"大坂なおみの恋人"の若手ラッパーYBNコーデーとは一体⁉【LIVEレポート】

いま最もアツい若手ラッパー、YBNコーデー。日本では一部のヒップホップファンを除いてまったくの無名といえる存在でしたが、“大坂なおみとの熱愛”が報じられ一気に注目度が高まりました。本国のアメリカでも全米オープンチャンピオンとのラブロマンスは大きなニュースに。現時点では2人から正式な交際宣言はなく、ファンは恋の行方についての続報を待っている状況です。そんなYBNコーデーのライブを観るべく、ロサンゼルスを訪れました。


7月発売のデビューアルバムが大絶賛

YBNコーデーがブレイクしたのは、2019年7月のこと。メジャーデビューアルバム『ザ・ロスト・ボーイ』が全米ビルボードチャートで13位を記録。音楽専門誌は揃って高評価を付け、一躍、21歳の若きラッパーはヒップホップシーンの最注目株になりました。

その後は、一気呵成の快進撃。アルバム発売直後に行われたニューヨークやロサンゼルスでの公演はソールドアウトを記録。世界最大級の音楽フェス「ロラパルーザ・フェスティバル」では新人離れした圧巻のステージを披露しました。さらに、ヒップホップ専門誌「XXL」による毎年恒例の企画「XXL FRESHMAN CLASS」に選出。このFRESHMAN(注目の新人)に選ばれることは、若手ラッパーにとっては最大の名誉で、成功への道が一気に開けます。

そしてYBNコーデーは、超人気の先輩ラッパーLOGICのツアーに同行することが決定。現在はLOGICとともに、全米各地を巡っています。

このツアーがどうしても見たい! 高まる衝動を抑えきれずに、10月12日、ロサンゼルスの伝統ある野外ステージ「ハリウッドボウル」で開催されたライブに行ってきました。

海外での大物ミュージシャンの公演は、メインアクトのほかに、3組程度のサポートアクトが出演するのが通例です。この日は合計4組の出演で、YBNコーデーは2番手として登場。ステージに立つや否や、「ごーっ」という地響きのような歓声が鳴り響きました。満席の観客は、みな総立ちです。

メインアクトがLOGICということもあり、観客には若い世代が目立ちましたが、意外にも小さな子供を連れたパパママや結構なお年を召した方も多い。幅広い層の観客が、YBNコーデーが発する言葉の一語一句を聞き漏らさないようにとステージを見つめています。

貧しい過去を振り返りつつ、前向きにメッセージを発信

彼がなぜ多くの人に愛されるのか? ラップスキルはかなり高いですが、テクニックだけでいえばもっとうまいラッパーはたくさんいます。パフォーマンスもYBNコーデー以上に華やかで、見せることに長けたラッパーは数えきれません。でも、YBNコーデーは無条件にカッコいい。問答無用に惹きつけられます。

その理由は、彼がラップを通して「飾らない、素の自分をさらけ出している」からだと感じます。YBNコーデーが書く詞は、自身の過去や経験をベースにしたものが多い。貧しかった少年時代や母親にお金がなくてバスケットボールを続けられなかった学生時代の思い出が綴られています。

でも、単なる“若い頃の貧乏話”では終わりません。貧しかった過去を回想しながらも、「何事も上手くいくさ」と前向きなメッセージを発信しています。その前向きなメッセージも、決して“不遇な過去を語って今は成功した自分アピール”ではなく、「オレも上を目指して頑張るから、みんなもやれるはずだ」と、聞き手に寄り添うような感じ。YBNコーデーの世界観は、素直に共感できるものなんです。

今回のツアーで披露した彼の代表曲から、お気に入りのフレーズを紹介します(解釈が違っていたらすみません)。

「Broke As Fuck」(アルバム『ザ・ロスト・ボーイ』収録)から
Mama couldn’t afford AAU
ママには僕をAAU(バスケのアマチュアリーグ)に行かせる余裕はなかった
So we couldn’t hoop, nigga, no tournaments
だから、ゴールにも、トーナメントにも届かなかった
I remember days sippin’ lemonade
あの頃、レモネードを飲んでいたよな
Ice cream truck gettin’ plenty paid
アイスクリームのトラックは儲かったよ
Candy lady had Jolly Ranchers
だってアイス売りの女の子はJolly Ranchers(ドラッグのこと)を持っていた
I don’t really have a lot of answers
答えはまだはっきりとは見えないけど
I’m just searching for the same shit
ずっと探し続けているんだ
Same niggas that I came with
一緒に来た仲間たちと
Premonitions over reminiscing
後悔するより、予感を信じたい
Lam’ truck how I lane switch (Ah)
ラムトラック(アメリカの大型ピックアップトラック)で車線を切り替えるよ
「Bad Idea」(アルバム『ザ・ロスト・ボーイ』収録)から
I know the shit you goin’ through the last month
先月、君の一生懸命な姿を、オレは見ていたよ
You stressin’ as you hittin’ on that glass blunt
君はストレスを抱えて、ガラスパイプに手をのばした
A nigga prayin’ to get lucky like Daft Punk
ダフトパンクの歌みたいに「幸運をつかめるように」って祈ってる
You can’t even stomach the pain, now that’s a bad lunch
君は痛みが強過ぎて胃に流し込むことさえできない、最悪なランチ
Uh, ramen noodles on the regular
そういえば、ラーメンばかり食べていた
Add some seasoning and some hot sauce for a better touch
おいしくなるように、調味料とホットソースを加えて
Peanut butter, jelly and syrup sandwich, etcetera
ピーナッツバター、ジェリー、シロップを塗ったサンドイッチ……ほかにもいろいろ
And we just flyin’ in the nebula
オレたちは、この星雲をさまよっている

もしYBNコーデーの世界観に興味をもったなら、まずはアルバム『ザ・ロスト・ボーイ』を聞いてみてください。Amazonなどで手軽に購入できます。

あっという間に時間が過ぎたYBNコーデーのステージ。うれしいことに、トリを務めたLOGICのステージにも参加し、コラボで1曲聞かせてくれました。今回のツアーでは、YBNコーデーが観客を虜にする力を実感しました。真摯に音楽に取り組み、悩みを抱える現代人に向かってメッセージを発信する姿は、21歳の若手とは思えません。すでに大物の風格すら漂わせている印象。来日を、心から願っております! 

YBN Cordae(YBNコーデー)
1997年、アメリカ ノースカロライナ州ローリー出身。本名はCordae Amari Dunston 。15歳でラップを始め、『Anxiety』(2014)、『I'm So Anxious』(2016)、『I'm So Anonymous』(2017)の3つのミックステープを発表。2018年にYBNコレクティブのメンバーになり、YBNコーデーを名乗る。'19年7月、アルバム『ザ・ロスト・ボーイ』でメジャーデビューを果たす。


Text=川岸 徹