生演奏つきで朝まで熱唱できる隠れ家~玉袋筋太郎のスナックミシュラン⑤新宿歌舞伎町『向日葵』

全日本スナック連盟の会長である玉袋筋太郎さん(以下玉ちゃん)がスナックを巡り、プロの目線で、ママやお店の評価を下す連載「スナックミシュラン」。日本列島津々浦々、スナックは全国に7万軒もあるというのに「興味はあるけど行ったことがない」なんて人も多いはず……。玉ちゃんが、ママのキャラ、お店の雰囲気、つまみ、歴史、時にはお客さんの質まで、深い愛情を持って★をつけてゆく。第5回は新宿・歌舞伎町にある『向日葵』。

前回に続き、街は歌舞伎町。新宿区役所の横にある「向日葵」さん。オーナーの立花さんがギター、奥様のみみさんがサックスと、カラオケに合わせて生演奏がつく、スナックとは思えないライブ感のあるお店。そこに連載の前回記事に登場した「港崎」の真由美ママも入れてお話を伺った。

歌舞伎町での再会

玉ちゃん:よし、歌舞伎町のエネルギーに乾杯!

全員:うぇーい! かんぱーい!!

玉ちゃん:向日葵との出会いはね、写真家であり素晴らしいクリエイターの都築響一さんからの紹介でね。「いやー、玉ちゃん、向日葵ってスゴいとこがあるから行ってみろっ」ってね。で、一緒に来たらすごいことになっててね、盛り上がりが。

立花さん:ハハハハハハッ。

右がオーナーの立花さん。

玉ちゃん:で、やっぱ感動したがのお二人の生楽器ね。これにシビれちゃってね。

編集部:楽器は何を演奏されるんですか?

立花さん:僕がギターで、女房がサックスですね。

玉ちゃん:いやー、これは今日、罰ゲームってことで皆に歌ってもらうからね(笑)。

立花さん:あー、そうですね。ぜひぜひ!

真由美ママ:え、二人結婚したの!?

立花さん:いやー、そりゃもう15年一緒にいますからねー。真由美ママとも12年ですもんね?

玉ちゃん:あ、そうそう、今日はアルバイトレディの真由美さんにも来て頂きました。一番威張ってるアルバイトレディね(笑)。

※真由美ママについては前回の記事参照

真由美ママ:はーい、アルバイトレディでーす。

前回登場の「港埼」真由美ママ(左)も緊急参戦!

玉ちゃん:でも、もう14年になるの? ママと立花さんの出会いは?

立花さん:お客さんの紹介でね。

玉ちゃん:さっき、人との繋がりってママとも話してたけど、やっぱりそうなんだね。いやいや、こうやって歌舞伎町を語れる人も減ったからね、いいもんだね。

マスター愛用のギター。

夜逃げからのスタート、そしてお母との出会い

玉ちゃん:向日葵は、どうやって始まったんだけ?

立花さん:昼職に失敗して、2トン車に乗って、夜中の2時に新宿に流れてきて。ほんとに、マンガの夜逃げ屋本舗の世界、そのまんまですよ。で、知り合いの店で4年働かせてもらってたんですけど、年に何度も乱闘騒ぎがあったりしたんで辞めちゃったんですよね、嫌になちゃって。

玉ちゃん:ほうほう。

立花さん:で、店やめたのはいいけど、どうしようかなと思ってたんですよね。そしたら、よく皆がおっ母おっ母と呼んでた人がいたんですけど、その人に呼び出されましてね、封筒をポンと出されて「あんたどうせ店しか出来ないでしょ」って。

玉ちゃん:そのおっ母ってのもすごい人だね。

真由美ママ:恩人だね。

立花さん:そうですね。恩人ですね。おっ母にお金かりて店はじめて、1年かけて完済して、その直後に亡くなっちゃったんですけどね。

右は奥様のみみさん。サックス奏者。

玉ちゃん:その人、なにやってた人なの?

立花さん:飲み屋さんです。

玉ちゃん:そっか、それはやっぱり、向いてると思ったから応援してくれたんだろうな。

みみさん:でも、後から知ったんですけど、その貸してくれたお金は娘さんの大学の費用だったみたいなんですよ。まぁ、その後、無事に大学に行かれてちゃんと卒業されました。

立花さん:そうそう、今もその次女と交流あるんですけどね。前も次女が留学するって言うんで、ここでお客さん集めてイベントして会費とって、餞別だって言って渡したりしましたね。

漫画家、プロレスラー、音楽家、芸人など、向日葵に訪れた大物は多数。

酒と音楽

玉ちゃん:向日葵っていう店名は最初から?

立花さん:そう、うちの前に入っていたお店が向日葵だったんですよね。それで、看板から何から変えるのに15万くらいかかるって言われたんで、「じゃ、そのままでいいや」って。とりあえず酒とカラオケがあれば何とかなると思ってましたからね。

玉ちゃん:でも、そこにギターを持ち込んだってのがいいよね。雇われの時からやってたの?

