日本初のサウナーは千利休だった? ~ととのえ親方のサウナ道⑥<タナカカツキ対談#4>

札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、"ととのう"状態に導いてきたことから"ととのえ親方"と呼ばれるようになった松尾大。プロサウナー・ととのえ親方の連載は、今回からサウナブームの生みの親・タナカカツキ氏との特別対談を掲載。その第4回はタナカカツキ氏が「日本初のサウナー」と呼ぶ千利休と、「サ道」と「茶道」の意外な共通点について。

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共通点が多いサ道と茶道。茶室は「ととのいルーム」?

タナカ ととのえ親方に関しては、日本のサウナを変える動きを具体的な行動で示している人じゃないですか。イチから作るのが難しい分野で、今も2代目、3代目の人たちがやられていることが多い日本のサウナ界で、海外のサウナを多く見てきて、かつ作る立場になれる人は貴重だと思います。

親方 いやいや、どうですかね。

――この連載の中で親方は「建築家と一緒におもしろいサウナを作りたい」という話をよくされていますよね。

親方 実際に関わる案件は増えてきますね。たとえば最近だと、国登録有形文化財になっている宿のサウナづくりに関わっています。建物はいじれない部分が多く、露天風呂のスペースの一部を潰してサウナにしたいという話だったんですが、フィンランド式のサウナの建物をそこに建てるのも変だなと思って。「日本のコンセプトに合うものにしよう」と考えて、露天風呂のスペースをそのまま水風呂にして、そのうえに水上コテージのようなサウナを作ることにしました。

タナカ ああ、いいですねぇ。

親方 サウナ室からは川の景色も見えるようにします。ガラスの茶室みたいなイメージで、すごくおもしろいものができると思いますよ。

タナカ やっぱり庭とサ道っていうのは相性がいいんですよ。蒸し風呂文化とも関係しているので。

親方 カツキさんは「日本最初のサウナーは千利休だった」と言っていますよね。

タナカ 実際に映画『利休』(勅使河原宏監督)では利休が蒸し風呂に入ってヴィヒタで体を叩くシーンもあるんです。あと茶室とサウナ室って、どちらも木の箱ですし、ひしゃくもにじり口も、何から何までそっくりなんですよ。それで千利休はととのっちゃって、器を見て「うわぁ、わびさび~」みたいに思って、どんどん意識も拡張して、植物も蒸して「飲んでみねぇ?」ってなった。それでお点前とかも面白くなっちゃった。ととのうやり方を開発した人なんです。

親方 カツキさんのこの話、僕も仲間と掘り下げてみたんですよ。それで出てきた文献を読んでみたら、おもしろい話があったんです。丿貫(へちかん)という茶人が利休を茶庵へ招待した際、利休を落とし穴に落として汚させたらしいんです。それで真っ裸になったところを、焼いた石に水を入れた部屋、つまりサウナに入れたと。その後でお茶を楽しませたと。

タナカ 正しいですよね。だから茶室っていうのは「ととのいルーム」なんです。

世界各地に昔からサウナはあり、歴史の偉人はみんなととのっていた

――「『サウナ』なんてタイトルに入れたら売れない」という理由で単行本のタイトルを『サ道』にした……という話がこの対談の2回目にありましたが、実は「サ道」と本当の「茶道」は同じだったと。

タナカ 調べれば調べるほどサウナに近いことが分かったんです。「いつからサウナ的な蒸気浴をやりだしたんだろう?」と日本の歴史を掘っていくと、法隆寺の見取図に結構大きな「温室」というのが2ヵ所あって、それが蒸気浴の場所だったらしい。だから蒸気浴は仏教と一緒に日本にやってきたみたいです。それで修行の一貫として蒸し風呂に入って、何だかいい匂いのするゴザの上に寝っ転がったりしていた。蒸し風呂はトランス状態に入るメディテーションの一種としても使われていたのかもしれません。

親方 そこも僕がアメリカで体験したスウェット・ロッジ(インディアンの蒸し風呂で儀式も行う場所)と似ていますね。蒸し風呂の中で祈りを捧げて、最後はパイプセレモニーといって、タバコの葉を囲んで感じたことを言い合ったりするんです。

