【バスキア×エゴン・シーレ】異色の組み合わせが最高のマリアージュを醸す展覧会

巨匠フランク・ゲーリーの建築で知られるパリの「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」。ここでこの秋、注目のふたつの展覧会が同時開催される。 それはエゴン・シーレ(1890~1918年)とジャン=ミシェル・バスキア(1960~1988年)の個展。ともに28才でこの世を去った、非常に高い人気を誇るアーティストだ。会期は10月3日から来年の1月14日まで。


ふたりの夭折の天才を紹介する展覧会

なるほどその手があったか。これぞキュレーションの妙であるなと感じ入ってしまう。

パリ、ブーローニュの森。建築家フランク・ゲーリーによってかたちを与えられた現代アートの発信地「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」で現在、ふたつの展覧会が同時開催されている。

©Iwan Baan, 2014

ひとつは、ジャン=ミシェル・バスキアの個展。ニューヨークの路上でグラフィティ・アートを描いてキャリアをスタートさせるやいなや、すぐに大きな注目を浴び、当時の主たる美術潮流だったニュー・ペインティングの旗手ともてはやされることに。ところが生き急ぐかのように1988年、28歳の若さで夭逝した伝説のアーティスト。それがバスキアである。

と、美術史上の事実を述べればそうなるが、このところは前澤友作氏が作品のひとつ《Untitled》を123億円で入手したことでもっぱらの話題だ。ちなみに前澤氏所蔵の同作も今展には出品されている。「話題作」に対面するいい機会といえよう。

Untitled 1982 © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

バスキアは没後30年という節目の年を迎えてはいるものの、いかにも20世紀米国を象徴するアーティストであって、パリで最注目される現代アートの殿堂を舞台にいま個展とは、少々不思議に感じられる。しかし、だ。このアーティストの展覧会も併催されているとなれば、得心がいく。エゴン・シーレだ。

20世紀初頭のオーストリア・ウィーンを駆け抜けた天才画家がシーレだった。同時代に君臨していたグスタフ・クリムトの薫陶を受けて世に出ると、激情をそのままかたちに表したように歪んだ身体や、怒りと失望をたっぷり含んだ表情の表現で無二の個性を発揮した。

人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の特異な身体の描き方やポーズはおそらくシーレの作風がソースになっているといえば、雰囲気がすこし伝わるだろうか。20世紀欧州のアートシーンを代表する「顔」のひとりである。スペイン風邪によってシーレが命を落としたのは、バスキアと同じ28歳のとき。そのときから今年で100年が経つ。

ほおずきの実のある自画像 1912 Leopold Museum, Vienna

没後30年と100年。どちらも28歳で夭逝。激しい感情を画面に叩きつけるような画風で、数多くの作品を残した。生きた時代が20世紀の始まりと終わりに分かれるとはいえ、これだけ相通ずるものがあれば、カップリングとしては意義と意味がある。

両展を担当した「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」アーティスティック・ディレクター、スザンヌ・パジェは、「シーレは屈折した線が不安を煽り、バスキアは若い勢いを吹き込んだ線を持ちます」

と、両者が描き出す線の持ち味の違いに着目するよう促し、類を見ない激しさを呈するふたりの作品群を堪能してほしいと語る。

出品作はバスキアが全活動期をカバーする135点。シーレは代表作のひとつ《ほおずきの実のある自画像》も含む約120点のドローイング、水彩画、油彩画。見るべきものの多いパリとはいえ、ここはひとつじっくり腰を据えて、夭折のふたりの天才画家の精神に触れてみたいところだ。


エゴン・シーレ展/ジャン=ミシェル・バスキア展
会期:2018年10月3日〜'19年1月14日
会場:フォンダシオン ルイ・ヴィトン
住所:8, Avenue du Mahatma Gandhi Bois de Boulogne - 75116 - Paris
TEL:+33-1-40-69-96-00 
開館時間:11:00〜20:00(金曜〜21:00、土曜・日曜9:00〜21:00)
休館日:火曜
料金:一般 16ユーロ
https://www.fondationlouisvuitton.fr/en.html

Text=山内宏泰 Photograph=Getty Images