【ハイアット×京大和】最強タッグが仕掛ける「パーク ハイアット 京都」

10月30日、京都東山にかつてないラグジュアリーな場が誕生する。老舗料亭「山荘 京大和」の敷地内に「パーク ハイアット 京都」が開業するのだ。世界初といえるプロジェクトを牽引するリーダーたちの想いとその仕事に迫る。


唯一無二のもてなしを目指して

京都市内を一望できる、高台寺に隣接する地に料亭「山荘 京大和」がリニューアルオープン。その敷地内にラグジュアリーゲストハウス「パーク ハイアット 京都」が誕生した。

「ハイアット」は、1957年に米・ロサンジェルス国際空港に隣接する「ハイアット ハウス モーテル」を購入したジェイ・プリツカーによって創立。以来、「ハイアット」、「アンダーズ」などのブランドで、世界中に500以上のホテルを展開してきたホテルの雄だ。

一方、「山荘 京大和」は明治10年創業の料亭「大和屋」3代目が、昭和24年に京都・高台寺畔に開業した料亭。建物は、豊臣秀吉の庇護を受けた正法寺の塔頭「東光寺」とされている。

ハイアットグループで最高ランクの「パーク ハイアット」が、地元企業とのコラボレーションをするのは世界でも初めて。京都という歴史も文化もある地を活かすホテル展開を望んだ結果、このプロジェクトに行きついた。構想から5年の歳月をかけて想いをひとつに準備を進め、今秋の開業にいたったのだ。

世界でもまれに見るホテル創生を成功に導いたのは、ふたりの若きリーダー、「パーク ハイアット 京都」総支配人のマーク・デ・リューヴァーク氏と「山荘京大和」女将・阪口順子氏である。京大和は江戸時代創建の、京都市の保護建造物に指定される建物で、修復も必要だがそう簡単には手を入れられない状況だった。どのような経緯でプロジェクトが始動したのか?

「父は、前々から歴史的な建物やお庭を残して新たな展開ができないかと考えていたようです。そんな時、父と懇意にさせて頂いていた竹中工務店の竹中統一名誉会長が間に立ってくださり、NYのアンダーズを手がけられたご縁もあって、京都に新しいホテルを、と考えていたパーク ハイアットさんとつないでくださったのです」(順子女将)

長寿のお祝いや結納など、どんな席かによって軸や花を変え調える。四季折々の季節感も忘れない。

歴史的な建造物「送陽亭」などの建屋や雄大な庭は残し、京大和の敷地内にホテル棟を建築することで双方が合意し、スタートした。

「けれどホテルの成功を誰より願っていた父が亡くなり、女将として店を守ってきた母も一昨年亡くなりました。ふたりの想いを継ぎ、このプロジェクトを成功させることが私の夢であり使命になったんです」と順子女将。阪口家の7代目として生まれ、高校までは大阪で過ごし東京の大学に進学。京大和へ就職後、プロヴィデンスのJohnson & Wales Universityへ留学。レストランマネジメントを学び、母の下で女将修業を積んできた。

「お客様の喜ぶ顔を見るのが何よりの幸せ」と努める母の背中を幼い頃から見てきたという。

そんな「山荘 京大和」の姿勢に共感したのがリューヴァーク総支配人だ。なぜなら「ハイアット」が目指すのもまた何より「人を大切にする」経営だったから。ゲストや一緒に働くスタッフや関係者など、すべての人を「思いやる」ことや「尊敬する」ことを一番の信条としてきた。双方の想いが合致したこともスムーズに進んだ要因だとリューヴァーク総支配人は語る。

スタッフとのミーティングはリューヴァーク総支配人の日課。

「私は幼少期から父の仕事の関係で世界中を旅しました。いろんな街や人と出合うことで、さまざまな学びがあった。そして思ったのは、どんな国、場所に行っても大切なのは人との関わりだということ。言葉や習慣が違っても、きちんと向き合えば人は共感しあえる。その想いは、ハイアットに入社して、ドバイやタイなど多くの国で働いたことで、ますます強まりました」

