MIYAVIは30ヵ国で350以上公演! ~野村雅夫のラジオな日々vol.33

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回はワールドワイドでマルチに活躍するMIYAVI。


ミュージシャン兼俳優兼モデル兼UNHCR大使

仕事柄、僕は日々多くのミュージシャンに会って話を聞いている。当然、音楽の話題が中心にはなるのだけれど、相手が幅広い視野を持っている人だと、スタジオの空気は自ずと躍動し、会話が跳ねる。FM802で初めてしっかり向き合ったMIYAVIと過ごした時間は、やはり濃密なものとなった。今回は7月16日に彼が生出演してくれた際の模様をお送りする。

Photo by Ben Duggan

――チャオ!  ご無沙汰しております。6年ほど前に、横浜のグリーンルームフェスティバルにご出演された際に、一度ラジオの公開収録でご一緒したことがあるんですが、お会いするのはそれ以来。

はい。お久しぶりです。

――とはいえ、番組初登場ですから、まずは簡単なプロフィールから。エレキギターをピックを使わずに指弾きする、独自のスラップ奏法でお馴染みのギタリストです。その活動がワールドワイドなことでも知られていまして、これまでに30ヵ国で350公演以上の経験があります。その中には、僕の生まれた国イタリアも入ってるわけですよね?

はい。

――そんな風にあらゆるところでプレイされているし、俳優としても活動されています。話題となったのは、何といっても2014年、アンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男アンブロークン』への出演でした。さらには、モデルとしての活動もあるぞというマルチぶり。そして、これはアンジェリーナ・ジョリーさんからの流れもあるのかなと思いますが、2017年にUNHCRの大使に就任されました。多くの人にとっては耳慣れない言葉だと思います。どういうものなんでしょう?

UNHCRは、国連の中にある機関で、正式名称は「国連難民高等弁務官事務所」です。

――すぐには暗記できなさそうな長い名前だ。

ハハハ。そうですよね。これは、迫害や紛争によって住むところを追われて、知らない国に避難せざるをえない「難民」と呼ばれる人たちを保護し、生活の支援をする国連の機関で、現在、そこの親善大使として活動させてもらっています。

――物もお金も人も、今やどんどん国境を越えるようになっているわけですが、そこにはもちろん良い面と悪い面があって、その残念な側面として難民問題はますます大きな課題となっています。そのサポートをMIYAVIさんたち親善大使の皆さんがやってらっしゃる。

UNHCRの現地のスタッフが本当に毎日、日夜、ぶっ続けでサポートしています。大変な難民の生活の状況について知らないという人が日本にも世界にもたくさんいるので、親善大使はそれぞれのやり方で、それぞれのスキルで、難民問題についての認識を広めていきます。

――今こうしてFM802で、簡単にではありますが、ご説明されているのも、大使としての活動になっていますよね。聞いているリスナーも、ちょっと調べてみようかな、なんて思ってくれれば、そこからまた広がっていくということになりますから。さて、MIYAVIさんが今日は生出演ということで、リスナーからたくさんのアクセスをもらっています。いくつかご紹介。こちらは堺市のLOVE注入さんという女性から。「MIYAVIさん、TikTokデビューおめでとうございます」

ありがとうございます。

――「早速フォローいたしました。拝見すると、昼間に天神橋筋商店街を歩かれていたんですか? しかも、あんなに堂々と?」なんて届いてますよ。

はい、歩きました。そりゃ、堂々でしょ。

――こそこそしてたら、逆に目立つという可能性もあるしね。

ハハ、そうですね。

――今日ご出演いただいているのは、7月24日、ニューアルバム『NO SLEEP TILL TOKYO』をリリースされるからでございます。その発売をお待ちかねというメッセージも届いています。YouTubeにアルバム全曲試聴のティーザーも公開されていたりしますから、早くあの曲をフルで聴きたいなという思いがヒシヒシと伝わってくるものが多いんですよ。たとえば、京都市のちゃまりんさんは「先日のテレビの音楽番組で、KREVAさんと三浦大知くんとのコラボ、拝見しました。もうしびれまくりで、録画したものを何度も見返しています。本当にかっこいい。DAOKOとコラボした『千客万来』や、表題曲『NO SLEEP TILL TOKYO』の侍ギタリスト全開の曲も好きなんですが、じっくり聴きたくなる『Under The Same Sky』がめちゃくちゃ好きです」と寄せてくれています。

