トイザらスのスーパー秘書はネゴシエーター「私にしかできないことを!」vol.05

ボスのスケジュール管理、社内調整などをベースにしながらも、「その先」をボスは秘書に求めている。そしてそれに応えるべく、秘書たちは懸命に独自の仕事術を模索していた。今まさに、秘書の新時代が到来!? 一歩も二歩も先を目指す、新たなる秘書の世界を公開第5弾

その高い調整力ともてなしの心に、海外ゲストも感服する“ネゴシエーター”

日本トイザらス

代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) トイザラス アジア・パシフィック社長 モニカ・メルツ(写真右) 役員室 エグゼクティブアシスタント 加藤由起子(写真左) 英語に接する仕事がしたい、と考えて入社した外資系製薬会社で秘書に配属される。その後、別の外資系企業に転職、1991年に同社に入社。

国内外の過密な出張・会議をアレンジ

全世界で1500以上の店舗を展開する玩具、ベビー用品の総合専門店、「トイザらス」「ベビーザらス」。日本法人を率いているのは、カナダ出身のモニカ・メルツ社長だ。
「長いキャリアの間にたくさんのエグゼクティブアシスタントを持ちましたが、加藤さんはまさにベストです。彼女と関わりを持った多くの方々が、素晴らしいアシスタントをお持ちだ、と褒めてくださるんです(笑)」
 秘書を務める加藤由起子さんは、新卒で外資系の製薬会社に入社。以来、秘書としてのキャリアを積み重ねてきた。
「トップに一番いい環境下で、一番いい意思決定をしてもらうこと。それが秘書の役割だと考えています」
 加藤さんは日本トイザらスに、1991年に入社。これまで4人のトップを支えてきた。
「トップによって価値観はさまざまです。書類ひとつとってみても、細かく見たい方も、大まかに把握されたい方もいらっしゃる。何が求められているのか、まずは静かに探らせていただくところから始まりますね」
 就任7年目のメルツ社長は現在アジア・パシフィックの社長も兼務している。年間15、16回の海外出張で150日ほどは日本を留守にする。出張の手配や海外でのミーティングのアレンジなども加藤さんの仕事だ。
「現地で急にアポイントが増えることもあります。案件によってそういうことが起こりうるかどうかも想像しながら、出張の予定を組むようにしています」
 海外の時間が長いため、日本にいる間のスケジュールは、どうしても過密状況になる。各国との電話会議も、昼夜問わず入ってくる。だからこそ、何より心配しているのが、天候不順などで飛行機が飛ばなくなること。
「帰国がずれると、すべてを再調整しなければなりません。もちろんお相手があることでもあり、ひと筋縄ではいきませんが、パズルを組み替えるように予定変更がうまくおさまった時は、こっそり机の下で小さくガッツポーズをしたりします(笑)」

COMPANY DATA
1989年設立。世界展開する玩具のチェーンストア、トイザらスの日本法人。国内最大級の品揃えを誇る玩具・子供用品の総合専門店「トイザらス」65店、世界中から厳選された商品を豊富に取り揃えるベビー用品の総合専門店「ベビーザらス」13店、両者の併設店86店を全国に展開。

そんな彼女が1年で最も忙しいのが、東京おもちゃショーが開かれる毎年6月。アメリカ本社のCEOをはじめ、各国から数十人のビジターが一斉に来日し、約1週間滞在する。飛行機やホテル、会議室、お弁当など、多岐にわたる手配が必要になるのだ。ビジターはみな超多忙。そのため、スケジュールは変更に次ぐ変更、ということも少なくない。調整業務は過酷なものとなるのだ。だが、その対応ぶりはメルツ社長はもちろん、海外からも評価される。

スケジュール確認から1日が始まる。帰り際は車に乗りこむギリギリまで確認事項を伝えているという。


「帰りがけにビジターから、『日本は調整と準備が素晴らしい。どこの国よりも安心して出張できる』と言ってもらえた、という話を聞いた時には本当に嬉しかったですし、同時に協働してくれたチームメンバーにも感謝の気持ちでいっぱいになりました」
 誰もが驚く対応が、どうして可能になるのか。加藤さんが心がけているのは、常に引き出しを多く持つ、ということ。
「例えば会食でレストランを予約する。相手のお好みや苦手なものを聞いてお店を選ぶことは大切なことですが、場合によっては確認している間にレストランが予約で埋まってしまうこともある。そこで、先にいくつかの候補をリストアップしておいて、予約を入れておくんです。そして、お好みを聞いたうえでひとつに確定させる。せっかくぴったりなお店があったのに、すでに予約でいっぱい、というのではあまりに残念ですから」

名刺の肩書きをセクレタリーから変更

 日本トイザらスでは、この春、名刺に刷られていた秘書の肩書きを、英語表記はすべてセクレタリーからエグゼクティブアシスタントに変えた。
「ファイリング、タイピング、お茶くみ、といった昔の秘書の仕事とは、今は大きく変わってきています。指示を受けてメール返信を代行することもある。自分で判断したり意思決定して、踏み込んだ形で仕事をすることも多い。従来の秘書という仕事のイメージとは、ギャップが大きくなってきているんです」
 この肩書き変更を決めたメルツ社長はこう語る。
「私が何かフォローアップしなくても、必要な仕事はすべて加藤さんが自らやってくれています。私の仕事を完璧に理解し、私が動きやすいように、さまざまにセッティングしてくれている。これは単なるセクレタリーの仕事ではありません」
 経営トップの仕事が、いかに過酷で孤独か、ずっと身近で見てきた、と加藤さん。
「過酷な環境で、厳しい意思決定をしないといけない。孤独でつらいことがたくさんある仕事。でも経営者は、表向きは決して、そんな顔は見せないんですね。ですから、せめてオフィスに戻ったら、ふっと気が抜ける、そんな環境づくりも含め、常に先回りして幅広くサポートをしたい、といつも考えています」

Text=神舘和典、上阪 徹 Photograph=星 武志、岡村昌宏

*本記事の内容は14年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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