“パレスホテル”の決定版 世界一の富豪の宮殿 INDIA Hyderabad

ラグジュアリーを極めたゲストを満足させるホテルとして名高い、インド・ハイデラバードのパレスホテル。1894年建築の宮殿を舞台にした、至高のホスピタリティーに迫る。

「ラグジュアリー」。そんな言葉では語り尽くせない、誰も見たことのない驚くほどの豪奢な世界。タージ・ファラクヌマ・パレスに足を踏み入れた瞬間、誰もがそう感じるに違いない。

そのスケール感に圧倒される大階段。正面に見えるのが6代目ニザームの肖像画だ。

今はマイクロソフトやグーグルのインド支社も進出し、IT都市として活況なインド南部の都市ハイデラバード。ここはかつて長い間“ニザーム”と称される藩王が統治。代々栄えたその“ニザーム”の宮殿が15年の改修を経て、唯一無二のホテルへとその舞台を変えた。

夢の世界は到着から始まる。敷地内のゲートに着くと、ゲストが乗り換えるのは1890年代につくられたという馬車。宮殿の正面まで、従者を従え移動するこの瞬間から、ゲストはもう非日常へと誘(いざな)われる。ホテルに入れば、建築に使われている素材も調度品も、どこを見ても語るべきストーリーを持つ贅を尽くした空間が続く。

到着したゲストは馬車でホテルへ。ウェルカムドリンクを持ったバトラーが迎えてくれる。

丘に建つこのホテル、メインビルディングのバルコニーに出れば、眼下にはハイデラバードの街が一望。かつてこの眺望を眺め、「世界で一番リッチな男」と呼ばれたニザームが暮らした宮殿ホテルで、しばし王のような滞在を。

王族の暮らしがそのまま残る

上から見ると、サソリを模した形状に建築されたこの宮殿。各部屋にその栄華を感じることができるが、特筆すべきは「101ダイニングルーム」。101名が座れる世界で一番長いテーブルは、一番端の席のささやきでも反対側に聞こえるという優れた構造を持つ。壁には鶏や果物など食材の絵が。ニザームがこの絵を指さし、料理をつくらせたという、まさに王のメニューが空間を彩る。

6代目ニザームの執務室も当時のまま。「巨大なダイヤをペーパーウェイトとして使っていた」という逸話を聞けば、現代のミリオネアとは桁が違う暮らしぶりが想像できる。

館内はすべて、今も敷地内の別宮殿に住むエズラ女王の監修のもと、細部まで当時のままの姿に修復。他のパレスホテルと異なるのは、それが観賞のためではなく、使われるためにあるということだ。宿泊客はその椅子に座り食事をし、彼のビリヤードで遊び、彼が集めた本を広げる、その暮らしを体感できるのがこのホテルなのだ。

特注ビリヤードのあるプレールームやブリタニカ百科事典の初版があるライブラリー。すべての部屋が特別だ。

ファラクヌマ・パレスではこの地のさまざまな文化を知ってもらうために、毎朝のヨガのほか、夕方には伝統芸能「スーフィ」の演奏などを開催。「ホテルだけではなく、インドとハイデラバードの文化を知っていただくことが大切だと思っています」と語るのは総支配人ギリッシュ・シーガル氏。

多くの部屋が面する中庭。バトラーが、担当するゲストのためにきびきびと働いている。

時には王族やセレブリティーも多く訪れるこのホテル。客の高いレベルの要求に応えるために重要なのは、やはりスタッフのクオリティーだという。「そのためには日々のささいなことこそが重要」と、毎週土曜日に各部門でよい行いをしたスタッフを推薦し、定期的に表彰するという「サタデイ・チア・プログラム」を行っている。

ゲストが到着すると、頭上からはバラの花びらのシャワーが。そのサプライズに、誰もが笑顔に。

「同僚を手伝ったなど、どんな小さな行いでもいいんです。小さなことに気づくことが習慣になり、それは結果的にゲストへの気づきにつながるのです」

ニザームの秘伝のレシピに陶酔する

食もファラクヌマ・パレスでの驚きを増幅させる要素。その一つが「ゴル・バンガロー」でのディナー。古いステンドグラスを配した天井の下、ハイデラバードの夜景に息を呑む唯一無二のロケーションだ。

ゴル・バンガローで特別な夜を。ディナーコース:6,500インドルピー 要予約(2日前まで)。

そしてこのホテルだからこその味がニザーム・ファミリー秘伝のレシピ。その担い手がエグゼクティブ・シェフ、アルン・スンダラライ氏だ。「具体的なレシピは残っていなかったのですが、調査を続け、見つけたのが古いウルドゥー語で書かれたコピーでした」

伝統料理「ビリヤニ」をはじめ、200以上の料理の食材のカットの仕方から調理法まで書かれていたレシピをもとに、重さなどを現在の単位に換算し、入手できる食材へ変更した。

お米とラムを炊き込むハイデラバードの伝統料理「ビリヤニ」。ヨーグルトとロブスターのソースとともに。

「現代では重すぎる味を軽めに整えたり、例えば柔らかすぎるケバブの食感を変えるなど、丁寧に調整をしていきました」

その結果、インド料理「アッダ」は、富裕層向け「エリート・トラベラー」誌の2015年トップ100レストランにおいて初のインド料理レストランとしてランクインする快挙を達成。

ヨーグルトベースのフィリングを羊の挽肉で包んだ「シカムプリ・ケバブ」。

世界中の舌の肥えたゲストの心を摑む、ニザーム秘伝のレシピ。ぜひ堪能してほしい。

「タージ・ファラクヌマ・パレス」
1894年建築のニザーム家の宮殿を15年かけ改修し、2011年にオープン。敷地内には戴冠式を行ったコロネーション・ルームなどの歴史的建造物を擁する。
パレスルーム:40,000インドルピー、ヒストリカルスイート:80,000インドルピーほか全60室。 http://www.tajhotels.com
※1インドルピー=1.94円(7/13現在)

Text=牛丸由紀子 Photograph=福森クニヒロ
*本記事の内容は15年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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