ベストセラー『野球ノートに書いた甲子園』最終巻発売! 夢の舞台の裏側にもドラマがある。乙訓編

夏の甲子園、熱戦の火ぶたが切って落とされた。全国を代表する56校の戦い。その裏には、夢の舞台に立てなかった3725校の想いがある。どれだけ強い気持ちで「甲子園」を夢見たのか――。ベストセラーシリーズの最終巻『野球ノートに書いた甲子園FINAL』(高校野球ドットコム編集部、8月10日発売)には、球児、指導者たちが全力で夢へと向き合った「言葉」があった。今回は、本書に収録された、春の甲子園に出場し、注目を集めた乙訓高校の知られざる言葉の物語を紹介する。


乙訓高校の2人のエース

7月23日、第100回全国高等学校野球選手権記念京都大会準々決勝。

春の選抜出場校・乙訓と名門・龍谷大平安。京都大会の事実上の決勝戦ともいわれた一戦は、まさかの展開で終わりを告げた。5回コールド。勝利した龍谷大平安は勢いそのままに甲子園への出場を決めた。

敗れた乙訓。

春に甲子園初出場を決め、春夏連続で甲子園出場を目指したチーム、最後の試合のマウンドは「2人のエース」が上がった。

右のエース・川畑大地、左のエース・富山太樹である。

インタビュー中の富山太樹(左)と川畑大地(右)。

1年生の秋からエースナンバーを目指して切磋琢磨しあうライバル。性格も育った環境も違う。ただひとつ、夏に向けた思いだけは一緒だった。

5月18日。彼らは同じ危機感を抱き、それを「野球ノート」にしたためている。

5月18日(金) 富山太樹
3年生の態度
→3年のこの時期は、もう自分のためにやることは少ないと思う。「どうすればチームの勝利に貢献できるか」「どうすればチームを良くできるか」「どうすれば下級生が良くなるか」どんな形であれ、チームのためにやるということは変わりないはずだ。

最終学年として、そしてチームを引っ張っていく選手として、責任感を持って練習に取り組んだ。

富山選手は時折見せる笑顔見せながらも、質問にひとつひとつ丁寧に応える。その真面目な性格はノートの文字にも表れている。その富山は、入学以来続けたこの日の「野球ノート」の続きにこんなことを書いた。

自分たちが今するべき行動を考えて状況を変えないといけない。

 一方、右のエース・川畑。

5月18日(金) 川畑大地
無駄なミスを減らす。
→普段出ているメンバーがミスをして足を引っ張っていたように見えた。

指摘をしたのは春季京都大会準決勝の一戦。5月14日の福知山成美に勝利した試合だ。川畑はベンチスタート。乙訓は富山が2番手で継投すると、川畑が3番手として登板していた。6対4で強豪を破った試合に川畑は多くの課題を感じていた。その想いが続きにこう綴られていた。

常に1人1人が、自分が目立つ、自分が活躍するといった気持ちで挑まないといけないと思う。

力強い眼差しで相手のことを見つめて話をする川畑。雰囲気から感じ取れる芯が通っている、そして覚悟の強さを持つ川畑は、この日のノートに夏への決意が書き記されていた。

僕は、春はもちろん、秋、春、夏全て優勝したいと思っている。

5月18日のノートには、2人は同じように夏のため、そしてチームのためを想った胸の内が書き残されていた。そこには紛れもなく、チームの大黒柱としての2人の責任と覚悟があった。

そんな2人に、野球ノートはどんな存在だったのか問うと、口を揃えてこう言った。

「野球への考え方が広がった」

夏への意気込み同様、Wエースが抱いていた野球ノートへの想いは同じだった。

エースナンバーを目指すライバル同士の2人が見据えた同じゴール、甲子園。

そのために綴ってきた「野球ノート」には、2人の試行錯誤の様子が窺える。自分には何が足りないのか。何が課題なのか。チームを勝利に導くためにどうすればいいのか。常に自問自答し続けた2年半。

「野球ノート」に書き続けた夢の続きを、これからの野球人生で実現していく。

Text=高校野球ドットコム編集部

『野球ノートに書いた甲子園FINAL』
8月10日発売
高校野球ドットコム編集部
幻冬舎 ¥1,100