デザイナー、奥山清行氏がフェラーリを買った理由


新時代の傑作を生む「フェラーリ」

日本人としては初めてフェラーリをデザインした奥山氏がさらなる高みを目指し、最高峰のクルマを購入した。

 「未来を考えるのがデザイナーの仕事です」

 そう語るKEN OKUYAMA DESIGN代表の奥山清行氏は、過去に自身が手がけたクルマを購入したことはなかった。それは自分の作品を買ってしまうと、愛着が生まれ、それを壊して先に進むことができなくなるからだという。しかし、先だって奥山氏は自身がデザインしたエンツォ・フェラーリを手に入れた。400台のみが作られ、選ばれたオーナーだけが手に入れることができた希少な1台。いったいどんな心境の変化があったのか。

 「身銭を切ったオーナーのほうが、私よりもクルマの本質を理解し、利点も欠点も知っていることに気づいたんです。デザインとは形をつくるだけではなく、トータルな価値をつくること。ですから、身銭を切って良し悪しを判断しなくては、と思うようになりました」

 エンツォは2002年発表当時、新車価格は8000万円ほどだったが、現在は2億円以上で取引されている。そんなプレミアムがついた傑作を敢えて自分自身が買うことで、エンツォの市場価値をより高めたいという思いがあったという。

 さらに、自身が作る限定車、ワンオフカーをエンツォと並べることで、その価値をわかりやすく一般に伝えたい、ということも動機のひとつだった。 

 スーパーカーの新時代になくてはならない、意味ある買い物となったことは間違いない。

奥山清行
1959年生まれ。GM、ポルシェ、ピニンファリーナのデザイナーを歴任。自動車や鉄道、船舶、建築のデザインを手がけ、現在、KEN OKUYAMA DESIGN代表。Kode 57、Kode 0などのワンオフカーの製造・販売を行う。

Text=越湖信一 Photograph=柳田由人

*本記事の内容は17年11月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)