【豪邸拝見】バッファローボブス田中睦之の"虹をさがす家"

家を見れば、その人となりがわかる。家とは自らの心を潤し、人との縁をつないでくれる人生を彩る最高の舞台だ。家を仲介役として、人が集い、新たな輪が広がり、人間関係が熟成する。自分史上最高の"凄い家"には、人生を謳歌する生き方が詰まっている――。


「大切に使ったものには味わいが出る」

夜明けとともに淡く青い光が差しこみ、その光は時間とともに徐々に温かみを増していく。赤みを深めた夕刻の光を経て、日没後は幻想的な月明かりが空間の主役となる。

「晴れた日は毎日のように、家の中に虹がでます。出現場所や時間帯はさまざま。自分の足元に出たり、3階の子供部屋のドアに映っていたり。虹は予測できない偶然の産物だから、美しく、心惹かれるんです」

この”虹をさがす家"のオーナーは田中睦之氏。1995年、裏原宿にヴィンテージ古着屋「BUFFALO BOBS」を開業し、2005年にはオリジナルブランドも立ち上げた。現在は直営店を9店舗、WEBショップを5店舗展開。デザイナーとして活動する一方で、アパレル会社のパワードバイパーソンズと、不動産賃貸業のダブリューダブリューの2社の代表を務めている。

「土地を購入してから3〜4年、そのまま寝かせてたんです。どんな家にしようか、あれこれ考えるのが楽しくて。複数の建築家に会い、自分のアイデアを伝えました。最終的にNAP建築設計事務所を率いる中村拓志さんにお願いすることを決めたのは、自分のアイデアを形にするよりも、中村さんが造る家に住みたいと思えたから」

建物は、1 階がガレージ・倉庫、2 階がリビング、3 階が寝室と子供部屋。2 ~ 3 階の一角は吹き抜けになっており、ガラス棒を積み重ねた窓から虹が差しこむ。虹は生きているかのように、刻々と表情を変える。

南向きの吹き抜けに面した窓いっぱいに、透過性を持つ無垢の85㎜角ガラス棒を積層。強い光を遮りつつ、弱い光が拡散するようにガラス棒をカットすることで、季節や時間による光の変化が楽しめるようになった。

「私が見つけた土地に建つ、中村さんの"ベスト"を見たかった。なので、お願いした後はあまり口をださずに、中村さんの好きに設計してもらいました」

木材とコンクリート、日本と西洋、新しいものと古いものなど、相反するものが交差する家にしたいという希望は、さまざまな形でかなえられた。外観には、杉板の型枠で木目を浮き上がらせたコンクリートのほか、特殊加工された金属板を使用。その金属の表情が、コンクリートの木目模様としっくりとなじんでいる。

「コンクリートや金属、木など本物の素材は経年変化で味わいが増していきます。"古いもの好き"の私に合った仕上がりです」

庭もまた、多彩な要素がクロスする。植栽は日本のものが中心で、松の盆栽や寒椿が庭を取り囲むように配されている。その中央には、窓の素材に用いた85㎜角ガラス棒を座面に使った、背景に溶けこむベンチを設置。組み合わせの妙が、心地いい刺激を与えてくれる。

「室内のインテリアは、変化していくものだと考えています。その都度、心境に合わせて必要なものを買い足し、レイアウトも変えていく。家という建物自体は、一度つくりあげてしまうと大きくは変化しません。でも、中身は流動的に変わっていく。その相反するコントラストを楽しみたいんですよ」

窓と同じガラス棒を用いたベンチに遊び心を感じる。背後の寒椿は11~ 2 月に赤い花をつける。

1年後はまったく違う室内になっているかもしれないという田中邸。現時点でのお気に入りの家具は、ル・コルビュジエのヴィンテージソファ「LC2 グランコンフォール」。言わずと知れた名作だ。

「家の完成と同時に、中古で状態のいいものをとにかく探して、購入しました。ところどころ革が擦り切れて、剥げています。でも、その経年変化による味わいがたまらない。僕の持論は、『大切に使ったものは味わいがでる。乱暴に使ったものはダメになる』。中古品から、所有者がどんな気持ちで使っていたかが推察できるんです。だから、自分の子供たちにも物を大切にする気持ちを伝えていきたい。僕の言葉ではなく、ものを通して、自然に理解してほしいですね」

ガレージには「唯一の趣味」というクルマとバイクがずらり。マセラティ シャマル、アルファロメオ ジュリエッタ スパイダー750F、ドゥカティ パニガーレ V4R、トライアンフ 6T ブラックバード。手入れの行き届いた車体を見れば、田中氏がどれだけ愛情を持って接しているかがわかる。

「いずれ僕の手を離れ、次の所有者に渡ることになるかもしれません。その時には、なるべくいい状態で受け継がせてあげたいですから」

田中氏にとっての家は、古着やヴィンテージカーと共通する存在。建物ができた瞬間に価値が決まるものではない。

「現時点でのこの家は、まだ完成形ではありません。時間とともに変化し続け、熟成を深めていきます。家とは、永遠に実現することのない100%を目指すもの。そう考えてみると、家と付き合うのがさらに楽しくなります」

所在地:東京都渋谷区
敷地面積:198.12m2
延床面積:226m2
設計:中村拓志 & NAP建築設計事務所


Nobuyuki Tanaka
1971年生まれ。’95年、裏原宿に米国で買いつけた中古衣料を扱うヴィンテージ古着屋「BUFFALO BOBS」を開業。2005年よりオリジナルブランドを展開。


Text=川岸 徹 Photograph=川口賢典


【関連記事】
愛車をガラス越しに堪能! アンティークテイストの地下のリビング

GMOインターネット熊谷正寿の"おもてなし"が凄い!

圧倒的な迫力を誇るパノラマビュー! 日本一綺麗な海を望む絶景の家!!