【玉袋筋太郎】ビジネスパーソンのためのスナックミシュラン<プロローグ②実践編>

全日本スナック連盟会長である玉袋筋太郎さんの新連載、プロローグ1回目となった前回は、スナックの魅力について語ってもらったが、今回は実践編。スナックに行きたいけど勇気が出ないという男性の背中を押してくれる、店の選び方と入り方について語ってもらった。


店選びは嗅覚と勇気

いい店をどうやって選ぶかって? それは嗅覚をしっかり持っているかどうかっていうこと。入っても大丈夫な店を見抜くセンサーだよね。ラーメン屋を探すのに、星がついてるランキング上位の店なんかから行っちゃうやつはダメなんだろうね。その喜びもわかるけどね。みんなが評価している店に行く喜びっていうかね。でも、やっぱ自分の鼻で探して、一般的には評価されていないけどここは最高の店だ!と言える店を見つけるのが喜びじゃないの。

スナック選びの真髄を語っている。

待ち合わせしてる風、携帯術

スナックって入りづらいと思うよ。価格設定も書いてねえしさ、中も見えなくてわからないしね。でも、そこはテクニックがあるわけよ。携帯で人と話をしているフリをして店に入って様子見てさ、この店違うなあと思ってら「あれ?ここじゃなかった?」って電話の相手に話してる感じで出てくるとかさ。そのための携帯でもあるわけよ。

あと、やっぱり古いお店っていうのはいいわけよ、老舗ってのはね。長くお客さんに愛されている店は安全だしね。ただ、逆に考えると古いお店は常連さんばっかで、一見は入りにくいんじゃないかというのもあるけどね。でも、そこにあえて飛び込んでみるっていう勇気も必要なんだよね。

あえて今まで培ってきた自分の生き方や技能や人間関係の有効性とかを試してみるぜっていう気持ちで入っていくとかね。まあ、そこまで言うと行かなくなっちゃうか(笑)。

語りだして20分。ウーロン茶が進む。

人生というRPG

でも、スナックは、自分自身に評価をくだせるからね。その店の中に、どれくらい自分が飽和水溶液として溶け込めるのかっていうひとつのゲームだよね。リアルなモンハンやリアルなポケモンがいくらでもいるわけですよ。フィールドが広いわけ、マップがね。スナックを知らないってことは、人生というロールプレイングをすごく狭いマップの中で遊んでるというのと同じだと思うんだよね。

「ちょっとビール持ってきて!」

まずは金額交渉から

いざ店に入っても金額とかわからなくて不安だよね。だから、いきなり値段交渉から始めるのよ。

「いくらで飲ませてくれるの? 5000円で飲ませてよ」って。「いや、うちは6000円からなのよ」。「いいじゃん、そこをなんとかさ、ハウスボトルで5000円、2時間でお願いだよ」とか言ってさ。じゃ、オッケー成立! ってなったら飲むとかさ。ネゴシエーションもいま足りないんだよね、みんなできないんだけど、ぶっちゃけ言っちゃっていいのよ。

ぐびぐび。

粋な支払い

前にさ、京都のスナックに男2人で行ったのよ。「ママ、1人4000円でやってよ」って言ったらさ、「うちは1人5000円なの」って言われて……。「そこをなんとか」って返したら、ママが「じゃ、わかった、真ん中とって1人3000円でいい」って。真ん中とってねぇの、下げてんのよ(笑)

数字に弱いのかわかんねえけどさ、洒落きいてんだなと思ってね。で、2人で飲んで1万円おいて帰ったのよ。そういうのができるようになると気持ちいいし、おもしろいよね。これも上級者か(笑)。

「みんなは、"そこをなんとか"て言える?」

旅館の浴衣で値踏み

ちょっと話はそれるけどさ、昔の温泉街のスナックってのは、旅館の浴衣で行くもんだったのよ。最近いなくなっちゃったけどね。浴衣着て、ストリップ見て、スナック行って、〆ラーメン食って帰るってのが一番いいわけじゃない。それで、浴衣を着てスナック行くと、ママさんがすげー喜んでくれるのよ。「久しぶりだ、浴衣で来た人!」なんつってね。するとね、浴衣って必ず旅館の名前が入ってるよね。それ見れば高い旅館に泊まっているとかわかるからさ、それ見てママが値踏みしだすわけよ。ガハハー(爆笑)。

俺も店をプロファイリングするが、ママも俺の浴衣見てプロファイリングして駆け引きが始まっているわけよ。ここもやっぱネゴシエーションだよね。

自身が経営する「スナック玉ちゃん赤坂店」では、スナック道の総裁としての扱いを受ける。

威張らずにさらけ出せ!

支払いの話をしたけど、とにかくよく言っているのは、スナックに限らないけど、難しい話はしないとか、威張らないってことじゃないかな。お邪魔します、という気持ちで座っていればママが話しかけてくれるからさ。そっから身分を明かしていって、ちょっとずつ話を広げていくんだよ。

オレ、絶対失敗談から入るもん。その方が笑いになるもんね。自分を曝け出すって方がいいよね。ビジネスでも同じでしょ、やっぱ下手(したて)っていうのがいいよ、オレは気持ちいいと思うね。

いい感じに仕上がってます。

スナックは「右手1本」ができるかどうか

その控えめな気持ちがあるかってのは、右手1本が出るかどうかで決まるね。ちょっとトイレ立つにしてもさ、「ちょっとすみません」て右手を上げる。これでいいわけさ。基本はこれよ(右手を上げる)。

スナックの基本動作。

ドア開けてヨッて右手上げてママと目があったら指3本立てて「こっちは3人」ってのを表して、ママが席あるよって顔したら手のひら開いて「5000円でいい?」ってやるわけよ。スナックはこれでいい。

スナックは、右手1本使うだけでいいんだよ。

プロローグ③に続く

Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ



玉袋筋太郎
玉袋筋太郎
1967年6月22日、東京都新宿区生まれ。実家はスナック。高校卒業後にビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。社団法人全日本スナック連盟会長も務め、『浅草キッド玉ちゃんのスナック案内』などの本を手がける。
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