地球にやさしいファッション界のサステナビリティ【特集やさしい服】

温暖化の影響を実感せざるを得ない現在。気候変動を食いとめ、持続可能=サステナブルな社会を実現すべく、ファッション業界も真摯に取り組んでいる。ファッション業界紙『WWDジャパン』編集部にてその最前線を取材する廣田悠子氏と選んだトピックスからは、私たちの装いの未来が見えてくる。

サステナビリティは服選びの基準  

日本を代表するファッション業界紙『WWDジャパン』。そのオフィシャルウェブサイトwwdjapan.comには、業界の最新ニュースが日々アップされている。そこで近年急増しているのがサステナビリティ関連のニュースであり、それらの多くを執筆しているのがサステナビリティ担当記者の廣田氏だ。今ファッション業界で起きていることを間近で見つめ続けている同氏は、現状をどう捉えているのだろうか。

「現在のファッション業界におけるサステナビリティは、企業としてやらざるを得ない状況になったと言えます。まず国連やNPO、NGOからからのプレッシャーがあり、それは企業だけでなく金融機関や投資家にも及んでいます。近年の投資には財務状況や将来性に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)という要素が重要な基準となっています。これは故コフィ・アナン元国連事務総長が提唱したPRI(責任投資原則)という取り決めに基づくもので、投資先にも環境や社会への責任を求めるというもの。これによってお金の流れが変わり、サステナブルではない企業には投資しないという風潮が一般的になってきたのです」

サステナビリティという言葉がひとり歩きし、トレンド感覚でもてはやされている感もある。だが、ファッションビジネスの最前線では、満たさなければ資金調達すらままならない必要条件となりつつあるのだ。

「ミレニアルズやジェネレーションZと呼ばれる環境意識が高い世代にとって、服選びの基準にもなっています。いずれにしろ取り組まねばビジネスが立ち行かなくなるばかりか、地球にも住めなくなる。サステナビリティは地球の一員として、みんなで考えていかねばならないのです」

1.バイオテックベンチャー製タンパク質の服!?

コート ¥150,000(ザ・ノース・フェイス/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL:0120-3070-560)※50着限定、昨年末に完売。

スパイバーの「ブリュード・プロテイン」
日本のスタートアップ企業スパイバーが開発した人工構造タンパク質「ブリュード・プロテイン」は、環境負荷が大きい化学繊維に取って代わる可能性を秘めた最先端素材。独自設計の遺伝子情報を微生物に組みこみ、サトウキビなどから採取した糖類で培養して作るタンパク質は、繊維や樹脂、フィルムなど多彩な形状に成形できる。昨秋には高機能ウェア「ムーン・パーカ」を販売し、実用化も達成。石油や動物に頼らない服の未来は近い。

2.大ヒット商品だからこその社会を変える服のチカラ

ポロシャツ 各¥1,990〈4月発売予定〉(ユニクロ TEL:0120-170-296)

ユニクロのサステナブルな「ドライEXポロシャツ」
「服のチカラを、社会のチカラに」を合言葉に、柳井正会長兼社長の指揮の下、サステナビリティに注力するユニクロ。製品開発や生産、雇用、社会貢献など多くの分野で推進中だ。直近では機能ウェア「ドライEXポロシャツ」を、ペットボトルを再利用したポリエステルを素材の一部に使用することを発表。同商品は全世界で膨大な枚数が販売される大人気商品、それだけ環境への影響も大きい。その一手は社会を変えるチカラを秘めている。

3.スニーカーは履きたおしたら返却して蘇らせる時代に

スニーカー〈2021年発売予定〉(アディダス/アディダスお客様窓口 TEL:0570-033-033)

アディダスの「フューチャークラフト.ループ」
サステナブルな観点から近年注目されている循環型製品。10年の開発期間を費やし、アディダスが昨年発表した「フューチャークラフト.ループ」は、そのお手本ともいえる次世代スニーカーだ。再利用可能な熱可逆性ポリウレタンのみですべてのパーツを作り、接着剤を使用せずに組み立てることで、洗浄・粉砕・溶解を経て100%リサイクル可能な循環型スニーカーを実現。実証実験により着用・再生が可能であることも証明された。

4.時代が彼女に追いついた持続可能なラグジュアリーの先駆者

パーカーはアディダスとのプロトタイプ商品。スニーカー ¥64,000(ステラ マッカートニー メンズウェア/ステラ マッカートニー カスタマーサービス TEL:03-4579-6139)

ステラ マッカートニーの功績
ファッションに興味があるなら、ステラ・マッカートニーの名は知っているはず。その功績のひとつが、2001年のブランド設立時よりサステナビリティをコンセプトとしてきた点だ。毛皮や革を使わず、最先端の代替え素材を使用。分解・リサイクルできるスニーカー開発も率先して行った。近年ではリサイクル可能な循環型パーカのプロトタイプをアディダスとの協業ラインから発表。彼女は今や、サステナブルファッションの最重要人物だ。

