人生を謳歌する家 NIPPON Vol.01 仕事を極めた者たちの究極空間!

仕事を極められる人間は、ライフスタイルも極めている。その最たるものが、家だ。住む人間の「どうありたいか」が如実に表れる。今回訪れたのは息をのむほど贅を尽くした家や、強烈な個性が匂いたつ、およそ並みの人間の想像を遥かに超えた“作品”のような家だった。そして、彼らは仕事とは別の愉しみを、そこで思うさま得ている──。そう。まさに人生を謳歌しているのだ。いつかは住みたい夢の邸宅での暮らしを、これからご覧に入れよう。

アースホールディングス代表取締役
國分利治の長年の夢がかなった大人のビーチハウス

5×12m、深さ120~160cmのプール。プールサイドは熱くならないよう、厚さ5cmの大理石を敷き詰めた。

 昨年10月号で浜田山の自宅を撮影した際「鴨川の海が目の前に広がる約600坪の土地を買ったんです。そこに“大人のビーチハウス”を作ろうと思って」と別荘建設の夢を語っていたアースホールディングス代表取締役の國分利治氏。
 2013年7月、その言葉どおり、大人のビーチハウスが完成した。実はこの場所、國分氏が長年サーフィンに通っていた海が目の前なのだ。
「外房にビーチハウスを持ちたいと、土地探しをしていた頃、ここが空き地なのは知っていました。でも当時は価格が高かったし、いずれマンションでも建つんだろうなあと。それが震災後に価格が下がったことで、よし買おう! と踏み切りました」
 イメージは海の家。
「以前に雑誌で見た、アメリカ西海岸に建つ流木や古木で作られたサーファーの家が理想でしたが、なんせ予算オーバー。理想と予算を鑑みてたどりついたのが、この家なんです」
 社員が気兼ねなく使えるよう、家具や備品はあえて低価格でカジュアルなものを揃えた。
「その代わり、遊ぶためのマストな設備はきっちり作りました。まずプール、ジェットバス、そしてバスケットコート」
 プールを中央に両サイドに2棟。そしてプールをバックにメイン棟という3棟を擁する大きなビーチハウスだ。
「メイン棟の1階はDJブース、ビリヤード、ダーツ、そしてバーがあるパーティルーム。2階は役員が泊まれるVIPルームです。両サイドの棟には家族連れが泊まれる部屋が各1部屋ずつに、若いスタッフが雑魚寝できる合宿部屋。あとは麻雀ルームや遊び道具を収めている倉庫です。全国のEARTHのスタッフはフランチャイズのオーナーが同行すれば、ここを使えるシステム。家族が一緒でも知り合いが一緒でも構いません」

メイン棟の1階はさながらスポーツバーのよう。吹き抜ける海風を感じながら、酒を飲み、音楽を聴き、ビリヤードやダーツに興じられる夢のようなスペース。
メイン棟から海に向かって左手の棟にあるテラスには、國分氏手作りの大きなダイニングテーブル。いずれはここで夕陽を見ながら幹部会議?

 もちろん、國分氏自身もプライベートでここに来る。5時に起き、朝食もとらず6時から10時までサーフィンに没頭し、日中はプールやジェットバスでのんびりし、16時から19時まで再びサーフィンに興じる過ごし方だという。
「食事はだいたいバーベキュー。近くに旨い刺身を売っている店があるので、買ってきて家で食べたりもしています」
 そして自宅に自らの手でイングリッシュガーデンを作るだけあって、植栽にはこだわった。
「自宅が英国風なら、ここは思い切り南国風にしようと考えたんですが、目の前のビーチにヤシの木が並んでいるので、我が家にはデイゴやソテツなどを職人さんに植えてもらいました。小さな植え込みは全部自分で考え、買ってきて植えたもの。土や植物をいじっている時間も、僕にとっては心が落ち着く貴重な時間なので」
 全国のフランチャイズ店を回り、多忙を極める國分氏が都心から2時間以上もかけて、このビーチハウスを訪ねる理由は。
「海を眺めると、とにかく気分が変わる。本当にリフレッシュできるんです。サーフィンしたり、1日ぼーっと水に浸かっていたい。オーナーとしてここを作った理由は、スタッフ同士が趣味や好きなことを共有できる場になればいいなと思ったから。EARTHには僕がピッチャーを務める野球部もあるから、いずれ合宿をしたいですね。そして何年か後、目の前のビーチで美容業界のサーフィン大会『EARTH杯』を開催したい。プロサーファーや地元の人を呼んで、大会のあとはこの家でパーティーをして。40代、50代でサーフィンを始めたい人のスクールなんかもできたらいいなあ」
 プールサイドで海を見ながら、夢は果てしなく広がっていくようである。

1.長年サーフィンで通っていたからこそ、この土地との出合いがあった。この家にいると、海に入るのが生活の一部。2.海から戻るエントランス脇にシャワーを設置。「このシャワーもマストの条件として作ってもらいました。おかげで家の中に砂を持ち込まずにすみます」3.海から戻るとシャワーを浴びてジェットバスに飛びこむ。「海→ジェットバス→プールとエンドレスに繰り返すのが、何より最高です」
4.メイン棟の2階VIP専用バスルームでは、海を眺めながらバスタイムを満喫できる。両サイドにはベッドルーム。5.鉄板焼きプレートが2カ所内蔵のダイニングテーブル。傍らのテレビにはカラオケセットも。どこまでも“大人の遊び”を追求したビーチハウス。
Toshiharu Kokubun
1958年、福島県生まれ。新宿の美容室からスタートし、30歳で独立後、葛飾区青砥にヘアサロンEARTHの1号店をオープン。フランチャイズシステムを採用し、現在はオーナー55名、店舗数221、スタッフ数約2800名という規模。http://hairmake-earth.com