タナカ 頭がバーンといっちゃった状態にするわけね。きっと聖徳太子もそういう覚醒状態だったから、同時に何人もの言葉を理解できたんですよ(笑)。

親方 ととのっていたんでしょうね(笑)。

タナカ うん。聖徳太子が持っているあの棒も「ととのい棒」だと思いますよ。ヴィヒタみたいに使えそうじゃないですか。

――偉人たちはみんなととのっていたと(笑)。

親方 絶対そうですね(笑)。あと、穴を掘って、そこに焼いた石を入れて、水をかけて蒸気浴をする……というサウナ的な文化は、世界中のいろんな場所に昔からあったんですよね。メキシコのテオティワカンの宗教都市遺跡にもサウナが発見されていますし。

タナカ 世界各地で名称が統一されていないからややこしんですよ。日本の蒸気浴もサウナだし、日本の風呂の歴史はサウナの歴史なんです。それが明治のころから湯船に変わっちゃっただけで。

親方 そうですよ。風呂って「風の呂」ですもんね。

タナカ サウナなんですよ。その言葉の整理が今まだできていない段階なんです。あと修験道の世界は川の近くで修行をすることが多いですが、やっぱりトランス状態になるときは水が大事なんです。一度あたたまってからの滝行なんて、「そりゃととのうわ!」って話で。滝行だけ切り取ると辛そうに見えますけど、あれは実は何も辛くないんですよ。

親方 たしかにそうですね(笑)。

タナカ 熊本の『湯らっくす』のMADMAXとか完全にそうじゃない。

親方 そうですね(笑)。ボタンを押したらザーッて滝のように水が流れる装置があるんです。

タナカ あれは一種の修験道です。そう考えると、日本人はととのってきた民俗ですし、サウナの話ってすごく大きなものなんですよ。「こいつ、ととのっているかな?」みたいな観点で歴史の人物を掘っていくと、新しい発見があるし納得できることも多いですし。「そりゃ発明するわ」みたいな。

――そういったサウナの歴史的な話もカツキさんに描いてほしいです!

タナカ いや、漫画ってなかなか難しくてね。歴史っぽい話になると、吹き出しの中にいっぱい注釈が入ってくるから、漫画らしくならないんですよね。

――文字ばっかりになっちゃう。

タナカ 研究書になっちゃうのでダメなんですよね。おっさんが「ととのったあ!」という話しかマンガでは無理なんです。歴史を掘ったりするのは誰かにやってほしいですね。「まんがで読む 日本のサウナの歴史」みたいなシリーズにして。

親方 それやってくださいよ。幻冬舎さんあたりで。

タナカ そうですよ。だって「幻の冬の舎」でしょ? どう考えてもサウナの出版社じゃないですか!

#5に続く

©「サ道」製作委員会
ドラマ25「サ道」
放送日:毎週金曜深夜0時52分~1時23分
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ北海道、TVQ九州放送ほか
原作:タナカカツキ『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(講談社モーニングKC刊)
出演:原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗、荒井敦史、小宮有紗、山下真司、荒川良々 / 宅麻伸
監督:長島翔
主題歌:Cornelius 「サウナ好きすぎ」(ワーナーミュージック・ジャパン)
エンディングテーマ:Tempalay「そなちね」(SPACE SHOWER MUSIC)


タナカ カツキ
由緒正しき「日本サウナ・スパ協会」が公式に任命する日本でただ一人の「サウナ大使」というステキな肩書きを持つマンガ家。元々はサウナが苦手だったが、ある日、思いきって入ってみた水風呂でととのってしまい、その日を境にサウナにどハマり。コップのフチ子の生みの親でもあり、それら仕事のアイデアは、ほぼサウナ内で思いついている。『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(講談社モーニングKC刊)2巻が現在発売したばかり。水草水槽の世界ランカーでもある。https://www.kaerucafe.com/


Text=古澤誠一郎


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ととのえ親方
ととのえ親方
札幌在住。福祉施設やフィットネスクラブを経営する実業家にしてプロサウナー。サウナにハマったのは20代半ばの頃で、その後は世界各地のサウナも訪問。札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。2017年にはプロサウナーの専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」を立ち上げ、'19年2月には友人の医師らとサウナの最適な入り方を提唱する「日本サウナ学会」も設立した。
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