衝撃ワインに逆ペアリング! 人気ソムリエに天才シェフが本気で応戦し続けた一夜

会員制美食サロン「CHEF-1×GOETHE北参道倶楽部」が2年目に突入した今秋、初めてワインをメインとした美食会が開かれた!人気ソムリエ2人が準備したトリッキーなワインセレクトに対し、天才シェフ2人が究極の料理で応戦。用意されたワインに料理を合わせる"逆ペアリング"というアヴァンギャルドな試みが実施された一夜をレポートする。


世にも奇妙な‟逆ペアリング”という唯一無二の挑戦

今秋、2年目を迎えた「北参道倶楽部」が新境地を開拓した。

「北参道倶楽部」が強いパイプを持つワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」のカリスマ人気ソムリエ講師・青木晃先生、瀬川あずさ先生を招聘。その2名が、このイベントのためだけに、普段はめったに手に入らない貴重なワインを独自ルートで入手し、泡、白、赤とズラリと並べたのである。

そして、その2人がセレクトしたワインのラインナップに応戦しようと名乗り出たのは、2人の天才シェフ。「テストキッチンエイチ」山田宏巳シェフ(イタリアン)と「ラフィネス」杉本敬三シェフ(フレンチ)だ。

(右から)「ラフィネス」杉本敬三シェフ、「テストキッチンエイチ」山田宏巳シェフ

通常は、料理ありきで、そこに相性の良いワインをセレクトしていくのがペアリングの王道だが、今回の試みが画期的なのは、ワインありきで、そこに料理を合わせるという "逆ペアリング"に挑戦するということだ。会場は山田シェフのホーム「テストキッチン・エイチ」。天才シェフ2名は「北参道倶楽部」の会員のために、考えに考え抜いて、ワインにぴったりと合う至極の料理を作り上げたのだった。

1回戦フルーティーで華やかな白に、杉本シェフはタルトフランベとモルタデッラで対抗!

最初に振る舞われたワインは「ラインガウ甲州 ミッテルハイマー・エーデルマン2016(白)」。銀座よしえクリニック都立大院院長でありながら、ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」恵比寿校校長でもある青木先生が、「ちょっとしたワインラバーでもなかなか飲んだことがないレアワインを選んでみました」という至極の逸品。日本固有のブドウ品種である甲州種をあえてドイツで栽培し造られた特別なワイン!これは初っ端からトップギアだ!

このワインの逆ペアリングに挑んだのが、杉本シェフ。フルーティーな味わいを持つ白に対して出した料理は「タルトフランベと丹波の鹿とうり坊と京地鶏を使った猪鹿ちょうのモルタデッラ」だった。

「タルトフランベと丹波の鹿とうり坊と京地鶏を使った猪鹿ちょうのモルタデッラ」

なぜ、杉本シェフはタルトフランベに加え、鹿と猪を合わせたのだろうか。

「ラインガウ甲州が、今回飲んだワインで一番フルーティーで華やかだった。ある意味、その絶妙な軽いタッチのところが、フランスのアルザスやドイツのフランケンなどのシルヴァネールと似てて、絶対このタルトフランベが相性いいと思ったんです。加えて、少し油っこいものも入れたいなと。それだったら、ちょうど京都・丹波の鹿肉と猪が店に余っていたし、あわせたんです」

参加者一同は、杉本シェフの「逆ペアリング」の意図を一言一句を聞き逃すまいと熱心に耳を傾けたうえで、絶妙なマッチングに早速、感激の面持ちを浮かべていた。

2回戦/ワインの妖精の厳選1本に、本気の山田シェフは富士山へキノコ採り

次なるワインは「キャステルリエバ セシル NV(シャンパーニュ)」。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」主幹講師であり、その美貌としなやかな口調から"美しきワインの妖精"との異名を持つ瀬川先生が「ムニエ100%というセパージュのレアさとクオリティーの高さでセレクトしました♡」と説明する超貴重な1本だ。

それに対抗しようと数か月前から準備に準備を重ね、本気を出したのが、山田シェフ。自ら富士山にキノコ採りに行った「白トリュフの新米リゾット」を振る舞ったのだ。山田シェフは今回のイベントについて、以下のような感想を漏らしている。

富士山天然キノコ

「当たり前といえば当たり前なんだけど、お客様の飲むものに合わせようと。全然違うものを合わせることもあるんですけど、今回は、あえてストレートでいきたいと思って、イタリアレシピにさせてもらいました」

天然キノコを使った新米リゾット

さらに、富士山で採ったキノコに加え、北イタリアのトリノからアルバのトリュフを取り寄せた。おしま物産の荻野氏に声をかけて、5~15gの白トリュフを45個用意し、参加者のテーブルで山田シェフ自らが削ってリゾットに入れるスペシャルな演出を行う徹底ぶりだった。

トリノ産アルバの白トリュフ
テーブルで自らトリュフを削る山田シェフ
白トリュフをたっぷりかけた新米リゾット

3回戦/未発売のオレンジワインに、2人のシェフの合作で対抗!

その後、用意されたのは瀬川先生がセレクトした「勝沼醸造 未発売オレンジワイン」。まだ市場に出回っていない1本を、瀬川先生自らが勝沼醸造にお願いして提供してもらったという、まさに北参道倶楽部でしか飲めない1本だった。

オレンジワインの魅力を青木先生も力説!