5.100年来の進化を遂げたブドウから採れる革の肌ざわり

ベジェアの人工皮革
19世紀から存在する人工皮革は、動物を消費しないが化学処理が必要だった。だがイタリアの小さなスタートアップ企業ベジェアは、ブドウの搾りかすとリサイクルポリエステルやオーガニックコットンを用い、化学処理不要の人工皮革を試験開発。しかも原料はワインなどの搾りかすから造られる蒸留酒グラッパの製造後に出る残留物で、その品質はベントレーがコンセプトカーのシートに採用するほど。小さな企業による、大きな快挙だ。

6.これからの服はサステナブルでもお洒落

コート ¥325,000、ブルゾン ¥112,500(ともにマリーン・セル/エムエイティティ: info@THEMATT.COM)

マリーン・セルのアップサイクル
不用品の価値を高めて再利用する概念アップサイクルは、リサイクルに並び注目される持続可能な社会実現への手立てのひとつ。その実践者がフランスの若手デザイナー、マリーン・セルだ。コレクションに古着や不要になったテーブルクロス、カーテンなどを再利用しているが、特筆すべきは服そのものがパリ・コレクションで高く評価されている点。持続可能にしてクール。それは彼女が掲げるコンセプト“未来の服”のあるべき姿だ。

7.これからのファッションは循環型がカギ!?

コンシャス・エクスクルーシヴ・コレクション
ファッション業界は大量生産・大量消費・大量廃棄を問題視されるが、H&Mが2004年よりオーガニックコットンを用いるなど、早くからサステナビリティに着目してきた。その成果のひとつが’12年から毎年発表している「コンシャス・エクスクルーシヴ・コレクション」だ。グレープレザーなど廃棄物を活用した革新的な素材を用いながらハイエンドなデザインを追求。それはサステナビリティとファッションを両立するコレクションだ。

8.身近でできることを続けるインディブランドの挑戦

フィービー イングリッシュの試み
リサイクル素材や循環型製品の開発には、ある程度の資金が必要だ。だが、英国のフィービー イングリッシュは、服作りに必要な資材をアトリエから半径15マイル(約24キロ)以内で調達することで、運搬時のC02排出量を削減。服作りや包装材にプラスチック部材を使わず、化学繊維もなるべく避け、リサイクル素材を積極的に採用する。そう、資金が潤沢ではないインディブランドでも、サステナビリティは実践できると実証しているのだ。

9.自然への深い愛を感じる先見の明と徹底ぶりに脱帽

Tシャツ(右)¥4,200、Tシャツ(左)¥4,800(ともにパタゴニア/パタゴニア日本支社 カスタマーサービス TEL:0800-8887-447)

パタゴニアの企業理念
ペットボトルをリサイクルし、衣料へと再生させる。先進的に感じる試みだが、米国のパタゴニアは1993年に実現させていたのをご存知だろうか。他にも自社製品の回収・リサイクルや、再生素材の使用、フェアトレードなど、同社のサステナビリティへの探求は徹底している。今シーズンからは、環境を再生する有機農業で栽培された「リジェネラティブ・オーガニックコットン」を使用した初の製品を発売する。

10.子供たちの未来のために今できる最善を服に託して

エコアルフが日本上陸
よりよい地球を未来に残すべく、ハビエル・ゴジェネーチェが2009年に創業したスペインのエコアルフは、いわばサステナビリティそのものが原動力となったブランドだ。海洋廃棄物などを利用した300種類以上の自社開発リサイクル素材をベースに、使用するのはすべて環境負荷の低い素材。タイムレスかつモダンなデザインも末長く愛用できる。昨年には三陽商会と合弁会社を設立し、今季より日本デビューした。その挑戦に注目したい。

11.着ていない服を捨てるその愚行を法律でストップ

フランスの売れ残り品廃棄禁止法令
サステナブルファッションの中心地フランスの政府は2020年2 月10日からある法を施行した。衣料品を含むあらゆる在庫品や売れ残り品の廃棄を禁止するという、包括的かつ野心的な法案だ。すでにフランスでは’16年より食品の廃棄が禁止されており、売れ残りは慈善団体への寄付や畜産用飼料などに転用せねばならない。これが他の製品にも適用されれば、売れ残り廃棄が大問題になったファッション業界にも一石を投じることになるだろう。

12.時代を超えて持続する循環型ダウンの温かさ

グリーンダウンプロジェクト
グリーンダウンプロジェクトは、ダウンのリサイクルに取り組む一般社団法人。あまり知られていないが、ダウン製品の羽毛は解体・洗浄を繰り返すことで100年間もの再利用が可能。しかも水鳥の消費を減らせるだけでなく、複数回の洗浄で安全性も高まる。また全国の会員企業の店舗で回収したダウン製品の解体作業には障がい者施設が関わり、雇用創出にも貢献。賛同企業も増えている。捨てられる服がなくなる日は、そう遠くない。

Yuko Hirota
『WWDジャパン』編集部。2006年『WWDジャパン』を発行するINFASパブリケーションズに入社。海外コレクションのトレンド分析やデザイナーへの取材担当を経て、’18年よりサステナビリティ担当記者として取材・執筆を行う。

Direction=島田 明 Text=竹石安宏(シティライツ)Photograph=隈田一郎 Styling=久保コウヘイ Illustration=三上数馬