングを学び、一時はアメリカのコンサルティング会社で働いていたこともあります。

当時、ふと自分の人生をふりかえったとき、頭で考えることでなく、ハートに訴えかける何かをやりたいと思いました。そこで、映画の道に進むことにしました。というのも昔から映画が大好きで、ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグの作品は、子供のころDVDを買って揃えるほどでしたから。

今回の授賞が私自身のポートフォリオになったことは確かです。今は私の作品を観て、皆がどう感じるか、どう思うか――作品を世の中に発信することへの責任感も感じています」

2009年に『Blood Ties』でデビューしたイーウェイ・チャイ監督。コメディからホラーまで、幅広いジャンルを演出する実力派。

映画祭代表の別所氏は記念すべき「ジョージ・ルーカス アワード」第一号作品に対し、「センセーショナルな作品。著しい発展を遂げるシンガポールにおける郷愁を感じました。今後の監督の活躍に期待しています」とコメント。さらに「ジョージ・ルーカスは、学生時代にショートフィルムを製作し、その冒険は続いている、と言いました。まさに冒険は続いているのです。それぞれの監督にとっての原点ともなるショートフィルム。ぜひご自身の目でご覧ください」とアピールした。

なお映画祭は24日まで開催される。

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Text=八木基之(ゲーテWEB編集部)


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