ロンドンで一番有名な中華料理屋に行ってきた ~英語力ゼロの私がロンドンに移住したら⑭

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めて渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第14回!  

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日本人ならではの発音

移民の多いロンドン、さまざまな場所で無料の英語レッスンが開催されています。地方自治体が運営するものもあれば、英語教師を育成するための施設で、教育実習生が教えるクラスなど探せば多種多様にあります。いわゆる留学生が通う語学学校と違って、ロンドンに住んで、働きながら英語を学ぼうとしている大人の生徒が多く、落ち着いた環境でレッスンが受けられます(短期間の滞在でも無料レッスンは受けることができるので、休暇で1、2ヵ月ロンドンにいる、という方でも利用できます。通常の語学学校では、たくさんの日本人生徒がいますが、こういう無料レッスンではあまり見かけたことがありません)。

最近はそんな「無料」レッスンのはしごをしているのですが、初日に受付で必ず言う

I’m coming to take a free lesson.
(フリーレッスンを受けにきました)

の、freeが絶対通じません。「ん? 何レッスン受けにきたって?」と毎回3回くらい言われます。要はまた「R」の発音の問題です。もう聞き返され慣れて「いや、お金払わなくていい授業だよ」とか「教育実習生のレッスン」とfreeを言い換えるテクニックが徐々に身についてきました。レッスンでは、隣に座ったブラジル人の青年が私を見て「知り合いに日本人がいるんだけど、そいつの英語の発音、すごいBADなんだ」と話しかけてきて、悲しい気持ちになりました。ちなみにその青年もすごくポルトガル語訛りでした。ただ、日本語訛りの英語よりは、ポルトガル訛りの方が、ヨーロッパの人にとっては理解しやすいようです。英語は世界共通言語、外国人同士でそれぞれのアクセントに慣れることも、この街では必要です。

「あいつ」ってなんて言う? 新聞の中のスラング

英語のリーディングも未だ苦手で、克服したく何かしら毎日読もうと試みています。難しいとすぐ心が折れるので、小説でも3000単語までしか使っていないものなど、外国人向けの優しいものから読んでいます。少し慣れたら以前挫折したゴシップ紙に再挑戦して、スラングを学んでみたり、そこでまた心が折れたら、今度はさらにレベルを下げて2000単語までのもっと優しい小説にする、というサイクルで、結果どんどん優しいものばかり読んで自分を甘やかしてしまっています。

そんな優しい表現の本でも、ゴシップ紙でも両方でよく出てくるスラングがこれ。

Bloke

ヘンリー王子が、習慣的に「ペデュキュア」をしているというゴシップ記事で軍隊時代の同僚がそのことを嘆いたコメントがこれでした。

Harry used to be a proper bloke— dodgy dress sense, liked a drink and didn’t care how he looked.
(ヘンリーはいい奴だったよ、ひどい服の趣味だったし酒も好きだったし、人にどう見られているかなんか全然気にしなかった)

Blokeは「男の人」を指すスラングなのだそうで、日本語で言う「奴」「あいつ」に近いのかなと思いました。

このように、新聞を見ていると「人」を指すスラングは結構あり、他にもわからなかったのがこれ。

Scouser

これは「リバプール出身の人」と言う意味なのだそうです。リバプールはビートルズが生まれた街で、英語のアクセントが少し違うらしく「彼はきっとスカウサーだね」なんてネイティブ同士では言い合うみたいです。「彼は、少し関西言葉入っているね」みたいなことなのでしょうか。私はまだまだ、リスニングも苦手ですので、アクセントを聞き分けられる段階に入っていません。この単語を使うことはないでしょうが、新聞を読むぶんには知っておいて損はありません。

ちなみに、この単語は、ポール・マッカートニーが、初のミュージカル製作に挑戦、という記事でこのようにありました。

It will be produced by fellow scouser.
(本作はリバプールの仲間たちによって製作されるだろう)

演目は映画『素晴らしき哉、人生!』がベースの作品だそうで、来年後半の上演を目指しているとのこと。ビートルズ好きの方には、興味深い内容になるはずです。

世界一接客態度の悪い店

ピカデリーサーカスの中華街に、ロンドン1有名な中華料理屋があります。店員が客を怒鳴りつける、フォークや箸を投げて渡すという接客で一時期は「世界一店員の態度が悪いレストラン」としてギネスブックにも掲載された「WONG KEI(ワンケイ)」という店です。私は、一時期なぜか「ハズレ」のレストランやスーパーマーケットばかりに当たってしまい(「イギリス飯」は過去より美味しくなったと言われていますが、ハズレを引いた時の深度、味の衝撃度は日本とは格段に差があると思います)、比較的ハズレの少ない中華料理ばかりを選んでいました(それでもハズレる時はありますが)。

このワンケイの噂は聞いていたので、怒鳴られる覚悟をして入りました。店員さんは皆中国人の方ばかり、500人が入る巨大な店内は人でいっぱいで、客は基本相席で食べています。私が頼んだのは、カシューナッツと野菜炒め、ご飯の上にダックの肉が乗ったもの。

ダックとご飯。ものすごいボリュームで食べきれず、take away(持ち帰り)にして包んでもらいました
カシューナッツ、ホタテ野菜炒め。

見た目はアレですが味は文句なく美味しく、注文からすぐに熱々が出てきたのも嬉しい。一皿の量が多くて驚きましたが、丸テーブルで隣に座っていた、横綱サイズの白人の兄弟が嬉しそうに数皿平らげる姿が微笑ましかったです。カードは使えませんが、一皿£10以下のものが多く、全てのクオリティは値段に比例すると言っても過言ではないロンドンで、初めて「安くて美味しい」に出会えた気がします。というか、肝心の、むしろ、楽しみにしていた接客、これはいたって普通でした。なんならロンドンにある某日系のラーメン屋の接客の方がずっとひどかったです。

リノベーションが行われてから、店員もフレンドリーになり、接客態度が悪いのは昔の話になってしまったそうです。長年ロンドンに住む中国人の方が「ただの安くて美味しい店になってしまって少し残念」と言っていたのが印象的でした。以来私は定期的に通っています。

「WONG KEI(ワンケイ)」http://wongkeilondon.com/

⑮に続く
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MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。

Illustration=Norio