【特集IR】ところでIR(統合型リゾート)とは何なのか?

統合型リゾート(INTEGRATED RESORT)という言葉は、2010年にIRを開業させたシンガポール政府によって創りだされた。世間をにぎわせているIRをずばり解説!


「IR=カジノ」ではない!

“IR”と聞いて真っ先に"カジノ"を思い浮かべた人は少なくないだろう。IR施行法が制定され、IR開業が現実味を帯びた今、不安に思うのも仕方ない。

しかし、「カジノ解禁」と言っても、IR=カジノというのは誤解である。

現在、日本で誘致が予定されている「IR(Integrated Resort・統合型リゾート)」とは、国際会議場・展示施設などの「MICE」施設、ショッピングモールや美術館などのエンタテインメント施設、国内旅行の提案施設、ホテル、レストラン、劇場・映画館、テーマパーク、スポーツ施設、スパ、そしてカジノなどが一体となった複合施設。

「IR=カジノ」と置き換えるのは間違いなのだ。

とはいっても、カジノがIRにもたらす収益の割合は大きい。IR実施法によって、カジノ営業区域ののべ床面積はIR全体の3%以下に制限されているが、収益面では重要な存在。

日本版IRが参考にするシンガポールのIRのひとつ「マリーナベイ・サンズ」は面積では3%に満たないカジノが、売上げでは8割近くをもたらしている。

安定して収益を得ることができるので、さまざまな施設が恒久的に運営可能になるという点では、カジノはIRをつくるうえで必要条件であり、重要な役割を担う施設といえる。

カジノがもたらす利益がIR全体の収益のバランスを保っているのだ。

カジノができると治安が悪くなるといった懸念もあがっているが、日本版IRは、厳しい法制のもと開業を進めている。公私問わず、老若男女が楽しめる新たな観光資源として期待したい。


IR開業へさらに前進する2020年

「日本にIRを」という構想が打ちだされたのは20年も前。長く足踏みを続けていた計画が、2016年にIR推進法が施行されたことで一気に動きだした。

’18年7 月、ギャンブル等依存症対策基本法の公布を経て、IR整備法(通称、IR実施法)が成立。今年1 月、IRの規制、監督を担う「カジノ管理委員会」が設置された。続いて、政府はIRの運営に向けた基本方針を発表。

誘致を目指す自治体とIRオペレーターは、これに合わせて整備計画を作成する。国がその計画の申請を受けつける期間は’21年1 月4 日から7 月30日まで。仮に大阪が’21年中に認定されたとしても、’25年万博前の開業はギリギリのスケジュール。ソフトオープンという選択肢もありそうだ。


世界を代表するIRオペレーター

世界では実に130ヵ国以上でカジノが合法化されている。運営しているIR事業者=オペレーターも大小さまざま。

地域別の売上が高い世界を代表するオペレーターとして、マカオの「ギャラクシーエンターテインメント・グループ」、「メルコリゾーツ&エンターテインメント」、マレーシアの「ゲンティンBHD」、アメリカの「ラスベガス・サンズ」、「MGMリゾーツ・インターナショナル」、「ウィン・リゾーツの」6つが挙げられる。

IRの聖地といえば確かにラスベガスだが、2006年にはマカオが収益でラスベガスを上回り、以降、世界最大のIRエリアとして君臨している。これは’01年にマカオ当局がカジノ産業への外資参入を認可したことから始まった。アメリカ系を中心とした外国資本が急激に流入してきたのだ。

驚くべき速さで発展するマカオは、ハイレベルなホスピタリティとエンタテインメントが提供されるIR激戦区だ。上記の6社のうち5社がマカオに進出。

米実業家シェルドン・アデルソン率いる「ラスベガス・サンズ」は’04年にサンズ・マカオ、’07年にザ・ベネチアン・マカオ、’10年にはシンガポールにマリーナベイ・サンズを開業し、カジノとリゾート、さらにビジネスを統合させる現代版IRの立役者となっている。

ラスベガスに多くのカジノホテルを持ち、一大リゾートを展開する「MGMリゾーツ」は、マカオにも2つのIRを運営。映画会社MGMにルーツを持つ企業だけあって、エンタテインメントには自信がある。また、「メルコリゾーツ」はマカオ、フィリピン・マニラなどのアジア圏で圧倒的存在感を示している。

これからどの事業者が日本への参入を勝ち取るかによって、日本版IRの特色も大きく変わってくる。

Text=片山 真 Illustration=西田真魚