立花さん:少しだけやってましたね。いや、カウンターで相対でね、酩酊状態になってくるじゃないですか。こりゃ、何かやらなきゃダメだなって思って、その頃は夜逃げした後だったから、人から譲ってもらった安いギターをカラオケに刺すとこからスタートしましたね。

みみさん:ゾウさんギターですからね。

玉ちゃん:あ! ゾウさんか! 電源入れると目が光るやつ! そっかぁ、でも、そっからここまで特化してきたっていうのがスゴイよね。で、これが楽しいんだよね。なかなか生のサックスなんか聞けないからね。

真由美ママ:気持ちよく歌えるしね。

玉ちゃん:気持ちよく歌えるよねー! あと、マスターの変態性ね。来るたび来るたび新しいプロレスのポスターが増えててね。ほっとけない店だよね。いつも開いていてくれるしね。流れとしては、風林会館の上のロータリーで飲むとか、抱きキャバ行ってさ、野郎寿司で女をアフターで待ち構えて、それにフラれて、傷心の状態で、もうこの時間だと帰れねえななんて言って、ふと見ると、真夜中に向日葵が咲いてるんだよ。

みみさん:おおおお、すごく綺麗にまとめてくれましたね(笑)

マスターの変態性により、店内には様々なジャンルのポスターや珍品が増え続ける。

アンパンマンから演歌まで。国も世代も超えて楽しめる。

玉ちゃん:このお店は外人も多いでしょ? 都築さんもいろんな人を連れてきたんじゃない?

立花さん:そうですね、6ヵ国くらい連れてきてくれたかな。

玉ちゃん:6ヵ国! サミットだね(笑)。やっぱり音楽って言葉の壁を超えちゃうんだねえ。外国の人も喜ぶよね、この店は。

海外の雑誌に取り上げられ、外国人観光客も数多く来店する。

立花さん:そうですね、都築さん関係で『TimeOUT』の創刊でも紹介されたんですよ。そしたら、そのうちフランスのプラネットハポンというメディアで紹介されたりもしましたね。あと、スイス人の知り合いに教えてもらったんだけど、『シティトリップ』にも載ってたよって。

編集部:地球の歩き方みたいなものですか?

立花さん:そうですね。22ヵ国語で展開されているみたいですね。あと、観光の方もいらっしゃいますけど、外資系の会社の方もいらっしゃいますね。外資系の会社の方って家族で来るんですよ。家族とだと女の子の店行けないわけですよね。でも、せっかくだからちょっと変わった店行きたいって言ってね。海外の店は楽器ある店多いんで、安心されるみたいですね。

玉ちゃん:そっかそっか。でも、ここは楽器だけじゃなくて、カラオケと楽器だからね。

立花さん:そうですね。とりあえずアンパンマンから演歌までなんでもやりますから。その間にメタル入りますけどね(笑)

そろそろカラオケモード。生演奏の準備は万端!

真由美ママ:ここがいいのはね、自分に合ったキーを教えてくれるんだよね。ほんと気持ちよく歌えるの。楽しいのよ。

立花さん:「今日1日遊んだぞ、明日も頑張ろう」って思って帰ってもらえるのが一番嬉しいですね。

玉ちゃん:でも、ここの場合は、「あー、楽しかった帰ろう」って言ってパッと見たら太陽が昇ってるっていうね。「あちゃー」って(笑)だって、ここから出勤していく人がいるって言うんだから。

みみさん:昔は多かったですね。週3くらい来て、夜中に2時間くら仮眠をとるんですよ、座ったまま。で、うちで朝ごはん食べて、ドンキでネクタイだけ買って会社に行くという人もいましたね。ホテル向日葵ですよ(笑)

玉ちゃん:よし、じゃ、歌っちゃおうか。ガツンと!

立花さん:うち、唯一カラオケだけ無料なんで、ぜひ!


編集後記
この後、立花さんのギターとみみさんのサックスという贅沢な伴奏つきで、編集の鈴木が爆風スランプを、ライターの河合がザ・イエローモンキーを熱唱。気持ちがいい。向日葵に人が集まる理由を体で理解した。そして、このライブ演奏が楽しく盛り上がるので見えづらいが、この楽しさを作り上げているお二人のサービス精神が素敵。お客さんや、これまで関わった人への感謝なのか、献身的に働き盛り上げるお二人の姿が実に美しかった。ぜひ一度、飲んで歌って、シッカリご飯を食べて、向日葵から出勤してもらいたい。

MUSIC
★★★
「本当に気持ちよく歌えるんだよ」

FOOD
★★★
「唐揚げやサバ定食もある、しかもご飯と味噌汁付き。スナックのレベルじゃないね」

HEART
★★★
「どん底から這い上がった人が持つ優しさ、最高だね」

パブ&カラオケスタジオ 向日葵
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-4-12 ミヤタビル5F
TEL:03-3207-5292
営業時間:19:30~翌朝7:00
休み:水曜
※入店時に「ゲーテを見た」と言えば、¥1,000円割引実施!



Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ


玉袋筋太郎のスナックミシュラン

④20年間ソープ嬢だったママの矜持 ~新宿·歌舞伎町『港崎』

③背中から学ぶスナック道 ~東京·中野『カプリコーン』

②2人のママによるスナックベンチャー ~東京·荒木町『二枚貝』

①スナックは人を大人にする場所 ~東京·四谷三栄町『チロ』