オランダに生まれ、ホテルマンを目指してHotelschool The Hauge Universityでホテル学を専攻。14年前にロンドンのハイアットに入社。以来、さまざまな国で経験を積んできた。5年前に来日し「パーク ハイアット 東京」の副総支配人に就任する。「当時から、京都にホテルを展開することは聞いていたので、自分が来られると聞いた時は、夢がかなったと思いました。エネルギッシュで近未来的な街・新宿とはまた違う京都に憧れていたのかもしれません。東山は自然が美しく精神性の高い街、居るだけで心が落ち着きます」(リューヴァーク総支配人)

リューヴァーク総支配人の20年前の大学卒業の記念に父から贈られたボーム& メルシエの時計と、10年前の結婚の際に購入した、トーマス ピンクのカフリンクス。仕事中は常に身につけている。

2018年9月に京都に着任し、伝統工芸や文化の現場に足を運んで京都を体感してきたという。順子女将とも週に1度はミーティングを行い、お互いの状況を報告しあうとともに、共通認識を確認する。順子女将の印象をお聞きすると、「とても思慮深い方です。加えて勤勉です。驚くほどいろんなことに精通されているから、彼女に教えてもらうことは多い」と、リスペクトできる存在だと話す。

そんなリューヴァーク総支配人の一日は、オープンに向けての準備やスタッフの教育などで大忙しの毎日ではあるが、普段であればゲストの朝食に立ち会うことから始まり、時には声をかけて、料理の味やサービスについて問題はないかとたずねることも。その後は、チェックアウトや外出するゲストを見送る。午後は、スタッフとのミーティング、フロントでゲストを出迎えるなど、休む暇もないほど忙しく動く。総支配人はデスクに座っていればいいのかと思ったがそうではない。人を大切にという彼ならではのワークスタイルがそこにある。

女将の一日もまた繁忙だ。玄関や庭、部屋の掃除を確認し、来客リストをチェック。その日の来店内容に沿った軸や花を調える。来客を出迎え、全室に挨拶し、見送るのも女将の役目。空いた時間は、顧客への挨拶状やお礼状をしたためることもあれば、お茶やお習字、お花の稽古に勤しむことも。総支配人同様、休む間もない日を過ごす。

挨拶状やお礼状は毛筆でしたためることもある順子女将。ゆっくりと墨をすりながら、お送りする方の顔を思いだし、文章にするという。

「マークさんとは、お互い時間を見つけてコミュニケーションを取るようにしています。お客様の情報共有やスタッフ間の交流も、大切だというのが共通認識です。悩み事を相談したりと、総支配人は頼りになる方です」(順子女将)

船出を迎える大きな船は、どんな航路をこの後たどるのか。

「多彩な国の方がさまざまな目的で訪れる場所になるでしょう。そんな方々に、違う文化や習慣、伝統を感じてもらいたいです。今回、『山荘 京大和』さんと隣り合わせていることは大きな意味がある。スタッフもこれまでと異なるホスピタリティを学びながら、気持ちをひとつにして取り組めるはずです」と言う総支配人に、順子女将もうなずく。

開業前の2019年春には、両社のスタッフや家族もふくめて花見の会を開いた。プライベートでのコミュニケーションも活発だ。

「ハイアットさんの哲学に触れ、触発されることばかり。海外のお客様もたくさんお迎えするこの時期に、勉強させていただけることは本当に光栄です」と話す。

京都人だけでなく、世界中のホテルラバーが待ち焦がれたラグジュアリーな場。「山荘 京大和」で食事をして「パーク ハイアット 京都」のバーへ。ホテルに泊まり京料理を味わうなど、使う側の「思いのまま」という自由度の高さも客を惹きつける一因になるだろう。

Park Hyatt Kyoto
住所:京都府京都市東山区高台寺桝屋町360 
TEL:075-531-1234 
客室数:70室 
料金:2名1室おひとりさま ¥110,000~(予価) 
施設:鉄板料理・シグネチャーレストラン、バー、カフェのほかウェルネス・センターなど
http://www.parkhyatt-kyoto.com


Mark De Leeuwerk
オランダ生まれ。2005年ハイアットに入社。ロンドン、ドバイ、タイでの勤務を経て’14年にパーク ハイアット 東京の副総支配人に就任。’18年9月より現職。
Junko Sakaguchi
大阪府生まれ。プロヴィデンスのJohnson & Wales Universityでレストランマネジメントを学び、2017年、京大和7代目女将に就任。


Text=中井シノブ Photograoh=福森クニヒロ