ハウステンボス代表取締役社長 澤田秀雄がひと夏過ごす超最先端の“家”?


 18年間赤字が続いた長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」を、たった1年で黒字転換した救世主、澤田秀雄氏。その手腕は、大手旅行会社エイチ・アイ・エスの創業にとどまらず、格安航空会社スカイマークや証券会社設立など多岐にわたって発揮される。

 そんな澤田氏が、新たな目標として掲げたのが、「観光ビジネス都市」の創生だ。ハウステンボスを、観光だけでなくベンチャービジネス集結の地として今後発展させていくという。そのパイロットプロジェクトとして始動したのが、「ハウステンボス・スマートハウス」の設計だ。この家は、世界最先端の環境と省エネソリューションを実現する住まい。ハウステンボスの賑(にぎ)わいと海沿いの静けさが交差する場所に建てられた。

 「ビジネス化するには、検証が必要です。住んでみないとどこを改良すればいいかがわかりません」
 ハウステンボスに滞在中は、この家に自ら暮らすのだという。

 白い箱を思わせるスマートハウスは、ガラス張りのモダンなデザイン。機能だけでなく、デザイン的にも優れ、自然と共存することが必要だと澤田氏は言う。リビング・ダイニング・キッチンと寝室・風呂・トイレの二棟に区切られ、公私での使い分けができるのもいい。

 その最先端技術は1から10までの説明を読んでいただければわかるが、ほとんどは世界的にも類を見ない試み。つまり、これらの技術が完成すれば、今後多くのビジネスを創生できる。

 「検証結果を生かし、来年にはハウステンボス内にスマートホテルを建設予定です。自給エネルギーだからコストがかからない。ホテル業務はロボット化して宿泊費は5000円程度に抑えられる。世界最高水準の生産性を誇るホテルが誕生します」

 だがホテルは一例でしかない。輻射パネルや断熱塗料など一般住宅にも生かせる技術も多々ある。将来的な電力不足が懸念される今、日本だけでなく世界のエネルギー供給に貢献する新技術を、このハウステンボスから発信することになるのだ。

 自らの暮らしを通してビジネスを生み出す澤田氏。人にも環境にも優しい事業への挑戦は、今や彼の使命なのだろう。

1.輻射冷暖房パネル

 鉄パイプを束ねた輻射パネルは、佐世保の主産業である造船業の錆(さ)びない、漏れない技術を生かして造られた。パイプ内を冷温水が循環することで、室内の温度や湿度をムラなく一定に保つ。外は猛暑という日も、一歩部屋に入ると空気も床もほどよくひんやり。その心地よさにほっと癒やされる。

2.多機能断熱塗料

 どんな屋根や外壁にでも塗るだけで断熱できるのが一番の特徴。屋根を三角にして空気の層をつくる必要がないから、建築コストも削減できる。さらに結露を防ぐ効果をはじめ、防水、防汚など多機能性を発揮。リビング棟には外壁のみ、寝室棟は内壁にもこの塗料を使用し、温度や湿度の違い、カビの有無などを実験する。

3.見える化パネル

 テレビやPCとして使えることはもちろん、電力の受給状態など住宅の環境をパネル上で一覧できる。今後は、天井から床までの一体型透明パネルにし、不使用時はキッチンとリビングを遮らないような快適性とデザイン性も追求する。

4.太陽熱温水パネル

 24時間、お風呂場や洗面所、キッチンなどですぐに温水を使うことができる。その供給量は、1日2回お風呂にお湯をためて入れることに加え、洗面や料理などにたっぷりお湯を使っても絶えることがないほどだという。途上国のホテルでの給湯事情をよく知る澤田氏ならではの発想が、ストレスの少ない部屋づくりを実現する。

5.太陽光発電システム

 太陽光発電に加え、風力発電、磁力発電などの未来エネルギーを利用することで、気候に左右されない電力供給を目指している。

6.顔認証システム

 暮らす人の顔を認知して、言葉でコミュニケーションを図ることに加え、侵入者を即座に確認し、警備会社に通報する。

7.一体型サラウンドスピーカー

 左から右へ通り抜ける列車の音、後ろから近づく足音など臨場感溢れるサラウンドを、1台のスピーカーで生み出す。

8.1人用電気自動車

 コンパクトで可愛い風貌からは想像できないパワーを持つ電気自動車。時速50kmまで可能な、小回りがきいて、細い道もすいすい走ることができる。澤田氏はハウステンボス内の移動に、この電気自動車を利用している。

9.電気自転車

 漕がなくても走るスタイリッシュな電気自転車。近場への移動や、ゆっくりパーク内を回る時は、これが便利だという。

10.音声コントロールシステム

「クラシック」と言えばその音楽が流れ、「テレビ」と言えばパネル画面がテレビになるなど、言葉だけでさまざまな機材が始動する、まさに近未来のシステムだ。

番外 熟睡枕

 澤田氏お気に入りの枕。フランスで購入したこの枕があれば、どんな場所でも1分で眠れるそうだ。

Photograph=福森クニヒロ Text=中井シノブ

*本記事の内容は13年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい