世界一速くて美しい⁉ 小さな自転車モールトンに熱狂する理由

その独創的デザインと革命的な技術で世界中に熱狂的なファンを持ち、時に数百万円の単位で流通することもある小径自転車、それが"モールトン"だ。


世界最速の小さな巨人

「初めて見た時に、一瞬で惹かれました」と話すのは、100台以上のモールトンを所有する、インテリアデザイナーの青木高弘氏だ。

デザイナーという仕事柄、モノを見る目は厳しい青木氏が魅せられた理由は「万人が乗れるなめらかな乗り心地ながら、世界最高速度記録を持つ」という美と機能性の両立。なかでも古いタイプに惹かれた青木氏は、その歴史や形状をとことん研究。約30年にわたり、世界に散在するモールトンをパーツひとつから探し続けた。

家にはとても置ききれないので、ふ たつの倉庫に分けて保管。ミュージ アムのようなこの倉庫は「貴重な文 化財を多くの人に見てもらいたい」 という想いからつくったという。

「養われたのは本物を見極める力。それは自分の仕事にも相乗効果を生んでいます」

いつしか、その真摯な探求心に開発者のアレックス・モールトン博士とも食事をする仲に。またモールトンの思想を理解するひとりとして、ほかのコレクターたちからの尊敬も集める。

「コレクターのなかには世界的企業のトップも多く、普通だったら話もできない人との交流も。資産的な価値を超えた、さまざまな刺激的な体験を、この自転車が与えてくれたんです」

Takahiro Aoki
フルボデザイン 代表取締役 1954年生まれ。’89年、インテリアデザインやオーダー家具製作を行うフルボデザインを設立。モールトンオーナーズクラブジャパン初代会長。


Text=牛丸由紀子 Photograph=鞍留清隆