ありがとうございます。嬉しいですね。

――しかし、今回のアルバムはスパンが短いですよね。昨年出された対戦型コラボレーションアルバム『SAMURAI SESSIONS vol.3 -Worlds Collide-』から、まだ半年。あのサミュエル・L・ジャクソンの口上から、まだ半年!

ハハハ。あれ、いきなり感あったでしょ?

――ありあり、大ありでしたよ。ちょいと脇道に逸れますが、せっかくなんでキャスティングの経緯を聞いてみたいです。

あれはね、もともと『キングコング:髑髏島の巨神』っていう映画で彼とご一緒させていただいて、出番は別だったんですけど、彼は日本のカルチャーがとても好きで僕のことも知ってくれていて、そこからの付き合いなんです。で、アンジーが主役の『マレフィセント』の続編が今年10月に公開されるんですが…

――あ、もう予告が映画館でかかってますね。僕も観ました。

その『マレフィセント2』に僕もちょっと出てて、去年ロンドンで撮影をしていた時に、サミュエルも『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の撮影を違うスタジオでやっていて、また会って話をしている中で、ダメ元でね、「フィーチャリングどう?」なんて言ったら、「Hell Yeah」みたいな感じで、あのニック・フューリーが「やります」と!

――ニック・フューリーが!!

(録音してみたら)かっこよかったですよね、やっぱ。

――またスパイダーマンが公開されたばかりで、僕も観たところだったから、これを機にまた『SAMURAI SESSIONS vol.3 -Worlds Collide-』を再生してみると、サミュエル・L・ジャクソンがいきなり登場するという贅沢さをさらに噛みしめることができました。そこからの、いろんなVS、対戦が繰り広げられてからの、まだ半年なんですよ。

ずっとコラボレーションしていたんで、久しぶりにソロの作品もやりたいなと。ソロとしての前作『Fire Bird』がもう3年前なので、今回は120% MIYAVIサウンドを詰め込みたいなと思って作りました。

――その新譜の話をしましょう。さっきもご紹介したスラップ奏法など、ギターを打ち出していくというのは、もちろんこれまでもされてきたことなわけですが、僕としてはね、これまで以上にMIYAVIさんの声、歌が、ギターと拮抗するレベルで前に出てきているなと感じました。

ですね。コラボレーションアルバムで、すばらしいシンガーやラッパーと共演させてもらって僕も感化されました。ギタリストとしては、やっぱり海の外ではギターで勝負したいという気持ちが今でもあるんですけど、応援してくれる人たちにとっては、MIYAVIの声も作品の一部だし、言葉でダイレクトに伝えるということの尊さを自分も学んだので、今回は歌の面でもチャレンジしましたね。「東京」という言葉をタイトルにも入れている通り、今回は日本語のリリックをかなり入れました。

――結構多いですよね、日本語が。

グローバルなミュージック・シーンを見ても、本当にスパニッシュやコリアンといったローカルの言語がすごく聴こえてくる。サウンド・クオリティーさえグローバルであれば、自分たちの母国語もオリジナリティにつながっていく気がしています。

――一昔前までは、日本のミュージシャンが海外に活動範囲を広げていくっていう時に、やっぱり英語じゃないと聴いてもらえないという事情があったと思います。だからみんな英語で歌っていたわけだけど、今はたとえばBTSの場合でも、韓国語のラップが世界中で聴かれていますもんね。今回、『NO SLEEP TILL TOKYO』のティーザーを試聴していたら、どこにだったかな、リスナーがコメントを寄せていて、ポーランドのリスナーが確か日本語で書き込んでいたんです。ポーランド人のその人にしてみれば、MIYAVIさんの日本語をもっと聴きたいんだという趣旨の意見がそこにあったわけですよ。これはいよいよ浸透してきたなって思いました。

