奇抜さを競い合う国民民主党の幼稚な代表戦 ~ビジネスパーソンのための実践的言語学⑧

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「奇抜だと思われるような政策でも打ち出していきたい」ーーー国民民主党 玉木雄一郎共同代表

リーダーとして組織の将来像、ビジョンを示すのは、必要なことだろう。だが、9月4日に行われる国民民主党の代表戦に立候補した2名、玉木雄一郎共同代表と津村啓介衆議院議員の政策提案には、首をかしげざるをえない。

「子ども国債を発行して第3子に1000万円を支給」「日本版ベーシックインカムの導入」「国政選挙のスマートフォン選挙の実現」(以上、玉木提案)、「尊厳死(安楽死)の合法化」「同性婚や事実婚を公的にパートナーと認める制度を国が支援」「女性天皇の容認、女性宮家の創設」(以上、津村提案)

奇抜な政策を語るのが悪いとは言わない。尊厳死や皇室問題などタブーと思われる課題を取り上げるのも結構だ。だが、言うまでもないことだが、その政策の実現の可能性は甚だ疑問だ。「第3子に1000万円支給」することで、少子化問題が解決するのか? そのためにまた国債を発行し、どうやって回収するのか? スマートフォン選挙を実現するとして、セキュリティ対策はどうするのか? しかも今現在これらの政策を前面に出して戦うことで、本気で国民の関心を得られると考えているのだろうか。そうだとするならば、政治家としてのセンスが著しく欠如していると思わざるをえない。

多くの人が理解していない、もしくは忘れてしまっているだろうが、そもそもこの国民民主党、昨年の小池百合子都知事が立ち上げた“希望の党”から生まれた政党だ。民主、民進、国民、希望……と離合集散を繰り返した末の結党。選挙で選ばれたわけではないから、認知も支持もされていないのは当然といえる。党の代表になったからといって、政策を実行するだけの力があるわけでもない。だからこそ“奇抜に”と考えているのだろう。だが、その発想自体が致命的に幼稚だ。「正直公正」がテーマとなる自民党総裁選もどうかとは思うが、眼の前にある問題から目を背け、空虚で非現実的な政策で盛り上げようとしている野党よりは、いくぶんマシだ。

たとえば、客がほとんど入らず、赤字経営のラーメン屋があったとして、そこの店主が「うちは将来的には材料をすべて国産オーガニックにして、全品100円で販売します」と夢を語っていたらどうだろうか? そもそもそのラーメン屋は、何が“売り”なのかもよくわからない。ラーメンがとりたてておいしいわけでも、特長的な味を提案しているわけでもない。夢を語る前に、ちゃんと客が入るようなおいしいラーメンを作ることから考えるべきだ。

ビジョンを掲げることは大切だ。だが、ビジョンとは小学生が書く「将来の夢」のような作文ではない。現実性、実現性、もしくはそのビジョンまでの明確なプロセスの提示ができない以上、誰もついてくる人間はいないと心得るべきだろう。


Text=星野三千雄 Photograph=朝日新聞社/Getty Images


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