オードリー若林がゴルフにハマる理由がおもしろい!

人付き合いが苦手で、"みんなでワイワイ"を毛嫌いしていた20代。世の中を"ナナメ目線"で見ていたオードリー若林さんにとって、ゴルフなんてもってのほかだった。


ドライバーって漫才でめちゃくちゃウケるボケ!?

「若い頃ゴルフに興じるおっさんなどクソだと決めつけていたからだ。森林を伐採しゴルフ場を造り『自然の空気は美味しい』などとのたまう厚顔無恥な奴らだと」(エッセイ集『ナナメの夕暮れ』より)

打ちっぱなしに足を運ぶ機会はあった。芸人仲間であるオリエンタルラジオの藤森慎吾さんに連れられて、都内有数の練習場として知られるスイング碑文谷へ。それでも「藤森くんがやるくらいだから、やっぱりチャラいスポーツだな」と魅力を理解できなかった。そんな若林さんが30代も半ばを迎え、少しずつ“ナナメの夕暮れ”を感じ始めた頃、ある人の気の利いた言葉でゴルフにハマる。

「アンタッチャブルのザキヤマさん(山崎弘也)がね、僕の性格をよく知っていて、とにかくトークがうまいんですよ。『若林くん、ドライバーって、漫才でめちゃくちゃウケるボケと同じなのよ。ボケる瞬間じゃなくて、インパクトに至るまでの"フリ”が整っているかどうかで遠くに飛ぶかどうかが決まるの』と。そんな話を聞いたら面白くなっちゃって、その場でグローブ買ってみたりして」

それから、こう続けた。

「面白さを感じちゃってからは、道楽というイメージが完全になくなっちゃって。仕事終わりに行く打ちっぱなしなんて、むしろ"禅”ですよね。意外と暗いスポーツだなと思えて、それが自分に合ったというか」

“みんなでワイワイ”かと思えば、常に内面と向き合わざるを得ない。カラフルなウェアを着る割には、帰り道は反省ばかり。パワーがある人ほど遠くに飛ばせるわけではなく、その原理は芸事にも通じる。パワーと技術のバランス。無欲と欲のバランス。ゴルフ特有の“暗さ”に気づき、自分との相性の良さを実感した。

「ゴルフのいいところは、行く時もひとり、帰る時もひとりで、2次会がないところです。僕の場合は、とにかく飲み会がめんどくさくて。仕事の話になると本音を言わなきゃいけない場面に遭遇するんですけど、僕の場合、ろくなこと考えてないんで。立場が上の人と駆け引きしながらしなきゃいけない会話なんて、もう、めんどくさいんですよ。でも、ゴルフってゴルフの話しかしないでしょ? 『若林くん、それ買ったの?』なんつって(笑)」

つまり、若林さんにとってゴルフはとにかく「都合がいい」。黙々と没頭できる。本気にならなくても楽しめる。本音の駆け引きをしなくていい。山奥だから「もう1軒どう?」がない。苦手としているのは、“賞をもらって一言”があるコンペくらいのものだ。

「いろいろなことをナナメに見ていた頃って、なんだかんだで自己顕示欲が強かったり、承認欲求が強かったりするんですよね。だから余計に“外”のことが気になって、なんでもかんでも驚いたり、突っ込みたくなる。ほら、男って誰でも猿山のボスになりたいと思う気持ちが少しはあるじゃないですか。そうじゃないと社会が回らないから、それはそれでいいと思うんですけど。

そういう意味で自分が変わったなと思うのは、他人と比べて『あの人より上に行こう』という気持ちで仕事をするより、自分が持っているカードをどうやってうまく使うかに集中するほうが実はすごく合理的なんじゃないかと思えるようになったことで。嫉妬するのは疲れる。エンジンの回転も落ちる。だから、より自分のことに集中するようになったというか」

“ナナメの夕暮れ”に立った若林さんの人生論が、少しずつゴルフ論と重なり始める。

「テレビの世界で10年くらいお仕事をさせてもらっていると、とてつもない才能の人に出会うんです。もう、遺伝子から脳みその構造から違うし、物事の創作の力も回転力も違う。天才って、羨ましいじゃないですか。でも、天才には天才の大変さもあるんですよね。『その人と入れ替わりたい?』と聞かれたら、『いや、ちょっと待って……』と口ごもっちゃう。

となると、結局、今の自分でやりたいんですよね。持っているカードで勝負したい。たぶん無意識のうちにそう思えるようになって、ゴルフも受け入れられるようになったというか」

相変わらず、余計なことを考えるのが好きだ。ショット直後の若林さんは、いつも腕組みをして下を向き、ボールの落下地点まで歩く。その様子を見たザキヤマさんが「若林くん、また下向いてる!」と笑う。

「ザキヤマさんは完全に真逆で、打った瞬間にそのショットのことは忘れちゃう。それってカッコいいなと思うんですけど、タイプが違うから、もはや自分もそうしようとは思わなくて。自分は、ショットの直後に腕を組んで、下を向いて、『肩が開いちゃったのかな』なんて考えながらボールの落下地点まで歩く人間。それが気軽っすよね」

そんなわけで、人生における“ナナメの夕暮れ”を迎えてからというもの、純粋にゴルフが楽しい。同じ“ナナメ芸人”(かもしれない)南海キャンディーズの山里亮太さんから「若林、お前はゴルフなんてやるな! こっちに戻って来い!」と言われても、今となってはその意味も「よくわからないっすね」と笑えたりする。

Masayasu Wakabayashi
1978年9月20日生まれ。春日俊彰と「 オードリー」結成。現在、テレビ朝日「激レアさんを連れてきた」、フジテレビ「セブンルール」「潜在能力テスト」、ニッポン放送「オードリーのオールナイトニッポン」等で活躍中。今年8月30日にエッセイ『ナナメの夕暮れ』を刊行。


エッセイ『ナナメの夕暮れ』(文藝春秋刊 ¥1200)


Text=細江克弥 Photograph=鈴木規仁


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