そこも僕たちの役割で、実際、10年15年前から海外でやりだして、MIYAVIのライブを観て日本にやってきたとか、日本語を勉強し始めたって人もたくさんいる中で、なんだろう、グローバルなサウンド・クオリティーは当たり前にキープしながら、自分たちの文化、伝統的なものだけではなく現在進行系の日本の文化や空気感を伝えていくのも自分たちの役割なのかなと思っています。だから、今回、アメリカからまたツアーを始めますけど、そこでどう言葉が響くのか、みんなが歌ってくれるのか、すごい楽しみですね。

――完全に日本語、完全に英語じゃなかったりするから、耳コピして海外の方は覚えると思うんだけど、そこで気になったワードを、これどういう意味なんだろうって興味をもつ中で、また一歩日本に近づいてくれるのも、MIYAVIさんの大きな役割としてあるかもしれませんね。

そのあたりは結構考えて作りましたね。やっぱり、フック、サビのキャッチーな部分は英語にしたり、タイトルも全部英語にしてあるんだけど、ストーリーを表現したりっていう部分では、自分としても母国語にすると感情移入しやすいし、あとは日本のオーディエンスのみんなにもダイレクトに伝わるし。あとは響きですね。英語を喋れないから日本語にしてるんじゃなくて、表現する上で、どちらが適切なのかってことにこだわって今回は書きました。

――アルバムを手にしてもらったら、ブックレットを見てもらうと、後ろにクレジットがあって、僕らDJなんかはそこも食い入るように見るわけですけど、ソングライティングでは基本的に海外のミュージシャンの方と共同作業してらっしゃるじゃないですか。そういう時に、おひとりだけだったら、日本語って母国語だから、ある単語がどう聞こえるんだろうってわかんないじゃないですか。日本語話者にしてみれば当たり前だから。だけど、常に海外にいらっしゃって、ミュージシャンと交流されていると、何か日本語のワードをチョイスして聴かせた時に、周囲の反応から発見することも多々あるでしょう?

そうなんですよ。オリンピックもあるし、万博もあるし、結構目がこっちに向いている感じはあって、広く言えば、アジア全体にも。だからなのか、日本語で歌った時に、「クールだね。日本語もっと入れようよ」っていう反応が、海外の作家とやってると、あるんですよね。これは音楽だけではなく、映画業界でも『Crazy Rich Asians』(邦題は『クレイジー・リッチ!』)とか、『ブラックパンサー』もそうですけど、ダイバーシティ、多様性というものが、どんどん当たり前になってきている。

――それを音楽的に切り拓いてきたひとりが、MIYAVIさんなわけですよ。

まあ、先輩方が作ってきた道を、自分たちがまた…

――広げているわけですよ。その証明になるような1枚が『NO SLEEP TILL TOKYO』です。リリースしてからが早速忙しいですね。7月25日からワールドツアーが始まります。バンクーバーを皮切りに北米ツアーがあって、ヨーロッパ、アジアと巡りながら、12月にJAPANツアーでまた戻ってきます。だいぶ先ですが、もう予定は入れておきましょう。北海道、宮城、愛知、福岡を経て、12月18日(水)が東京のZeppe DiverCity TOKYO、そして千秋楽は12月21日(土)地元大阪、Zepp Osaka Baysideです。僕もね、実は梅田AKASOでワンマンライブを拝見したことがあるんですけど……

え!? いつなの、それ?

――結構前ですよ。

会う前ってこと?

――会う前だよ。2011年とかかな。

そうなんだ。

――なので、久々にじっくり僕も観たいなと思っております。

ぜひぜひ。来てください。

――それでは、お別れには、いろいろリクエストが来ている中でも、数の最も多かったこの曲をかけようかな。MIYAVIさんの歌声がしっかり聞ける曲でもあるし。では、最後に曲紹介を!

全世界のみんな、今同じこの時代を生きているみんなのことを想って作りました。聴いてください。MIYAVIで『Under The Same Sky』

ーMIYAVIさん、ありがとうございました。

ありがとうございました。


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野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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