まさかの"未発売ワイン"という瀬川先生の熱の入れように、山田シェフと杉本シェフは合作で対抗。山田シェフは「生後二週間の仔豚ともこちゃんの丸ごとボンレスハム」、杉本シェフは「富士天然キノコのマリネ」を一皿に乗せて提供したのだった。

「生後二週間の仔豚ともこちゃんの丸ごとボンレスハム」「富士天然キノコのマリネ」
生後二週間の仔豚を山田シェフが調理!

生まれたばかりの仔豚のハムを選択した山田シェフは、「オレンジワインは、いろんな味がするので、イタリアンだけどちょっと複雑にしたかった。そこで考えたのが、生まれて2週間の仔豚のハム。まだミルクしか飲んでいない純真無垢な赤ちゃんなので、あんまり豚豚しくないっていうかね。ある意味、仔牛のような、白身魚のようなミルキーさも感じられるんです。脂で香ばしくもある。本当に単純だけど複雑です」と力説。

一方の杉本シェフは、山田シェフが富士山で採ってきたキノコを使って、マリネを創作した。「オレンジワインは、酸化防止剤がほとんど入らない代わりに、醸造工程の中でアルコールから酢酸を抽出するんです。それが、このマリネと同じ成分になるのでマッチしていく」と説明した上で「天然のキノコを、半分揚げるような形で水分をわざと抜くと、旨味が凝縮して、香りも良くなる。食感をよくするためには、それはやっぱり水分抜くんです。エシャロット、クルミ、アーモンドを入れて、最後パセリで風味づけしました」と究極のこだわりを披露した。

4回戦/超貴重なヴィンテージには、王道のスパゲッティペスカトーレで

逆ペアリングというアヴァンギャルドな夜も、終盤に突入。次なるワインは、青木先生が独自の人脈を使ってこの日のために準備したとっておきの1本「ウルトレイア・サンジャック 2011(赤)」だった。

「スペインで注目の品種メンシアを使った赤ワインです。現行ヴィンテージは2016年なのですが、ラッキーなことにもう市場には出ていない2011年ものをご用意できたんです。8年が経過し非常にいい感じに熟成しているし、ピノ・ノワールのエレガントさとガルナッチャの豊潤さを足して2で割ったような妖艶なワインです」

とっておきの1本「ウルトレイア・サンジャック 2011(赤)」について説明する青木先生

そんなスペシャルなワインのペアリングとして、山田シェフが提供したのは「車海老 キス 槍烏賊 ムール貝 江戸前あさりのスパゲッティペスカトーレ」だった。「逆ペアリングというのは、単純」と豪語するように、海鮮をふんだんに使った、王道のイタリアンスパゲッティで対抗したのだった。

「車海老 キス 槍烏賊 ムール貝 江戸前あさりのスパゲッティペスカトーレ」

最終戦/リッチなニュージーランド赤ワインを引き立てた鹿のパイ包み

2人のソムリエと、2人のシェフによる饗宴も、最終戦へ。瀬川先生が満を持して提供したのは、「シャトーワイマラマ ミナギワ 2013(赤)」。

「フレッシュで爽快なソーヴィニヨン・ブランの印象が強いニュージーランドワインですが、あえてリッチで長期熟成に耐えるボルドーブレンドのスタイルをご紹介しました。佐藤可士和さんのエチケットデザイン、日本人オーナーというところにも親しみを感じていただけたら嬉しいです」

瀬川先生がセレクトした「シャトーワイマラマ ミナギワ 2013(赤)」をグラスに注ぐ青木先生

その逆ペアリングは、杉本シェフが担当。「鹿のローストとパイ包み、丹波栗のピューレ、ソースグランヴヌール」を提供した。なぜ、赤に鹿を合わせたのだろうか。そして、なぜパイで包んだのだろうか。

「鹿のローストとパイ包み、丹波栗のピューレ、ソースグランヴヌール」

「鹿肉の背肉のほうはローストに。腿とか前足などの部分は全部パイ包みにしました。鹿って果物を食べるからワインと合うんですよ。食べてるものが同じだと美味しいってよく言われるんです。だから鹿は、絶対なフルーティーな赤ワインと合うんです。ただ、鹿肉っていうのは脂身がないし、このミナギワっていうお酒が思った以上にタンニンが強かったんです。だからパイという脂を設けることによって、赤ワインのタンニンを消すことができるんですね」

杉本の理路整然とした説明に、歴戦のグルマンたちもすっかり腑に落ちたようだった。

「鹿のローストとパイ包み」

延長戦/意外な展開で結末を迎えたアラビアンナイト

豪華なパイ包みの登場によって、宴もたけなわかと思いきや、この特別なる会にはまだ続きがあった。青木先生がサプライズで「アルス・ヘリピンスのアレグレ・カンパネタ」を持ち出し、そのペアリングのデザートが振る舞われたのだった。

最後の逆ペアリングの名称は、「アリババと40人の盗賊」ならぬ、「アリババと40の香り」と命名された。デザートだけではなく、なんと赤ワインに山田シェフが白トリュフを削る一幕も……。参加者の誰もが度肝を抜いた意外な組み合わせによって、一夜限りのアラビアンナイトの物語は終宴を迎えたのであった。


Text=ゲーテWEB編集部