グラマラス代表取締役 デザイナー
森田恭通の美意識とセンスが無限に広がる家

森田氏の宝物が所狭しと並ぶアトリエ。腕に抱いているのは、森田氏以上に(!?)この部屋が好きなメインクーン種の愛猫シルキー。

 「住宅のデザインと商業施設のデザインは根本的に違います。僕はその両方を手がけていますが、商業デザインはプロジェクトがうまく行くためのサポート的なデザインが求められ、一方で住宅のデザインは住む人が24時間いつでもリラックスできて、時には気分があがるようなものを作らなければいけない。だからデザインのやり方がまったく違うんですね。それが自分の家となると、また余計に難しいんです」
 と語る、グラマラス代表取締役でデザイナーの森田恭通氏。

 「僕の家は“好きなものに囲まれて住んでいる家”といった感じでしょうか」
 住人は森田夫妻と6匹の猫たち。家具は森田氏のデザイン、また既存の家具に手を加えたもの、さらにアートといえる作品などさまざまだ。そして森田邸のシンボリックなスペースと言えるのが、半地下にずらりと森田コレクションが並んだ60平方メートル以上のアトリエである。
 「ここは僕がデザインする時や、アイデアを高める時、家の中で最も長い時間を過ごす場所。一見雑然と見えると思いますが、何がどこにあるか僕にはすべてわかっています。例えば『ヌメロ』や『ヴィジョネア』は創刊号から揃っていて、こことここに置いてあるとか。探すものは、迷わず見つかるんです」
 雑誌マニアの森田氏らしく、所狭しとさまざまな本が並ぶ。
「表紙がデザインになっている本が多いので、普通の本棚みたいに背表紙が見えればいいわけじゃない。だから開口部が広い棚が必要だったんです。ここにはデザイン関係というより、僕が好きなアート系、写真集、それとヌードが多いですね(笑)」
 このアトリエを訪れれば、森田氏の好みが一目瞭然というわけだ。そしてお気に入りの場所は? とうかがうと。
「読む本によって座る場所が変わるんですよ。それとアート作品の入れ替えはかなり頻繁。好きなアートを見つけると、それを基準に取り替えますから」

贅沢なギャラリーでありながら、居心地のよい居住空間でもある

1.「倉科さんにお任せしたら、白馬が描かれ、金箔が施されて返ってきました。蓋を開けると馬が振り返るという仕掛けも」。2.エントランスのライトはエルメスのスカーフを2枚つないで作った森田氏の作品。3.とてもウォークインクローゼットに見えない空間。 奥の写真が貼られた壁は、すべてドア。

 そして1階へ。吹き抜けのエントランスには、馬の絵が描かれたグランドピアノが鎮座する。
「茶色のアンティークのグランドピアノを妻が持っていたんですが、オリジナルのピアノに変身させたかったので色を塗っていい? と聞き、カスタムペインターの倉科昌高さんにお任せしました。これ、全部解体してペイントし、再度組み立てたそうです」
 そして階段を上った先には、ゲストをもてなすリビングルーム、ダイニングルーム、そしてテラスルームがある。ゲスト用のダイニングテーブルも森田氏のデザインだ。
「手元にクリスタルがあったんで(笑)、ばらまいてキラキラにしちゃおうと。椅子はオランダのマーティン・バースのスモークチェア。木をいったん燃やして炭化させ、ワックスで固めたものなんです」
 リビングにもアトリエ同様エルメスのスカーフが並ぶ。
「これは僕が持っていたスカーフと奥さんの持っていたものをリサイクル(笑)。並べたら彩りもキレイだし、じゃあ、額装しちゃおうと。スカーフは最も身近なアートのひとつですね」

プライバシーが確保され、外を眺めながら楽しめるバスルーム。キラキラと輝くのはタイルに混ぜたプラチナ。

 3階はプライベートエリア。夫婦で食事をするダイニングスペースには愛猫たちのキャットタワーも。さらにバスルームやベッドルームといったプライベートな空間が広がる。今現在もラスベガス、マイアミ、カタール、ロシア、香港、中国、台湾など、さまざまな国でのプロジェクトを同時進行させている多忙な森田氏に、ここでゆっくり過ごせる時間はあるのだろうか?
「年間100日は海外です。でも3分の2は自宅で過ごせます。家では可能な限り、1日1回はお湯を溜めて風呂に入ります。あとはアトリエで仕事と関係のない本を読む。ホテルのフリーペーパーやファッション誌が多いかな。それと猫たちと戯(たわむ)れるのが、僕のリラックスタイム」
 多忙なクリエイターの目下の悩みは増え続ける本。
「僕は幸い欲しいと思う物はコラボさせていただけたり、自分で作ることができる。だから家に不満はないんです。でもこれ以上物が増え続けるのは……。どうしましょうね」

Yasumichi Morita
1967年、大阪府生まれ。2001年の香港プロジェクトを皮切りに、ニューヨーク、ロンドン、上海など世界に活躍の場を広げ、インテリアに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行う。2011年にはプロダクトデザイン会社「Code」を設立。

Photograph=高島 慶(Nacasa & Partners) Text=今井 恵 写真提供=Nacasa & Partners

*本記事の内容は13年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい