滝藤賢一の自己投資。 “時“の概念を教えてくれる「植物」


案内人:俳優 滝藤賢一  
1976年生まれ。2016年は11本のドラマ、6本の映画に出演。撮影の合間を縫って各地へ植物探しに向かう。公開待機作に映画『榎田貿易堂』など

滝藤賢一氏が植物にハマったきっかけ。それは行きつけのアパレルショップ、ネペンテス東京のクリエイティブディレクター、青柳徳郎氏に誘われ、プレスルームにある植物を見たことだった。カッコいいからと軽い気持ちでエアプランツを買い求めたのが3年前。

その後、梅ヶ丘の植物卸、HANACHOの店主、山本茂氏に教えを乞うたことから今、滝藤氏の自宅のベランダには中南米、アフリカ、タイなどの珍しい植物が所狭しと並ぶ。

「よく枯らしました。でも、その経験から植物が何を欲しているのか、何を嫌がっているのか、何となくわかってくるんです」

植物たちの珍しいフォルム以上に惹かれるのはその生命力。

「夏の直射日光を当てすぎて枯れかけたサンセベリアを妻が鉢から出し、水にドブンと浸したところ、すさまじい勢いで根が再生した。その姿を見ると『まだ生きていたのか!』と可愛くてたまらなくなり、完全に魅了されてしまいました」 

「この幹が好き」とお気に入りを愛でる幸福そうな表情の滝藤氏。「遠い国から日本にやってきた植物たちだから、ちゃんと彼らを幸せにしてあげたいんです」

植物への投資は、自身の感覚を研ぎ澄ますことにつながるという。天気予報と湿気のチェックは当然。家にいる時は太陽の動きに合わせ、鉢の置き場所もこまめに動かしていく。長雨、台風、厳冬の時期は100を超えるすべての鉢を室内に移す。

「子供は勝手に育つかもしれませんが、植物は自分で動けませんからね。本来、合わない環境に、人間のエゴで連れてきているので、ちゃんと責任を持って育てたいです」

何より日々、植物と静かに対峙することで、時間の概念が変わってくるという。

「植物は病気にかかっても、症状として表に出てくるのに2カ月かかるらしいので、気づいた時はすでに遅し、ということが多い。だから常日頃から気をつけて見てあげないといけない。観察眼が磨かれます。先日もユッカ ロストラータの元気がなく、専門家に診てもらったら、地植えすれば2年ほどで復活しますよと、ご自分の温室に持っていって下さいました。2年のお別れ......。そういう長いスパンでの物差しを持つことは大切ですし、役者という仕事にも間違いなく活きると思っています」

目下ベランダで台本を読むのが至福の時間だが、集中力がつい鉢に削がれ、セリフが頭に入ってこないのが唯一の難とか。

「何十年先も生き続けるであろう植物と、こうやって時間をかけて関係性を築いていく。これってとても幸せなことです」

幹や根に水を蓄えるコーデックス植物の王といわれるオペルクリカリア・パキプス。


Text=金原由佳 Photograph=滝川一真 Hair & Make-up=酒井啓介

*本記事の内容は17年11月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)